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こんにちは。
テラ・ローザのボーカル 赤尾和重です。
この度、CD販売のみだった作品が配信されることになりました。
ネット上でもた〜〜くさんお聴きいただけることを願って、アルバム毎のちょっとした制作エピソードと、赤尾流プレイリストをお届けします♡ エンジョイ・プリ〜〜ず!
THE ENDLESS BASIS



1989年CD化されたテラ・ローザ最初のフル・アルバム。1987年インディーでリリースしたアナログ盤を、キングレコードからのデビュー作『HONESTY』と一緒に、キング盤としてCDの形で発売することになり、赤尾自身の希望でパワーver.にしたくて、メインのボーカル・トラックを再録。強気な仕上がりになりました。アナログ盤の方は、配信はされていないのですが『Terra Rosa 30th Anniversary Premium BOX』で聴けますよ♪ アナログ盤ボーカルは初々しくて非常に新鮮です。どちらも聴いて欲しいな。

このアルバムは三宅曲「Petrouchka」 、YOU曲「The Endless Basis」、岡垣曲「もの言わぬ顔」など、テラ・ローザのスタンダード・ナンバーといえる名曲が沢山入っています。演奏も怖いもの無しに突き進んでいてゾクッとする勢いがあるのは、私たちみんな20代(三宅君は10代)で、余計なこと考えていなかったからかな? 全ての工程に慣れがなく、アルバム創りに24時間全力投球していました。これは最初のアルバムでしか成し得ないことですよね。

サウンド面以外でも、ジャケット・デザインや写真のコラージュ等、黙々と夜通しやりました。それがまた楽しかったの! ジャケット・デザインといえば、アナログ盤とキング盤(CD)は少し違って、キング盤には円の中に『寺廊座之印』の押印があります。元ジャケのコピーに朱色の絵の具ハンコを押した様子を描いて、キングレコードに「このハンコを作って、このデザインにしてください!」と郵送(ネットのない時代です)。一目でアナログ盤との違いがわかるでしょ? そのハンコはその後バンドで頂戴して、ロード・マネージャーがファンクラブ会員証に押すなどして使っていたので、印影をお持ちの方おられるかも?! 顔が並んでいるオブジェは小林かずの作品。Endlessな生命力を感じる顔たちにビビッと来て、このアルバムにピッタリだと感じたので、お願いして使わせていただきました。

録りは大阪のスタジオJAM。今回配信されるキング盤ミックスは音羽のキングレコード『第二スタヂオ(当時 入口のプレートがこの表記だった)』。録り、ミックス共にマジックバス・レコーディングスタジオの沢村Hikarin光。リマスタリングはキングレコードの吉越晋治。素晴らしい仕上がりです。お楽しみください!

THE ENDLESS BASIS” Musicians
赤尾和重(Vocals)
岡垣正志(Keyboards)
山口宏二(E.Bass
三宅庸介(Stratocaster
堀江睦男(Drums

THE ENDLESS BASIS』:URL
HONESTY



1989年キングレコードからリリースした最初のアルバムです。前作『THE ENDLESS BASIS』と違って、「ライブで演っていない曲を一から作っていかなければならない」というところが気合の源になっていました。それまでサポートだったドラムスも、三宅庸介が板倉淳という強力な味方を呼んでくれたので、体制は整っていたはずです。しかし、今回は前作以上にテラ・ローザ色(所謂 様式美)を盛り込んだアルバムにしたい欲求もあり、それがバンド内では空回りしていました。音楽市場もハードロックで勝負するのは難しい時期でしたし、迷いはないけど、悩んでる・・・という状況でしょうか。ついに曲作りで三宅と赤尾、岡垣は意見がぶつかってしまい、決別することになります。皆で傷つきながらも自身の理想を貫いたことは今でも誇りです。その後、現在に至るまで、私にとってギタリスト三宅君はとても信頼できる存在ですが、このことがあったからかも知れません。

