多部未華子、松下洸平、今田美桜神尾楓珠が“クアトロ主演”を務めるドラマ「いちばんすきな花」(毎週木曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)。11月2日放送の第4話は、夜々(今田美桜)の物語が注目された。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】出版社で椿(松下洸平)と偶然会い、イラストを見てもらう紅葉(神尾楓珠)

■夜々が抱えてきた苦悩とは

社会現象にもなったといわれる2022年10月期のドラマ「silent」(フジテレビ系)のプロデューサー・村瀬健氏と脚本家・生方美久氏が再びタッグを組んだ本作。「男女の間に友情は成立するのか?」という永遠の命題をテーマに、違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出す“友情”と“恋愛”、そしてそこで生まれるそのどちらとも違う“感情”を描く。

学習塾の講師をしている34歳の潮ゆくえを多部、出版社に勤める36歳の春木椿を松下、美容師で26歳の深雪夜々を今田、コンビニで働きながらイラストレーターを夢見る27歳の佐藤紅葉を神尾が演じる。

前回描かれた「友だち」と互いを呼べるようになった4人。ゆくえが学生時代の友人に話した「大人になってもさ、友だちってできるもんだね」という言葉には、視聴者から賛同、羨望、期待…さまざまな声が寄せられた。

そして第4話で焦点が当てられたのは、夜々。幼いときから抱えてきた苦しみを、ゆくえに打ち明けた。

■「女の子でいることがつらい」

自分が女の子らしいことをしてもらえなかったという母・沙夜子(斉藤由貴)の思いで、お人形遊びなど女の子らしさを押し付けられてきた夜々。また、学生時代には、メイド喫茶に決まった文化祭の出し物で売り上げのために自分との2ショット写真の予定を立てられ、美容師になって就職した美容室ではすぐに“看板娘”“マスコット”といわれた。周囲からの勝手な期待。「私は“お人形”だ」という思いが夜々の心にずっと重くのしかかっていた。

夜々に会うために突然やって来た沙夜子の存在により息苦しくなっているとき、ゆくえに食事に誘われ、椿のことを話題にして笑いあい、4人のライングループでの会話でも自然と笑みがこぼれた。

けれども、向き合うべきときがきた。4人で集まる約束ができた日、職場に沙夜子が迎えにきて、沙夜子と夕飯を食べることに。そのときスマホを気にする様子を注意され、「友だちはちゃ~んと選ばな」と言われ、思いがあふれ出した。

「お気に入りのお人形生んで、それで遊んどるだけ」。

そう言ってアパートを飛び出し、椿の家に向かった夜々。出迎え、用意していたピザを温めようとしてくれるゆくえのセーターの袖口をギュッとつかんだ。夜々の表情からすぐに何かあったと汲み取ったゆくえは、椿とアイコンタクトをとり、椿は紅葉をサシ飲みに誘って家を出た。

ゆくえと2人になった夜々は、中学生のときに保健室の先生に「女の子でいることがつらい」と相談したことがあると話した。ただ、先生はその思いをちゃんと受け取ってはもらえなかった。男の子になりたいわけでも、恋愛対象に悩んでいるわけでもないのだ。「女の子として愛されていることが感じ過ぎてきついし…。こう思っちゃう自分も嫌い」と涙する夜々。

■友だちという、優しく寄り添う存在の大きさ

ゆくえはちゃんと耳をかたむけ、寄り添ってくれた。背中にそっとあててくれた手がどれほど温かかったことだろう。ゆくえは、椿の家から帰るバスの中で「お人形にならないでね。夜々ちゃんでいてね」と言い、その夜は有無を言わさず自宅に泊めてあげた。

そんなゆくえの優しさに背中を押されるように、夜々は沙夜子に「つらかった」と打ち明けることができた。「ピンクもスカートも嫌いじゃないとよ。でも一番好きな色は紫やし、スカートよりズボンの方が好き。料理はホントに嫌い。ママのことは嫌いじゃない。好きだよ。好きやけど…嫌いなとこがいっぱいある」。沙夜子は「ママの理想を押し付けてしまったのかもしれんね」と詫びた。

その後、椿が夜々の美容室を訪れた。夜々はでんでん虫(かたつむり)がかわいくて好きで、アジサイが“いちばん好きな花”という、さりげなくタイトルに通じるたわいもない会話を交わした。椿らしく寄り添ったのだろう。ちなみに、第1話で夜々は「かたつむりになりたい」と言っていたが、雌雄同体であることが夜々の思いにつながっているのだろうか。

また、紅葉は、4人の集まり用の買い物で、分け合うことを想定して2個入りの雪見だいふくパピコを2つずつ買おうとし、ひょんなことから買うことになったお菓子のパイの実も4人で割れる個数入りか気にかけていた。

夜々がピンチのときのゆくえと椿のアイコンタクトは、年上の友だちとしての気遣いを感じる連携がよかった。「2人組になれなかった4人」だったのに、必要なときには2人組になれる。そんな関係が出来上がってきているのだ。

SNSには「よく言えたよ、夜々ちゃん」「ゆくえの言葉で夜々はすごく救われた」「夜々ちゃんの気持ちわかりすぎて涙出た」などの声があがり、タイトルと「夜々ちゃん」がトレンド入りする反響となった。

ここまで友情の成り立ちが描かれてきたが、第4話ラストのゆくえと紅葉の場面は、紅葉のゆくえへの感情が恋愛に近いのかもしれないと思わせるものだった。また一歩進んだ関係が見られそうだ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

夜々(今田美桜)は母と向き合うことに/(C)フジテレビ