スウェーデンのゲームデベロッパーであるEmbark Studioによる対戦型チームFPS『The Finals』が、11月5日までオープンβテストを実施中だ。

【画像】夢のバトロワ『The Finals』のスクリーンショット

 本作の舞台は、現実と同等の地形が再現されたバーチャル空間。プレイヤーは他の参加者と3人1組のチームを結成し、1位を目指して別チームと戦いを繰り広げる。言うなれば興行主によって開かれたリアリティショーで、参加者同士が賞金をかけて争い合うイメージだ。

 今回は筆者が『The Finals』を実際に遊んで感じたことを中心に、他のバトルロワイヤルゲーム(バトロワゲーム)との違い、本作が秘める唯一無二の魅力について言及する。

■現実そっくりのVR空間で戦うチーム対戦FPS

 全員とは言えないものの、一度は「現実世界でもしバトルロワイヤルが開かれたら?」「見慣れた学校や住宅街がある日戦場に変わったら?」といった、生産性のない妄想に耽ったことがあるのではないだろうか。そして『The Finals』のファーストインプレッションは、まさしく「学生時代の妄想がついにゲームで実現したんだ」という、あの頃の自分に見せたくなるような一種の発見と快感だった。

 冒頭で述べた通り、本作は多数の参加プレイヤーが頂点を目指して戦う、一人称視点のバトロワゲームをベースとしている。しかし単純なプレイヤーキル(≒他プレイヤーの脱落)のみを狙うのではなく、目標はあくまでも”賞金の獲得”にある。

 オープンβテスト版でプレイできるゲームルールは、「クイックキャッシュ」と「コインダッシュ」の計2種。細部こそ異なるものの、「最も多くお金を稼いだプレイヤーが勝利」という点において共通している。ここからは「クイックキャッシュ」のプレイ方法を踏まえつつ、本作の基本的な流れをご紹介する。

 『The Finals』ではゲームを始める前に、まず3タイプのロードアウトから1つを選択する。機動力に優れた「ライト」。攻守のバランスが良い「ミディアム」。火力に特化した「ヘヴィー」。これらはいずれも性能面(スキル・ガジェット等)が差別化されており、プレイヤーは自身のスタイルをはじめ、チームメンバーの構成と相談しながら吟味することになる(各タイプの使用感は後述)。

 クイックキャッシュの勝利条件は、“他チームよりも先に2万ドルを回収する”こと。ゲームが始まるとマップ内に賞金が詰まった「キャッシュボックス」が出現。各チームはどこかに置かれたキャッシュボックスを拾い、「キャッシュアウトステーション」と呼ばれる所定のポイントまで運ぶ必要がある。ポイント内に金庫を持っていくと送金が開始され、作業終了までポイントを守り抜くことができれば1万ドルを獲得。早い話、送金を2度成功させれば勝利になる。

 ただし「キャッシュボックスを所定の位置へ運べば安心」というわけではまったくない。むしろポイント内へたどり着いてからが本番で、金庫からお金がすべて送金されるまで、キャッシュアウトステーションを防衛しなければならないからだ。

 送金の進行状況は金庫を奪ったチームがそのまま引き継ぐことができるため、必然的に漁夫の利を狙ったプレイングが頻発する。つまりキャッシュアウトステーションを横取りしてお金を稼ぐべく、他チームがひっきりなしに奇襲を仕掛けてくるというわけだ(逆も然り)。

 先に送金をはじめたチームの背後を襲うのか、それとも真っ先に金庫を確保して守りに徹するのか。判断の可否は各プレイヤー並びにチームに委ねられているものの、金庫の確保⇔キャッシュアウトステーションの防衛で立ち回りが大きく異なる点は言及すべき特徴だろう。