危うくバンドはアルバム作り頓挫の危機に陥るところでしたが、当時エルサレムなどで弾いていた鈴木広美の加入で難を逃れます。すぐに彼は曲のアイデアとフライング Vを持ってスタジオに入り、私たちは、同じく新加入の板倉も交えてリハーサルを重ねました。こういう時に「さすがはベーシスト!」っていう仕事をしてくれる山口宏二! 彼は新しいメンバーのちょっとぎこちない状態を、いいチカラ加減でケアしてくれるんです。私や岡垣側ではなく、新メンバー側に立ってバンドを芯から支えてくれました。プレイもルックスもカッコイイ彼でしたが、人間的にも素敵な人でした。

さて、キングレコードでの第一弾として、意識するべきことは沢山あったんでしょうけど、私達は不器用全開で、ヘヴィー・ロックな音楽を目指して作りました。板倉のダイナミックドラミングもビシバシ暴れていますしね。そんな中、すこ〜〜しだけキャッチーになる算段があったのですが・・・出来上がりはマニアックでしょうか。 ラストの 「Evelyn」 は11分34秒ですものね!

録りは大阪のスタジオJAM。ミキシングは音羽のキングレコード『第二スタヂオ』。録り、ミックス共にマジックバス・レコーディングスタジオ 沢村光。リマスタリングはキングレコード 吉越晋治。間違いなくドラマチックな仕上がりです。是非お聴きください♡

HONESTYMusicians
赤尾和重(Vocals)
岡垣正志(Keyboards)
山口宏二(E.Bass
鈴木広美(E.Guitar
板倉 淳(Drums

HONESTY:https://lnk.to/TerraRosa_HONESTY
刹那の甘露-SASE-



1990年リリース。とにかくこのアルバムの録音中は、新加入のギタリスト今井芳継をはじめ、全員が悪戦苦闘で大変だったんですが、ボーカル録りの苦労話をひとつご紹介します。

私は、デモテープ録音時から始まる全歌録りを、地元大阪の沢村ヒカリンさんにお願いしていました。しかし、このアルバムは東京のキングのスタジオで、しかも初めてお会いする坂本充弘さんに録っていただくことになっていました。女性ボーカルからバンドまで、多数の録音、ミックス経験をお持ちの坂本さん。私の大雑把で行き当たりばったりなグニャグニャした歌い方や、訓練されていない滑舌が最悪に『アンビリバボー』だったようです。中盤、「Carry It Out」の歌録りで「どんなメロディーなのかわかんないんだよね!」と、とうとう叱られてしまいました。録音中叱られるのは29歳で初体験の私。それまでは長い付き合いのヒカリンさんにうま〜くムードを作っていただいた中で、調子よく機嫌よく歌っていたのですが、坂本さんはそんな私の経緯もよくご存知だったようで、ズバッと一刀両断!

元々「Carry It Out」 はギターリフの上に歌が乗っていて、メロディーらしきものはありません。ペンタトニック・スケール上でリズミカルに歌詞を乗せて叫ぶという唱法です。尚更、いい加減な音の取り方が許せなかったのでしょう。「どんなメロディーかわかるようにピアノで弾いてみてよ」と坂本さん。ややふくれっ面で、ブースにあったグランドピアノを人差し指1本で弾く私。だって使う音はせいぜい4つか5つですからね。でもこの時、私は初めて『ピッチ(音の高さ)』への心配りに目覚め、以後、音程も意識しなきゃなと思うようになりましたよ。猿人が二足歩行を覚えたようなもんでしょうか。坂本さんにはこの場をお借りして御礼申し上げます。いつも私の歌録りにご苦労されていたであろうヒカリンさんにも改めて感謝の気持ちが溢れるのです。

とにかく、そんな状況下で赤尾が一生懸命歌っている「Carry It Out」 聴いてみてね♪ 当時、全日本女子プロレス時代の堀田祐美子選手が入場時に使ってくださった曲でもあります☆

そして、このアルバムは海外のメタル・ファンにも聴いていただきたくて、9曲中7曲が英詞なんですよ。ヘンテコ英語でしょうけどね。

録りはキングレコード第一と第二スタヂオ。ミキシングはメルダック・スタジオにて。録り、ミックス共に坂本充弘。リマスタリングはキングレコード 吉越晋治。メタリックなギターサウンドと、ミックスの静・動バランスが美しい、テラ・ローザ・スタンダードをちょっと飛び出したアルバムです♡

