巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、当時最先端だったSFX技術を駆使して恐竜たちを現代によみがえらせた『ジュラシック・パーク』(93)の公開から、今年で30年。シリーズ化もされながら次々と映画史の記録を塗り替え、いまも根強いファンが後を絶たない「ジュラシック」シリーズはなぜここまで愛される作品となったのだろうか。

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これまで「ジュラシック」シリーズが打ち立ててきた偉大な足跡と、初夏に立ち上げられた『ジュラシック・パーク』30周年特設サイト、そして現在開催中の「第30回キネコ国際映画祭」で行われた『ジュラシック・パーク』30周年記念上映イベントの模様と共に、改めてその魅力を紐解いていこう。

■全世界興収は60億ドルを突破!映画史に名を刻む“エンタテインメントの王者”に

1993年6月11日に『ジュラシック・パーク』は全米で封切られ、たちまち多くの観客たちに衝撃を与えた。コスタリカ沖に浮かぶイスラ・ヌブラル島に作られた“ジュラシック・パーク”を訪れた古生物学者のグラント博士(サム・ニール)らが目撃する、生きて動く恐竜たちの姿。観客も劇中の登場人物たちと同じように驚き、そして繰り広げられる悲劇で恐竜の恐ろしさを思い知らされる。

この1作目は、北米での興行収入は当時歴代興収第1位の『E.T.』に迫る3億5700万ドルを記録。日本でも大ヒットとなり、全世界興収は9億ドルを突破。当時の世界新記録を樹立することに。その後、引き続きスピルバーグ監督がメガホンをとった『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』(97)、ジョー・ジョンストン監督の『ジュラシック・パークIII』(01)とシリーズは展開し、いずれも大ヒットを記録する。

それから10年以上の時を経て、スピルバーグ監督が見出した若き才能コリン・トレボロウ監督のメガホンで『ジュラシック・ワールド』(15)として再始動を迎えると、世界中で空前のメガヒットを記録する。ブランクを感じさせない熱狂ぶりで、「ジュラシック」シリーズの人気をあらためて証明することとなった。

ジュラシック・ワールド」シリーズでは、恐竜たちのテーマパークのオープンと、イスラ・ヌブラル島の噴火によって恐竜たちに再び訪れる絶滅の危機を通して、人間と恐竜との共存というテーマが描かれていく。そして完結編となった『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では『ジュラシック・パーク』のオリジナルキャストが加わり、“パーク”と“ワールド”が本格的に合流。シリーズを追い続けたファンを歓喜させた。

シリーズ6作品のうち4作品が、再上映での成績も含み全世界興収10億ドルを突破。シリーズ累計での全世界興収は60億8000万ドル以上。実生活では絶対に観られないものが観られることこそ、映画の醍醐味のひとつであり、それこそが「ジュラシック」シリーズが“特別な作品”であり続けている理由だろう。

■“恐竜映画”の常識を変えたアイデアと技術革新

恐竜映画の歴史は、“映画の父”と称されたD.W.グリフィス監督の『Brute Force』(1914)から始まった。その後、何度も映像化されたアーサーコナン・ドイルの「失われた世界」や、エドガー・ライス・バローズの「時間に忘れられた国」を原作とした「恐竜の島」シリーズなど、“恐竜たちが人知れず生き続けていた”という前提のもとに構築される“ファンタジー”であることが主流だった。

しかし「ジュラシック」シリーズにおいて恐竜たちは、進み続ける科学技術によって人間が生みだしたものとして出現する。『ジュラシック・パーク』の劇場パンフレットには、スピルバーグ監督の言葉としてこうつづられている。「これはサイエンス・フィクション(科学的空想)ではなく、サイエンス・イベンチュアリティ(科学的に起こり得る事態)だ」。

恐竜の血液を吸っていた蚊が入った琥珀から、およそ6600万年前に絶滅した恐竜のDNAを摘出。そして最新鋭の遺伝子工学によって恐竜たちが現代に再生される。原作者であるマイケルクライトンが生んだこのアイデアは、人間による能動的な行動が結果的に人間社会を脅かすことへの警鐘というSF作品の醍醐味を忠実に守りながらも、それでも生きた恐竜を見てみたいという誰もが一度は抱いたことのある好奇心を共存させ、SFもファンタジーをも超えたものへと昇華させていった。

「恐竜を本物らしく見せるためには、一つ一つの筋肉の動きから創らなければなりません。少なくとも恐竜がナショナル・ジオグラフィックに撮られている象くらい本物に見えなければ、この映画を創りたくなかったのです」。デビュー作の『激突!』(72)から『ジョーズ』(75)、さらには『E.T.』(82)にいたるまで、斬新な映画表現で世界中を魅了してきたスピルバーグ監督は、『ジュラシック・パーク』を手掛けるにあたって恐竜たちが生きて動いている姿を見せることにこだわり、試行錯誤を重ねたという。

スタン・ウィンストン率いるチームが1年かけて恐竜たちの調査を行ない、アニマトロニクスを駆使した撮影で恐竜たちのディテールにリアリティを持たせる。さらにジョージ・ルーカスが創設したILMのデニス・ミューレン率いるCGチームが、開発されたばかりのモーフィング・テクニックで恐竜たちの雄大な全身運動を作りだす。