 また、ゲームスタート時に選んだロードアウトによっても、戦闘時の立ち回りがかなり違ってくる。たとえばミディアムの場合、アサルトライフルや回復系ガジェットを運用することで、攻撃とサポートの両方で役に立てる。一方のライトは味方の支援というよりも、先陣をきって攻撃を仕掛けつつ、近距離でのかく乱に適したスキルやガジェットが揃っている。

 ミディアムとライトよりも機動力が劣るヘヴィーは、ライトマシンガンロケットランチャーといった火力に特化した火器を携行し、味方を守るためのバリケードも展開できる。筆者はファーストインプレッションにて、縦横無尽に走り回ってサブマシンガンを掃射するライトを気に入っていたが、試行錯誤を重ねるにつれ、シチュエーションを問わず戦えるミディアムの便利さに心を惹かれていた。

 特に「これは絶対に必要だ」と感じたのが、ミディアムの固有ガジェット「粘液グレネード」。爆発時に液体が凝固してオブジェクトを生成するガジェットで、キャッシュアウトステーションを守る際、他プレイヤーが入ってこないよう通路を塞ぐのに非常に有用だった。これは数あるケースのうちの一例に過ぎないが、各タイプの強みを活かしてどのように戦うか考えるのも、『The Finals』に秘められた魅力だと言える。

■なんでもぶっ壊してOK 勝つためなら地形すらも利用すべし

 オープンβテスト版で実装されているマップは「ソウル」と「モナコ」の2つ。どちらも現実世界の地形が意識されているほか、前者は「上下の立体構造が際立った高層ビル群」、後者は「低階層の家屋が林立する住宅街」と、それぞれ景観がまったく異なる。ゆえに各プレイヤーはマップの地理を把握しつつ、戦闘面で優位にたてるよう立ち回らなければならない。

 ここで重要なのは、『The Finals』が“オブジェクト破壊システム”を大々的に採用している点だ。そしてこのシステムこそ、『Apex Legends』や『PUBG』など、市場で流行したバトロワゲーム作品と差別化を大きく図った点ではないかと考える。

 本作ではほぼすべての造物に何らかの衝撃を与えることができる。たとえば「通行のために壁を壊す」「天井をぶち抜いて屋外へ脱出する」等々、あらゆる場面においてオブジェクトの破壊行為が認められている。辺りに転がっているガスボンベを撃って爆発させたり、乱戦が起きている部屋の床を壊して全員を落下させる……といったアクションも可能で、類似したシステムを挙げるなら、「バトルフィールド」シリーズや『レインボーシックス シージ』といったゲーム作品が近いかもしれない。ただしこの2作品は大規模戦闘や屋内での5vs5をメインに捉えたFPSであり、『The Finals』とは異なる要素が多い点を留意していただきたい。

 上述の通り、本作のメインモード「クイックキャッシュ」では金庫の奪取と防衛が激しく入り乱れる。ゲームスピードも比較的早く、「マップ内を走り回る」「接敵したプレイヤーを銃撃」「金庫を見つけて目的地まで移送」といったイベントが次々に巻き起こる。そこへさらにアクセントを加えるのが、ド派手なオブジェクト破壊システムというわけだ。

 「屋内に敵が籠もっている? なら壁ごとぶっ飛ばせば良し!」「上の階で他チームが撃ち合っている? じゃあ天井を壊して引きずり下ろせばOK!」という具合に、通常のバトロワゲームだと実現できない奇抜なアイディアも、『The Finals』では勝利の鍵になる可能性を秘めている。それだけにオブジェクト破壊が推奨されるし、関係のなさそうな場面でも意識的に壁やガラスを撃ちたくなる。そうしてプレイを続けていくうちに、「銃器やガジェットだけでなく、勝つためならありとあらゆる造物をすべて活用すべし」という、本作に込められた独自のコンセプトを感じた次第だ。

 対戦型チームFPS『The Finals』は11月5日までオープンβテストを実施中。興味のある方は、期間内に一度プレイしておくことを強く勧める。

(文=龍田優貴)

『The Finals』が放つ唯一無二の魅力