福島中央テレビの情報番組「ゴジてれ Chu!」で、毎週火曜日に放送されている人気ミニコーナー「にゃん旅鉄道」。「ねこが働く駅」として知られる福島県会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介している。約1分間の短いコーナーながらTVerでは、この4年間で総再生数170万回を突破し、なんと映画も公開された。

【漫画】上坂さんが劇場版で声優を務めたぴーちの「新しい魅力を見つけた」というエピソード

2023年10月30日(月)に発売された書籍「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」は、そんな「にゃん旅鉄道」をモチーフにした創作漫画。昨年亡くなった猫駅長の長男らぶ、マイペースな次男のぴーち、そして、現在アテンダントとして活躍している末っ子さくらの1年間を描いた物語で、WEBサイト「ウォーカープラス」での連載分に加え、書籍限定エピソードも加筆されている。

劇場版「にゃん旅物語」でぴーちの声を担当した声優の上坂すみれさんは、本書について「猫ちゃんたちの雰囲気もすごく出ていると思います」とコメント。劇場版での映像を思い出しながら、漫画の感想を聞かせてくれた。

■猫のぽてぽてした歩き方など、映像が目に浮かぶ漫画

――まずは漫画を読まれての感想を教えてください。

絵柄が本当にかわいくって、劇場版のアフレコで見ていた「にゃん旅鉄道」のイメージそのままの世界だなと思いました。猫のぽてぽてした歩き方など、映像が目に浮かぶようなタッチのイラストだなって。

――上坂さんから見ても、雰囲気が出ていますか?

はい。人々のやさしい感じとか、猫ちゃんたちの雰囲気もすごく出ていると思います。劇場版をご覧になった方は、私たちの声を思い浮かべながら読むことができるのではないでしょうか?それから駅の風景もとても素敵なタッチで描かれているので、普段駅を利用されている方や遊びに行ったことのある方は、思い出が蘇るのではないかとも思いました。

――猫たちの表情はいかがですか?

やっぱり主役のさくらちゃんがかわいいです。さくらちゃんは頑張り屋さんで、やんちゃで、自由で元気いっぱい。そういうかわいさが出ているなと思いました。それから、私が演じたぴーちさんはとってもマイペースなのですが、漫画でさくらちゃんを見守っている姿を見たら、すごくいいお兄ちゃんだなと改めて感じて、新しい魅力を見つけた気がしました。そして、らぶくんが本当に素敵で…。

らぶくんは劇場版が公開されてすぐに旅立たれてしまいましたが、この漫画にはらぶくんの想いが詰め込まれているように感じました。例えば、「寂しくなったらお空を見上げてごらん」というセリフを読んだときは、今もぴーちさんとさくらちゃんを支えてくれているように感じて涙腺が…。動物のお話って涙腺がウルっとしがちですが、今回はご縁のある猫駅長さんたちのお話なので、特に思い入れをこめて読んでしまいました。

■「にゃん旅鉄道」は人間・猫問わず、やさしい人ばかりの素敵な世界

――特に印象に残っているエピソードは何ですか?

さくらちゃんが子猫時代のお話です。劇場版でも芦ノ牧温泉駅の四季折々の風景が印象的でしたが、漫画で見ても桜のライトアップのカットがすごくきれいでした。そして、その回のラストカット「お兄ちゃん また来年もザンギョウしようにゃ」というセリフが切なくて…。らぶくんとさくらちゃんはいつも一緒にいると思っていたので、このカットを見た瞬間、胸がギュッとなりました。

本当のさくらちゃんもたまにらぶくんのことを思い出すのかな?と、思いを馳せてみたりして…。でも、駅にいらっしゃるのはやさしい方ばかりだから、きっと寂しくないですよね。本当に人、猫問わず、やさしい人ばかりの素敵な世界なんですよ、「にゃん旅鉄道」の世界は。しかもこの駅が実在するということが、すばらしいですよね。

――ウルっときたのはどんなシーンですか?

