人には二通りのタイプがいるかもしれません。予期した人生の通りに生きるほうが安心と考える人と、予期できない人生のほうがワクワクすると考える人。今回紹介する書籍『私はアメで、明日は晴れで』の著者「なるチャン」ことナルミさんは、断然後者のタイプのようです。

 地元・沖縄で高校生活を送っていた彼女はある日、「北米・ヨーロッパ・アジア派遣生」募集の情報を知り、「想像できなかった。だが、それが私をワクワクさせる。『もしかしたら今の自分以上の"何か"に成れるかもしれない』」(同書より)という思いから一念発起。見事、アメリカ留学の切符を手に入れます。

 こうして高校3年生のときに降り立ったのは、ミシガン州デトロイト。しかし期待とは裏腹に、なんと一日目からステイ先の家族との関係に悩まされることとなります。些細なことでキレて暴力をふるうホストファザー、味方になってくれないホストマザーとホストシスター、ドラッグ依存で自傷癖のあるホストブラザー......。いっこうに英語が上達しないこともあり、どんどんと追い詰められ、生気を失っていくナルミさん。しかしあるときついに、ホストマザーと対峙し、初めて自身の気持ちを伝えます。これは彼女が

「今までにあったいじめや仲間外れの経験から、自分を守る一番の方法は本心を隠し、他人との関わり合いを極力避けることだと思い込んでいた。だがそれが傲慢さとなり仇となる。遠い異国の地で自分だけでは解決できない問題に直面し、助けを求める重要さを身をもって学んだ」(同書より)

 という瞬間でした。こうして自身が主体になることの大切さを知り、そのための方法を模索し始めたナルミさん。持ち前の行動力やひたむきさで現状を打破し突き進む姿は、その後の人生にも一貫して通じるものがあります。

 異国の地で言葉や文化の壁に突き当たりながらも、アメリカのコミュニティカレッジ(二年制大学)に進み、そこから大学・大学院進学、GMAT試験合格、MBA取得という彼女の勉強法や思考法は、アメリカ留学や海外就職を目指す人にとって大変参考になるのではないでしょうか。

 いっぽうで、訪問販売員として入った会社で出会った上司との泥沼恋愛、出会い系アプリ「ティンダー」でのさまざまな男性たちとのデートなど、海外生活ならではの赤裸々なエピソードトークも繰り広げられている同書。そこからはYouTubeやポッドキャスト同様、彼女の飾らない人柄がうかがえることでしょう。

 現在は日本に帰国し、故郷の沖縄で結婚相手のジェイコブさんと暮らしているナルミさん。YouTubeで国際カップルの日常を定期的に配信しているので、彼女に興味を持った方は書籍とともにそちらもチェックしてみてください。

[文・鷺ノ宮やよい

『私はアメで、明日は晴れで』なるチャン KADOKAWA