マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)版スパイダーマンが活躍する人気シリーズの第2弾『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)と第3弾『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)が、日本テレビ系金曜ロードショー」にてそれぞれ11月3日と10日(金)に地上波初放送される。『ファー・フロム・ホーム』と『ノー・ウェイ・ホーム』は密接なつながりを持つ連続した作品だが、一方でMCUの世界で起こった事件と地続きの状態からスタートしているため、前提を知らないとわかりづらい描写や展開があるのも事実。そこで今回、最低限の知識でこれら2作品を楽しむことができる関連作3本を紹介。地上波放送に向けてこれだけ押さえておけば、スパイダーマンの物語をしっかりと理解できるはずだ。

【写真を見る】自らの命を犠牲にしサノス軍を消し去ったトニー(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)

アイアンマンとの師弟関係が描かれる『スパイダーマン:ホームカミング』

MCUスパイダーマンの初登場作品となったのは、2016年公開の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』。ヒーローを国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」をめぐり、キャプテン・アメリカ(クリスエヴァンス)とアイアンマン(ロバートダウニー・Jr.)が対立し、それぞれの陣営についたヒーロー同士が戦う。そのなかでアイアンマントニー・スタークが新たなヒーローとしてスカウトしてきたのが、スパイダーマンピーター・パーカー(トム・ホランド)だった。

アイアンマン陣営に加わったスパイダーマンは、MCUデビューを飾り、ヒーロー活動をスタートさせる。そして、デビュー戦である『シビル・ウォー』を経て、本格的なスパイダーマンの活躍は単独シリーズ第1弾『スパイダーマン:ホームカミング』(17)で描かれることとなる。

トニーから一応は認められた形で、アイアンマンの技術を応用して作られたスーツを着用し、ヒーローとして行動するピーター。しかし、彼は高校生であり、人間としてもヒーローとしてもまだまだ未熟。トニーからの指令を待ちつつ、身近な場所で人助けや犯罪者の取り締まりを行っていた。そんななかピーターは、『アベンジャーズ』(12)におけるロキ(トム・ヒドルストン)率いるチタウリ軍との戦いで残された、宇宙の物質が違法に売買されていることを知る。

トニーに報告するも相手にしてもらえなかったピーターは、独自に実行犯たちを追い始めることに。しかし、その行動を阻止すべく現れたのは、地球外の技術で作られた翼型の飛行ユニットを装着したヴァルチャー(マイケル・キートン)だった。ヴァルチャーとの戦いに敗れ、ギリギリのところでトニーに救われるピーター。「危ないことはするな」と注意されながらも、再びフェリーの上で行われる物質の売買を阻止しようとしたピーターだが、戦いに巻き込まれたフェリーは大勢の人を乗せたまま沈没の危機に見舞われてしまう。

再びトニーに救われたピータースパイダーマンのスーツを没収され、ヒーロー活動の禁止を言い渡される。普通の高校生として生活をしようとした彼は、憧れの同級生リズ(ローラハリアー)の父親がヴァルチャーの正体であることを知り、トニーとの約束を破って単身ニューヨークを救うべくスパイダーマンとして行動する。

本作でピーターを導く師にして、疑似的な父親のようにも関わるトニー。一度は失望されながらも、再びトニーに認められるまでのピーターの行動と2人の信頼関係にスポットが当てられた物語となっている。そしてその関係性は、その後の作品にも大きな影響を与えていくのだ。

サノスの前にアベンジャーズが敗れ去った!?『アベンジャーズインフィニティ・ウォー』

『ホームカミング』での戦いを経た『アベンジャーズインフィニティ・ウォー』(18)で、トニーにヒーローとして認められたピーターが新たに戦うことになったのは、宇宙から訪れた脅威だった。ヒーローたちが持つ「インフィニティ・ストーン」を手に入れるべく、サノス(ジョシュ・ブローリン)の部下たちが地球に襲来。ピーターは、サノスの部下を倒すべく共闘していたトニーとドクター・ストレンジ(ベネディクトカンバーバッチ)に加勢する。

タイムストーンを手に入れるためにストレンジをさらったサノスの部下を追い、トニーと共に敵の宇宙船に乗り込んだピーター。一方、サノスは着実にインフィニティ・ストーンを集め、宇宙の生命を半分にするという目的を果たすべく邁進していた。ピーターは、トニーとストレンジ、宇宙で出会ったスター・ロード(クリス・プラット)ら、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーと共にサノスを止めるべく戦うが、圧倒的な力の前に完敗する。

トニーが生き残ることで、唯一ヒーローたちが逆転する未来に賭け、タイムストーンをサノスに渡す決断をするストレンジ。その後、すべてのインフィニティ・ストーンを手に入れ、全宇宙を変える力を得たサノスは、ストーンが嵌め込まれたインフィニティ・ガントレットで、自身の願いを叶えるべく指を鳴らす。その瞬間、全宇宙の生命の半分が消えることとなった。ヒーローたちの多くも消えていくなか、ピーターも“消える側”となってしまう。自分の息子のように関わってきたピーターが塵となり、消えていく衝撃は、トニーの心に深く刻み込まれることとなる。

■消えた命を取り戻すため、サノスとの最終決戦が展開される『アベンジャーズ/エンドゲーム』

地球へと帰還し、キャプテン・アメリカと和解したトニーが、生き残ったヒーローたちと奔走する『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)。劇中世界では5年もの歳月が過ぎるが、アベンジャーズは時空を超えてインフィニティ・ストーンをもう一度集め、全宇宙の命を取り戻すミッションに成功する。しかし、トニーたちが使った時空を超える装置を利用し、過去の世界からサノス軍が地球に襲来。その時、消えていたヒーローたちが復活し、アベンジャーズのもとに集結する。

ヒーローたちとサノス軍による最終決戦が行われるなか、インフィニティ・ガントレットの争奪戦も展開。そして、生き返ったピーターもこの戦いに参戦し、トニーとの再会を喜ぶ。しかし、戦いが大詰めを迎えると、世界の運命はサノスとトニーによるストーンの奪い合いに委ねられることに。サノスの裏をかき、すべてのストーンを手に入れたトニーは、自身の命と引き換えに指を鳴らし、サノス軍を消し去る。ようやくトニーと再会したピーターだが、今度は逆の形で別れることになってしまうのだった。

アイアンマンを失った喪失感、サノスの“指パッチン”後の世界を描くスパイダーマンの新たな物語

『ファー・フロム・ホーム』は、ピーターにとっての指導者であり、恩人であり、憧れの存在…そして父のような人物であったトニーの死が、物語の重要な“核”として描かれていく。トニーの存在の大きさ、重さ、それを受け継ごうとするピーターの前に現れるある人物。その人物もまた、トニーとある意味“対”となる存在であり、成長過程のピーターの心を揺さぶることになる。

一方で、サノスの“指パッチン”によって、人類の半分が5年の間消えていたことになるのだが、生き残ったもう半分の人たちはその間も日々の営みを続けていたため、複雑な状況をもたらしていた。その世界はかつての日常とまったく同じとは言いきれず、人々の心に大きな影響が残っていることも語られる。アイアンマンキャプテン・アメリカという精神的支柱がいなくなり、“空白の5年”を経てより混沌となる世界。今回紹介した3本で起こった出来事を押さえておくことで、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の物語もスムーズに頭に入ってくるはずだ。

文/石井誠

現役の高校生でまだまだ未熟なスパイダーマンことピーター・パーカー(『スパイダーマン:ホームカミング』)/[c]Everett Collection/AFLO