“SASE” Musicians
赤尾和重(Vocals)
岡垣正志(Keyboards)
山口宏二(E.Bass
今井芳継(E.Guitar
板倉 淳(Drums

『刹那の甘露-SASE-』:https://lnk.to/TerraRosa_SASE
LIVE・・・FINAL CLASS DAY



1991年12月21日 東京目黒鹿鳴館と、1992年1月17日 大阪梅田バナナ・ホールで行なったテラ・ローザの解散公演を記録した10曲入りアルバムです。解散への軌道は、私の「違うロックもやりたい」という気持ちから始まったことで、それはテラ・ローザではどうしてもできないことでした。今思うと身勝手だったかも知れませんが、、、まぁ、30年以上経ったので正直に言いますと、結成から10年間、食えなかったんです。30歳。ずっとバイトしてました。どうせ食えないなら音楽的にもっと挑戦したかった。とはいえ、ご安心ください!テラ・ローザを愛していましたよ。様々な時代があり、作品に命を吹き込み、夢中で駆け抜けた10年間です。だから、このライブ盤は世界一熱い演奏が詰まったアルバムです。私だけではありません。全員がそれぞれのドロドロを噴出して沸点を超え、1曲目から既に臨界状態です。お聴きいただくしかありません。

P.A.オペレーションには、テラ・ローザ最後のライブということで、それまでお世話になった縁深い方々が担当してくださいました。東京目黒鹿鳴館では現代表取締役の山口ぺぺ氏。そしてテラ・ローザのツアーに何度も同行してくれたマジックバス 沢村Hikarin光氏。大阪バナナホールでは沢村氏と、こちらもツアーに何度も同行してくれたACTサウンド奥澤一宏氏が最後のライブ音響を彩ってくれました。

そうそう、これを書いておきたい!!

目黒鹿鳴館でのライブ・レコーディングのために、当日キングレコードがとても大きなミキシング・コンソールを地下2階まで下ろして、現在の鹿鳴館事務所前のスペース(当時はリハスタだったかな?)に入れて、でっかいマルチトラックのレコーダーも設置して、それはそれは苦労して録ってくださったんです。あの鹿鳴館の階段をご存知の方は想像してみてくださいね。トイレのある地下2階まで、48チャンネル以上(だったはず)もあるコンソールを持って降りるんですよ。キングレコードのエンジニア 辻裕行さんを頭にチームを組んで、充電式バッテリーで駆動するキャリー・ロボットのようなのを使って、ゆっくり、慎重に降ろされていたのを鮮明に覚えています!今はライブ配信やレコーディングラップトップでできる時代ですけど、1991年はそうはいかなかったんです。だからライブ盤を制作してもらえるって凄いことだったんですよ。いくら解散するとは言ってもね。当時はそんなこと感じる余裕はなかったのが悔やまれます。テラ・ローザを最初から担当された、このアルバムのディレクターでもある新井健司氏に感謝の気持ちをお伝えしたかったな。

東京目黒鹿鳴館でのライブ・レコーディングと全曲のミキシングはキングレコード辻裕行。リマスタリングは同じくキングレコード吉越晋治。大阪バナナホールでのライブ・レコーディングKein’s関耕治。

“LIVE・・・FINAL CLASS DAY” Musicians
赤尾和重(Vocals)
岡垣正志(Keyboards)
山口宏二(E.Bass
今井芳継(E.Guitar
板倉 淳(Drums

『LIVE・・・FINAL CLASS DAY』:https://lnk.to/TerraRosa_Live…FCD
TERRA ROSA LIVE FROM CODA



