※このコラムは『いちばんすきな花』3話までのネタバレを含んでいます。

■不思議な引力で自然に集まる4人

2人組が苦手な4人。連絡先も交換しないまま、忘れ物と不思議な引力で、何度も引き寄せられ、段々と友情が芽生え始めてきました。

紅葉(神尾楓珠)はわざと忘れたハンカチを取りに行く名目で椿(松下洸平)の元へ。夜々(今田美桜)はゆくえ(多部未華子)の落とした塾名の入ったボールペンを頼りに、アポなしで訪問。

二人組や友達という関係にそれぞれ苦手意識があったにも関わらず、彼らは自然と2人組に。気を使わず自然体でいられるその関係は、私たちから見れば普通の友人同士でしかないのですが、他人に関係を聞かれると、まだどうしてもモゴモゴしてしまう4人。2人組同士が集まり、気づけば4人はまた椿の家にそろっていました。

■本当の忘れ物を取りに来た元婚約者

そこへやってくる椿の元婚約者、純恋(臼田あさ美)。先日、忘れ物を椿の家に回収しに来たはずなのですが、その時に回収し忘れたもう一つを確認しにやってきます。

浮気というひどいことをしたはずなのに、純恋に対して、怒りもせず、泣きもせず、本心を言わない椿の気持ちを知るために来たのです。

そこで椿は心にずっと秘め、純恋には隠し続けていた自分の本心を語り始めます。

椿が自分の考えていることを、思うがままに話し始めると、「珍しくいっぱい喋る時って意味分かんないこと言うよね」と返す純恋。

「いっぱい話す姿」が本当の椿の姿なのに、それに対して「意味分からない」という感想が出てしまう時点で、この二人は元々一緒にいるべきではなかったのだという答え合わせになってしまい、胸がギュッと締めつけられます。

椿が自分を隠して、嫌われない配慮をしていたから、実は成り立っていた関係。自分を出すことも、そのせいで苦しくなることもたくさん我慢して、それでも結婚をしようとしていたこと。

二人組を作ろうと、無理していた彼の辛さがせきを切ったように溢れ出し、初めて本心を恋人にさらけだすことができた椿。

それを怒るでもなく、「そっかそっか」と受け止める純恋の姿も印象的でした。

■椿が純恋に渡した花束に隠された意味

別れ際、弟がくれた「明日には枯れるであろう、見切り品の花束」を純恋に渡していた椿。母と弟の会話の中で「(優しい椿なら)明日枯れる花なんて、友達にこそあげないでしょう」という言葉がありました。

それをあえて純恋に渡すということは、「恋人どころか友達以下の関係である」ということ。

まりあの花束を渡す行為は、椿は純恋にはもう気持ちがないことと、彼女とはっきりと決別する、という意思表示だったのだと思います。

そして、椿は第1話で「花屋は勝手に花をグループのように寄せ集めて、きれいでしょ? と一律に並べるのが嫌い」と言っていました。加えて今話での母親の「椿は捨てられてしまう花に申し訳ない顔をする」という発言。

それらはおそらく、椿がグループを作ることが苦手だったり、廃棄される花に選ばれない自分の姿を重ねてしまったりするからだったのでしょう。

今回、純恋に渡した花束はまさに売れ残ってしまったもの。最後に本当の自分の姿と重なる花を渡すことで、もうきれいにパッケージしたうその自分ではなく、自分の本心をしっかり出し切った、という表れだったのかもしれません。

■性悪があふれんばかりに根付く街・パラレル桜新町

にしてもこのドラマ、ナチュラルに性格悪い人多すぎません? 椿にプリンターのトナー変えさせてる立場のくせに、「(印刷物が)まだ出てきてないじゃん。急いでるのに」と悪態をつく性悪女。この場でお前に許される発言は「ありがとうございます」のみだ。

「イケメンの正しい使い方。客寄せパンダくん」とモノのように紅葉を利用する知り合いや、「イラスト褒めとけば、バイトのシフト変わってくれるぞ」と打算的なバイトの同僚。

結婚式に感動して泣いていた夜々をうそ泣き呼ばわりする友人。フラれた腹いせに突如人格まで否定してくる夜々の同僚ストーカー男。

主人公の4人は純粋ないい人たちで、人付き合いに少し苦手意識があるだけで全くの無害。それなのに、こんなにも悪意や敵意をぶつけられるなんて、彼らの人付き合いに抱える問題は性悪が溢れる修羅の国・パラレル桜新町が原因なのでは?

桜新町といえばそう、国民的アニメサザエさんの舞台。お魚くわえたドラねこを追っかけていただけのあの平和な世界線はどこへ……? 今、この世界にドラねこが出たら、ドラねこはプリンター女にクソほどディスられ、紅葉界隈の輩に引きずり回され、猫を追いかける人間はみんなから嘲笑されるし、お日様も嘲笑ってるって感じの治安悪めの世界になりそうです。

■自然に芽生えた友情

気づけば4人は自然にお互いを「友達」と言い合えるようになっていました。LINEもつながり、椿の家は“部室!?”となり、今回で一気に関係が深まりました。

この4人、純恋が訪ねて来た時にはまるでしめし合わせたかのように合掌したり、椿は全てのボケを逃さずツッコミを入れたりと、実はみんなコミュ力も高く、息もぴったり。今は4人が会うのはこの部室がメインですが、関係が深まってきたら、出かけたり、違うロケーションで会ったりなんてことも出てくるのでしょうか?

この4人の関係が友情として完結するのか、はたまた恋に発展していくのかも見どころですね。

あと椿、自分が一方的に話したいがために、タバコ吸わないのに喫煙所に突撃して、知らないおじさんナンパして話しかけてんの、実はなかなかメンタル強めです。

満たされなかった会話欲はこの部室によって満たされ、喫煙所に出没する回数も減っていくのでしょうか。

■毒親登場で一波乱の予感

夜々はストーカー同僚の乱が終わったと思ったら、今度は毒親登場の気配ですね。幼少期の描写では、親の前では女の子らしい遊びをしていたけれど、いなくなった途端に将棋をしていた理由が分かりました。

固定観念強め、女の子はこうあるべき、という母の考えに縛られ、自分の好きなものを諦めるなど、おそらく母親にそこそこ人生をコントロールされてきた夜々。

母親からの電話を取る時も、一呼吸おいて切り替えてから出ていたのも印象的でした。次回はそんな母親登場で、もう少しその詳細が明らかになりそうです。

やまとなでし子)

元婚約者の「本当の忘れ物」と、花束に隠された2つの意味【いちばんすきな花#3】