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 アメリカ、アリゾナ州の大部分は砂漠に覆われているが、その近くにある湖に生息する淡水魚は非常に長寿であることが新たな研究で明らかとなった。

 それは「イクチオバス属(Ictiobus)」の仲間3種で、地元では「バッファローフィッシュ」と呼ばれている。

 ミネソタ大学ダルース校をはじめとする研究チームが、アリゾナ砂漠の湖に生息するバッファローフィッシュの年齢を調べてみたところ、100年以上前に政府がこの魚を放流した頃から生きている個体がいることが判明したのだ。

 なぜバッファローフィッシュは100歳以上生きられるのか? その秘密がわかれば、人間など脊椎動物の老化についても理解が深まるかもしれない。

【画像】 アリゾナ州の砂漠の湖に生息する淡水魚

 「イクチオバス属(Ictiobus)」に分類されるバッファローフィッシュは、もともとミネソタ州などの米国北部が原産の魚だ。

 1910年代、政府は漁業推進のために、ミシシッピ川沿いでバッファローフィッシュ3種(ビッグマウスバッファロースモールマウスバッファロー、ブラックバッファロー)の養殖を行い、それらを各地で放流した。

 メキシコと国境を接する米国南西部、アリゾナ州のソノラ砂漠近くにある人造湖、ルーズベルト湖でバッファローフィッシュが放流されたのは1918年のことだ。

 それからこの湖では漁業が営まれてきたが、それも1970年代までのこと。それ以降は漁業も行われず、バッファローフィッシュの状況は、ほとんど何もわからなくなってしまった。

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ビッグマウスバッファロー / image credit:Merlordin / WIKI commons

バッファローフィッシュ3種は100年以上生きていた

 今回、ミネソタ大学ダルース校の魚類学者アレック・ラックマン博士らが調査に乗り出すきっかけとなったのは、ルーズベルト湖の下流にある貯水池「アパッチ湖」の釣り人たちだ。

 そうした釣り人たちは、アパッチ湖で釣り上げた魚の多くに、オレンジと黒のユニークな斑点があることに気づき、いったい何の魚なのだろうと訝しんでいた。

 その正体を調べるうちに、バッファローフィッシュを研究する魚類学者ラックマン博士らのことを知り、アパッチ湖へ招くことにしたのだ。

 そして明らかになったのが、1918年にルーズベルト湖に放流されたバッファローフィッシュの一部が、今も生きているということだ。

 魚の頭蓋骨の中にある「耳石」という器官の”年輪”を数えたところ、アパッチ湖で調査されたバッファローフィッシュの9割以上が、なんと80歳を超えていた。

 さらに重要だったのは、今回調べられたバッファローフィッシュ3種いずれも、100歳以上の個体が見つかっていることだ。

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 これはイクチオバス属が世界でも稀な長寿グループであることを意味している。100年以上生きる”動物”が3種類以上もいる属は、メバル属(Sebastes)を除き、ほかにはないからだ。

釣り上げられた22.6kgのバッファローフィッシュ

老化のメカニズム解明のヒントに

 こうして100歳を超える長寿の魚が発見されたが、ラックマン博士によれば、それを調べることは、ただの魚の生物学という以上にエキサイティングなことであるという。

 「これらの長寿魚種をモニターすることで、彼らのDNA、生理学、感染症や病気と闘う能力などについて理解を深めることができます」と同氏は話す。

 それは彼らがこんなにも長生きできる秘密の解明にもつながり、人間の老化について理解を深めるヒントにもなる。

 「イクチオバス属には、加齢や長寿など、老化についての情報がたくさん秘められていると思われます。そうした可能性に光を当てるこの研究は、人間をはじめとする脊椎動物の老化プロセスの完全な解明へ向けた、未来への扉を開くものです」

 この研究は『Scientific Reports』(2023年10月20日付)に掲載された。

References:Study uncovers hundred-year lifespans for three freshwater fish species in the Arizona desert / written by hiroching / edited by / parumo

 
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アリゾナ州の砂漠の湖にいる淡水魚3種は100歳以上生きる長寿であることが判明