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 普段ならカニが豊富なはずのアラスカシベリアに囲まれた太平洋最北部の海、ベーリング海で、100億匹以上のズワイガニが大量死していた。

 2018年にアラスカシベリアの海を襲った熱波は、2年以上も続き、前例がない水温の上昇と、海氷の減少を引き起こしていた。

 では熱すぎて死んだのかというとそういうわけではない。『Science』(2023年10月19日付)で発表された研究によると、カニたちはほとんど餓死していたのだという。

 その謎に迫っていこう。

【画像】 ズワイガニの個体数が激減していることが判明

 「ズワイガニ(Chionoecetes opilio)」は英語ではスノウクラブと呼ばれ、冬の味覚の王様として世界中で食されている。

 その数が激減していることが判明したのは2021年のこと。

 アメリカ海洋大気庁アラスカ漁業科学センターをはじめとする研究チームによると、ベーリング海東部の大陸棚で確認されたズワイガニは、1975年の調査開始以来もっとも少なかったという。

 熱波が到来したのは2018年のことだ。だが2020年は新型コロナのせいで、調査は行われなかった。そのせいで、海の異変の発見は1年ほど遅れることになった。

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100億匹以上のズワイガニが餓死

 一体ズワイガニはなぜ死んでしまったのか?

 今回の研究によれば、直接の死因は餓死だ。その引き金になったのは、熱波で海の水温が上がったせいでカニの代謝が変化し、必要なカロリーが増加したことだという。

 過去の研究では、水温が0度から3度に上がると、ズワイガニが必要とするエネルギーが2倍になることがわかっている。

 そしてこの水温の急上昇は、冷たい北の海で育つズワイガニの子供が、2017年から2018年にかけて遭遇した変化と同じなのだという。

 実際、ズワイガニの代謝が変化しただろうことは、この期間にカニの大きさが変わっていたことからもうかがい知ることができる。

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 猛暑が始まって以降に捕獲されたカニは、全体的に小さかったのだ。

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 しかもタイミングが悪かった。

 ちょうど熱波が襲来した頃、ベーリング海東部のカニは普段よりも増えていたのだ。そのせいで、たくさんのカニの子供たちが、普段よりたくさんのカロリーを必要とするようになった。

 このダブルパンチが、ズワイガニに致命的な打撃となったようだ。

 可能性としては、肉食性でカニやエビの幼生なども餌にするマダラによる捕食・大型のカニによる共食い・乱獲・病気といった線も考えられる。だが研究チームは、「気温と個体数の増加が、最近の激減における重要な要因」と述べている。

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ズワイガニは個体数を回復できるのか?

 気候変動、地球温暖化が海に与える影響を正しく予測することは難しい。研究チームによれば、今回確認されたズワイガニの激減は、「ある個体群の先行きが、いかに簡単に変わりうるかを示す典型的な例」であるという。

 今のところ、ベーリング海東部のズワイガニは回復しておらず、今後どうなるかは「不安定で、不確実」であるとのこと。

 ズワイガニがもっと北にある水温が低い海へと避難してくれる可能性もあるが、今回の大量死が海の生態系に与える影響はよくわかっていない。

 研究チームは、「ベーリング海で今起きている問題は、今後世界が直面することになる問題を予見させるもの」と、警鐘を鳴らしている。

追記:(2023/11/03)本文を一部訂正して再送します。

References:More than 10 billion snow crabs starved to death off the coast of Alaska. But why? | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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ベーリング海で100億匹以上のズワイガニが餓死、いったい何が起きているのか?