“ぼーにゃす”ということで、らぶくんが会いにきてくれる回で、らぶくんがぴーちさんとさくらちゃんに「みんなは電車から降りて」と言うところです。妹思いのらぶくんがいじらしくて。らぶくんが旅立ったときはまだ10歳に満たない若さだったので、きっと「さくらは大丈夫かな?」という気持ちだったのではないかと思っていたんです。なので、らぶくんのそんな想いがこの漫画で果たされていたらいいなとも感じました。

■働き者のらぶとのんびり屋のぴーちは、いいコンビの兄弟

――劇場版でぴーちを演じた際には、どんなことを意識されましたか?

ぴーちさんはお兄ちゃんぽい感じがありつつ、ちょっと自由人。「眠い時は寝ちゃおうよ」みたいなセリフが多かったので(笑)、のんびりしたお兄ちゃんを意識しました。駅長で働き者のらぶくんといい感じで対称になっていたんです。らぶくんは毎日駅に出ていましたが、ぴーちさんは寝ていたり、さくらちゃんと遊んでいたり…。キリッと仕事モードにさせてくれるらぶくんと、おうちでリラックスさせてくれるぴーちさんは、いいコンビだなと思っていました。

――著者のゆきよみさんが、「ぴーちはマイペースだけど、ぼそっということがおもしろくて、笑いのセンスがあるイメージ」と言っていて、それが漫画にも出ていたのではないかと思います。おもしろいと感じたポイントはありましたか?

ぴーちさんは劇場版でもよく食べているシーンが登場しましたが、漫画でもさくらちゃんと一緒に会津料理を食べているんです。そのシーンでぴーちさんはさくらちゃんの心配しているんですけど、顔はめちゃめちゃモグモグしているところがおもしろいなと思いました。やっぱり食欲が一番なんだなって(笑)。

■猫は友達みたいに接してくれて、変え難い存在

――ところで上坂さん自身も猫を飼っていらっしゃいますが、猫の魅力はどんなところにあると思いますか?

猫って、人間と対等にいてくれるんですよね。「話、聞こうか?」みたいな感じで寄って来てくれたかと思えば、「今日は眠いから寝とくわ」と無理をしない。友達みたいに接してくれて、変え難い存在だなと思います。

うちのメロウくんは基本的にはすごく人懐っこくて、私が部屋を移動するとメロウくんも移動します。それで台本チェックや歌の練習をすると、なぜか一緒に大きな声を出します(笑)。最初はびっくりしましたけど、そこがうちの猫ちゃんのかわいいポイントだなと思っています。

――おもしろいですね。Instagramで写真を拝見しましたが、美形の猫さんですよね。猫種は何ですか?

シンガプーラというちょっと珍しい猫ちゃんで、本当は世界で一番小さい猫なんですけど、メロウくんは4キロぐらいあるので見た目は普通の猫ちゃんと同じです(笑)。小さい頃によく食べていたせいか、スクスク育ってくれたみたいで。ジャンプするときなどは足の筋肉がモリッとしているのがわかって、かっこいいんですよ(笑)。

――それも漫画になりそうですね。

漫画!いいですね(笑)!

――最後に、漫画「にゃん旅鉄道〜さくらの物語〜」や劇場版DVDをきっかけに、これから「にゃん旅鉄道」に触れる方にメッセージをいただけますか?

劇場版「にゃん旅鉄道」は、らぶくんとぴーちさんと小さなさくらちゃん、そして初代駅長のばすさんの声を私たち声優陣が担当していて、ばすさんが3兄妹を見守っている様子が描かれていますが、漫画ではさくらちゃんの成長をらぶくんが見守ってくれています。そのなかで人と猫が触れ合う芦ノ牧温泉駅の風景が描かれていて、とても心温まる作品だと思うので、ちょっと疲れたなというときにふと読んでみると癒やされる漫画ではないかと思います。

旅が好きな方、猫が好きな方、癒やされたい方、地元の方、いろんな方に楽しんでいただける作品だと思いますし、この作品をきっかけに芦ノ牧温泉駅に足を運ばれる方が増えたら、ステキだな〜と思います!

取材・文=及川静

漫画には虹の橋を渡った長男の想いが込められているように感じたと語ってくれた