2016年11月の東名阪ツアーを、2枚組CDという形で2017年7月にリリースしたテラ・ローザの一番新しいアルバムです。先の『LIVE・・・FINAL CLASS DAY』でバンドが解散してから24年が経ち、私たちもすっかり『大人』になった時点のライブ…とはいえ、2つのライブを聴き比べても私と岡垣の音は変わっていないですね。デジタル時代になっても、心根は昔ながらです。そして、ギターは足立YOU。曲はデモテープ時代のテラ・ローザ・ナンバー。当時をご存知のファンの皆様にとっては、1985年頃にタイムスリップするためのヤバいガジェットになる作品だと思います。このライブが企画された経緯は、アルバム発売時に幾つかのロック専門誌インタビューで語っていますのでそちらをご覧くださいね。他にもエピソードは沢山あるしここでご紹介したいのですが、YOUのいない今、悲し過ぎてね。2020年6月に彼が亡くなってから、悔しさと怒りの溶け込んだ寂しさというのかな? 日を追う毎にその気持ちは強くなります。

このツアーにはアルバムに収録されていない番外編的なライブがありました。演者は私、岡垣、YOUのトリオ。大阪公演の前日11/25 阿波座BIG JACKで『Terra Rosa Primal Eve〜嵐の前の夜会』と銘打った、9割が緩めのトークやレア・グッズ販売、1割が演奏という内容でした。が、この1割の演奏時間がとても新鮮で楽しかったんですよ。編成は岡垣のシンセ、YOUのE.ギター、私の歌と下手くそなタンバリンとカシシというシンプルなもので、もちろんこの3人でこんなの初です。演奏したのは「Friday’s Free Fair」「Beware」「Battle Fever」 の3曲のみ! ほんの余興で二度とないつもりでしたが、始まってみると意外に楽しくて、また演りたいなと密かに思ったものです。YOUが居たらなぁ。

さて、『TERRA ROSA LIVE FROM CODA』 は、2016年11月3日東京新宿Zirco、23日愛知名古屋Holiday、26日大阪梅田Zeelaの全ライブを記録した中から、セットリスト全17曲のベストテイクを、岡垣、YOU、私の3人で選りすぐったアルバムです。テラ・ローザの起源となる時期の曲に加えて、2016年の新曲「To Coda」も入っています。ベースのMASAKI、ドラムス佐藤潤一のソロもあり、新風を吹き込んでくれた彼らの存在はテラ・ローザにとって超越したスパイスというのかな? 私はお二人と演奏するのは初めてでしたが、リハーサル初日から抜群にエキサイティングだったのを覚えています。

ミキシングはバズーカ・スタジオにて、エンジニアは内藤Teru輝和。マスタリングはキングレコード関口台スタジオにて、エンジニアは辻裕行(辻さんは、全キング盤でスタヂオ内に居てくださった方で1988年からの長いお付き合い。テラ・ローザの本性を恥ずかしいくらいによくご存知なのです)。

“LIVE FROM CODAMusicians
赤尾和重(Vocals)
岡垣正志(Keyboards)
YOU(E.Guitar
MASAKI(E.Bass
佐藤潤一(Drums

TERRA ROSA LIVE FROM CODA:https://lnk.to/TR_LFC




この度、ご尽力いただいたキングレコード 夏目友平氏に感謝申し上げます。
ここまでお読みくださってありがとうございました。
赤尾のプレイリストもぜひお楽しみくださいね。




◾️Profile



赤尾和重(あかお かずえ)
当時はレインボーのボーカリストだったロニー・ジェイムス・ディオに憧れ16歳でボーカルを始める。学生時代は幾つかのロック・バンドを歴任し、1982年にテラ・ローザを結成。シンガー、ソングライターとして本格的にライブ活動を始め、1989年に同バンドでキングレコードよりデビュー。2011年からは自身のソロ・プロジェクト クルベラブリンカもプロデュース。『Terra Rosa 30th Anniversary Premium BOX』好評発売中
Photo:Shigeyuki Ushizawa

◾️テラ・ローザ配信記念プレイリスト公開中

赤尾のルーツ・ミュージックとその結果のテラ・ローザ/悪戯1曲入り
https://lnk.to/KazueAkao_PL1
TERRA ROSA赤尾和重が語る貴重な制作秘話の数々、赤尾流プレイリストも順次公開