ガヌーの一撃を受け、ダウンを奪われたフューリー。そのパフォーマンスに批判が止む気配はない。(C)Getty Images

 世界中から熱視線を向けられたリング上で見せた現役チャンプのパフォーマンスに“逆風”が吹いている。

 とりわけボクシング界で波紋を広げているのが、現地10月28日サウジアラビア・リヤドで実施されたボクシングヘビー級10回戦で、元UFC世界同級王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)と対峙したWBC世界同級王者のタイソンフューリー(英国)に対するものだ。

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 前代未聞の異種格闘技戦は、下馬評を覆したガヌーが奮闘。3回にはダウンを奪うなどフューリーに苦戦を強いる波乱の展開となった。最終的に2-1で判定勝ちを収めた35歳のベテラン王者だったが、ガヌーに対する肘打ちや、ガクッと運動量が落ちたシーンなど低調なパフォーマンスを露呈。完全に打ちのめされる形となったダウンもあり、判定結果が物議を醸した。

 もっとも、フューリー自身はガヌーの強さを認めている。試合後に米スポーツ局『ESPN』などの取材に対して「言い訳はしない。彼は優れたパンチャーだった」と強調。眼前に立ちはだかった巨漢ファイターの異能ぶりを称えてもいる。しかし、ボクシング界のレジェンドたちは、あからさまに精彩を欠いた姿に、ともすれば怒りにも似た感情をぶつけている。

 英スポーツ専門局『TNT Sports』の解説者を務めた世界2階級制覇王者のカール・フランプトン氏は「私の目には明らかにガヌーが勝者だと映った」と指摘。「タイソンは間違いなく彼を甘く見ていたと思う。とてもぎこちなかった」と率直に訴えた。

 また、元WBC世界スーパーミドル級王者のカール・フローチ(英国)は、英スポーツ専門ラジオ局『talk SPORT』の番組内で「多くのラウンドが接戦ではあった」と前置きしたうえで「ガヌーが勝つべきだった。俺が思うにこれは史上最高レベルの汚職だ」と強調。母国の英雄に厳しい言葉を投げかけている。

「わざわざサウジアラビアまで遠征し、大金を手にしたフューリーは、ウシク戦にすべての照準を向けていたはずだ。でも、フューリーがリングから降りたとき、彼の左目は腫れ上がり、開けられないように見えた。必ずしも外傷が試合を物語るわけではないが、この試合に限って言えば、どちらが優勢かを表すものだった。

 もうフューリーのレガシーなんてボロボロだ。あいつは金を稼ぎたいだけだろう。このガヌー戦は何のプラスにもならなかった。あの状態で12月23日にウシクと戦うつもりなのか? あれだけの損失を背負って戦えるのか? 間違いなくボクシング界、とくにヘビー級戦線にとって良くない試合だった」

 来る12月23日に予定されているWBAスーパー、IBF、WBO世界同級王者オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)との4団体統一戦が予定されているフューリー。逆風が吹きすさぶなかで、ノンタイトルマッチでつけられた汚名を返上できるだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

「史上最大の汚職だ」“現役王者”フューリーの異種格闘技戦の苦闘に母国で批判止まず「何のプラスにもならなかった」