内閣府発表の『令和5年版 高齢社会白書』、厚生労働省発表の『2022年 国民生活基礎調査の概況』などの調査結果とともに、世界で最も高齢化率の高い日本における「介護の実情」についてみていきます。

準備不足で直面すると介護者は悲惨な目に…

令和5年版 高齢社会白書』によると、日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳。前年に比べて男性は0.09年、女性は0.14年下回りましたが、健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳と年々伸びています。

今後平均寿命は男女とも延びて、令和52年には男性85.89年、女性91.94年となることが見込まれています。

医療のレベルの高さや食習慣のバランスのよさなどを理由として、長い間世界一位の長寿国家であり続けている日本ではありますが、平均寿命から健康寿命を引いた期間は、介護を必要として生活していくことになります。日本で生きる人々の多くが、いつか介護問題に直面することになるでしょう。

現在の介護保険制度では、40歳で介護保険への加入が義務付けられていることにより、要介護・支援状態にある「65歳以上の高齢者」と「40歳から64歳までの特定疾病の患者」が市区町村から要介護・要支援状態の認定を受けた場合、介護保険サービスを利用することが可能です。

要介護・要支援に該当しなくとも、度合いによっては介護予防事業を受けられることもあります。

介護保険サービスを利用した場合の自己負担額は、サービス料の原則1割(一定以上所得者の場合は2割又は3割)です。

『在宅介護のお金と負担 2016年調査(家計経済研究所)』によると、在宅介護で1ヵ月あたりにかかる費用は、全体平均で5.0万円、要介護5認定だと7.5万円。しかし全体の中央値は3.3万円であるので、介護費用の平均額は、高額な介護サービスを使う世帯から大きな影響を受けていることがわかります。

介護保険には限度額がありますが、収入や資産が少ない家庭を対象として負担限度額認定も設置されています。骨折などで歩くのが困難になったら、治療費だけでなく、車いすなど備品の手配・家のリフォームも検討されますし、老人ホームに入る場合は入居代や諸経費が当然発生するため、活用できる制度はぜひ活用したいところです。

誰が介護するのか…要介護5「ほとんど終日」は「半数超」

介護のシーンではお金以上に「時間」も深刻な問題となります。厚生労働省の『2022年 国民生活基礎調査の概況』によると、介護にかける時間は「ほとんど終日」が19.0%、「半日程度」が11.1%、「2~3時間程度」が10.9%。また、要介護4では41.2%、要介護5では63.1%が「ほとんど終日」と回答しています。

終日介護に追われるような生活だと、介護者は趣味・娯楽を諦めることはもちろん、仕事を続けることすら難しくなってしまいます。

そこで発生するのが「誰が介護するのか」という問題です。

同調査によると、主な介護者は、「同居」が一番多く45.9%。内訳は「配偶者」22.9%、「子」16.2%、「子の配偶者」5.4%、「父母」0.1%となっています。次いで「事業者」15.7%、「別居の家族等」11.8%です。

平均寿命も健康寿命も2001年から緩やかな上昇傾向にある日本社会。高齢化率は29.0%と、世界でも高水準の高齢化率を長い間キープしています。

健康寿命と平均寿命の差は2004年以降、年々少しずつ短くなっているとはいえ、いつまでも健康でいられるとは限りません。

今後、平均寿命と健康寿命の差が縮まっていったとしても、「人生100年時代」である以上、介護問題の深刻化は避けられないでしょう。年金を含め老後資金への心配も増すなか、国民全体に老後への不安は募っています。

介護する側、される側。双方の負担を減らす仕組みづくりが求められています。

(※写真はイメージです/PIXTA)