従来のストップモーション・アニメーションを発展させたものを取り入れる案もあったというが、新たな挑戦を積極的に取り入れることで映画の技術革新を示す。技術をもってすれば、恐竜をよみがえらせることだって可能になる。この作品が、後の映画の常識を大きく塗り替えたことはいうまでもないだろう。

■記念すべき30周年を祝福!特設サイトではファン感涙の動画が続々公開中

現在開設されている『ジュラシック・パーク』30周年特設サイトでは、30周年に合わせて行われる様々な記念企画や特集、イベント情報やオリジナル商品情報が随時発信。さらにファン必見の様々なスペシャル動画も公開されている。

10月17日に公開された「キャストたちが明かす撮影の舞台裏」では、『ジュラシック・パーク』で幼い姉弟を演じたレックス役のアリアナ・リチャーズとティム役のジョセフ・マッゼロが登場。すっかり大人になった2人が当時の撮影秘話を語り合う様子は感慨深いものがある。

また10月24日に公開された「キャストたちが選ぶ一番の思い出シーン」には、リチャーズとマゼロに加え、アラン・グラント博士役のサム・ニール、エリー・サトラー博士役のローラ・ダーン、イアンマルコム博士役のジェフ・ゴールドブラムも登場。当時の貴重なメイキングの様子とともに、彼らが本作の名シーンを振り返っていく。これを観れば、またシリーズ1作目を観返したくなることだろう。

ほかにも『ジュラシック・パーク』の劇中に登場したMr.DNAがテーマパーク裏側をナビゲートする「Mr.DNAスペシャル動画」も、「遺伝子ラボ」と「車両紹介」「トリケラトプスの医療サポート」の3バージョンが公開中。懐かしさあふれる映像とユーモラスな語り口が実に魅力的だ。

ラグビー日本代表、松田力也選手が“ジュラシック愛”を語るトークイベントも!

開催中の「第30回キネコ国際映画祭」では、11月2日に『ジュラシック・パーク』をスクリーンで上映。鑑賞券は発売開始後すぐに完売となり、いまもなお愛され続けるファンの熱量がうかがえる。上映前のトークイベントには、シリーズの大ファンだというラグビー日本代表の松田力也選手が登壇。会場に集まった子どもたちに熱烈な “ジュラシック愛”を語った。

「ほぼ同い年ということもあり、小さい時から『ジュラシック・パーク』が身近にあり、大人になってからも何度も観てきました」と、「ジュラシック」シリーズと共に成長してきたことを振り返る松田選手は、もちろん大の“恐竜好き”。なかでも一番好きな恐竜は、シリーズのシンボル的存在でもある肉食恐竜の王者T-REXとのことで、「迫力もあるし強いし、スピードもある。“ザ・恐竜”というイメージで大好きですが、あまり出くわしたくはないですね(笑)。でも戦うのは無理でも、めっちゃ速く逃げられると思います」と茶目っ気たっぷりに脚力をアピール。

先日まで行われていたラグビーワールドカップフランス大会では、キック成功率95%という驚異的な活躍を見せた松田選手。キック前のルーティーンとして取るポーズが恐竜の手元に似ていることから“恐竜ポーズ”とも呼ばれているが、「キックの時に右肩が下がってしまうと上手く蹴ることができないので、初めから力を入れるために意識したことが始まりでした」とその誕生秘話を明かす。そしてその場で“恐竜ポーズ”を生披露。「試合以外でやるのは恥ずかしいですね…」と照れ笑いを浮かべていた。

そして、今年30周年を迎えた「ジュラシック」シリーズに続いて、松田選手自身も来年30歳という節目の年を迎える。「ラグビー選手としては30歳を超えてからが大切。味がたくさん出てくると思うので、それに向かっていきたいですし、長くラグビーを続けて『ジュラシック』シリーズのように人気が出るようが頑張りたいと思います!」と力強く意気込んだ。

「第30回キネコ国際映画祭」の会期中には、二子玉川ライズの中央広場で開催されるキネコマルシェにて『ジュラシック・パーク』30周年記念ブースも登場。マテル・インターナショナル製の公式フィギュアを手に取って遊べるトイプレイコーナーや塗り絵コーナー、恐竜とのAR写真が撮影できるフォトスポットなど、子どもも大人も楽しめる内容となっており、11月3日から11月5日(日)の連休期間中には恐竜コスチューム隊の出現も。

完結後も世代を超えて愛され続ける「ジュラシック」シリーズ。知ってはいるけど実は本編を観たことがないという人や、生まれた時から「ジュラシック」があった世代の子どもたちにとっても、この30周年という大きな節目は恐竜たちの迫力と興奮を味わう絶好の機会。シリーズを愛してきたファンの方々も一緒に、『ジュラシック・パーク』30周年を盛大にお祝いしよう!

取材・文/久保田和馬

11月6日(月)まで開催される「第30回キネコ国際映画祭」で『ジュラシック・パーク』30周年記念上映イベントが行われた