文=酒井政人

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王者・駒大は2区佐藤、7区鈴木

 11月5日に開催される全日本大学駅伝の「メンバーエントリー」が11月3日に発表された(選手と補員の交代は最大3人)。当日変更を予想しながら、今大会の戦いをシミュレーションしていきたい。

 まずは4連覇を目指す駒大だ。10月の出雲駅伝を完勝して、2年連続の「駅伝3冠」に向けて絶好のスタートを切った。以下がメンバーエントリーになる。

1区9.5㎞ 赤津勇進(4年)
2区11.1㎞ 佐藤圭汰(2年)
3区11.9㎞ 小山翔也(1年)
4区11.8㎞ 赤星雄斗(4年)
5区12.4㎞ 伊藤蒼唯(2年)
6区12.8㎞ 花尾恭輔(4年)
7区17.6㎞ 鈴木芽吹(4年)
8区19.7㎞ 山川拓馬(2年)
補員 白鳥哲汰(4年)、安原太陽(4年)、篠原倖太朗(3年)、庭瀬俊輝(2年)、安原海晴(1年)

 順当なら篠原倖太朗(3年)が1区もしくは3区に入り、安原太陽(4年)の起用も濃厚。前回のように2区佐藤圭汰(2年)でライバル校を突き放して、レースを優位に進めることができるだろう。

 そして7区に主将・鈴木芽吹(4年)が登録された。夏合宿で本人に取材したときには、「個人的には7区が希望です。昨年の田澤(廉/現・トヨタ自動車)さんのように自分のところで勝負を決めたい」と話していた。ライバル校の区間配置を考えても、駒大の4連覇は「7区鈴木」に懸かっている。

 

中大は〝先制攻撃〟で初優勝を狙う

 駒大のライバルになるのが中大だ。出雲駅伝は1区で大きく出遅れたが、今回は超攻撃的なオーダーを組んできた。5000mで13分20秒台のタイムを持つ3人を1~3区に並べてきたのだ。なお7区と8区は昨年と同じ配置になる。

 オーダーは1区吉居駿恭(2年)、2区中野翔太(4年)、3区吉居大和(4年)、4区柴田大地(1年)、5区本間颯(1年)、6区吉中祐太(2年)、 7区湯浅仁(4年)、 8区阿部陽樹(3年)。 浦田優斗(3年)、山平怜生(3年)、 溜池一太(2年)らが補員となる。

 絶対エース・吉居大和は出雲を欠場したが、箱根駅伝を2年連続で快走(2年時は1区で区間新、3年時は2区で区間賞)するなど圧倒的な爆発力を誇る。4区以降の戦力は駒大が優勢なだけに、中大は3区終了時で駒大から〝大量リード〟を奪っておきたい。

 駒大との戦いを想定すると、吉居兄弟が出雲1区で区間賞を獲得した篠原とマッチアップする可能性が高い。2区は駒大・佐藤のスピードが勝るだけに、篠原が入る区間の〝対決〟が優勝争いの最初の山場になりそうだ。

 前回3位の青学大は出雲2区で駒大・佐藤と区間賞をわけあった黒田朝日(2年)を2区に配置した。5000mで13分30秒台のスピードを持つ選手が多いだけに、1区で好スタートを切って、上位でレースを展開していきたい。

 前回4位の順大は2区にエース三浦龍司(4年)を入れて、5000mで13分22秒99の高校記録を持つ吉岡大翔(1年)を補員登録した。吉岡を1区に投入することになれば、世界で戦う三浦がトップをひた走るシーンが見られるかもしれない。

 前回5位の早大は1区間瀬田純平(2年)、 2区山口智規(2年)、3区石塚陽士(3年)、4区工藤慎作(1年)、 5区菖蒲敦司(4年)という布陣。前半区間で波に乗って、目標の「3位以内」を目指していく。

 14年ぶりに出場する東農大は2区にスーパールーキー前田和摩を入れてきた。箱根駅伝予選会の疲労が心配されるが、学生駅伝でどんなデビューを飾るのか。

 国士大は2区にピーター・カマウ(3年)を配置。東京国際大はアモス・ベッド(1年)を補員登録しており、何区に起用してくるのか。

 中盤区間に強烈なアクセントをつけてきたのが出雲駅伝で3位に躍進した城西大だ。3区に出雲3区で区間賞を獲得したヴィクター・キムタイ(2年)、4区に箱根駅伝で2区を務めた斎藤将也(2年)。そして最終8区にユニバーシティゲームズ10000銅メダルの山本唯翔(4年)を配置した。2区終了時で上位校に大きく引き離されなければ、出雲の〝再現〟が十分に期待できる。

〝後半勝負〟の國學院大と創価大

 前回2位の國學院大は7区と8区を平林清澄(3年)と伊地知賢造(4年)が3年連続で担うことになりそうだ。平林は前回区間4位ながら、上位3人が卒業。今回は駒大・鈴木らと区間賞を争うことになるだろう。伊地知は前回が区間2位、前々回が区間賞と抜群の安定感を誇る。

 前回2区で10人抜きを演じた山本歩夢(3年)と同5区区間賞の青木瑠郁(2年)は補員登録。終盤ロング区間のキャリアはずば抜けているだけに、6区終了時でトップと30~40秒差なら初優勝に近づくことができるだろう。

 出雲2位の創価大は今回も面白い存在だ。出雲4区区間賞の山森龍暁(4年)を2区、日本インカレ10000m9位(日本人2番)の小暮栄輝(3年)を5区、スティーブン・ムチーニ(1年)を7区に登録。出雲5区区間賞の吉田響(3年)、日本インカレ5000m7位の織橋巧(1年)、5000mで13分34秒82の自己ベストを持つ小池莉希(1年)が補員に控えている。

 バランス型のオーダーを組んでおり、出雲のように吉田響らが後半のつなぎ区間で区間賞を奪うかたちになると目標の「3位以内」が見えてくる。

 出雲8位の東洋大はエース松山和希(4年)を4区に配置。箱根駅伝予選会を戦った東海大は全日本で2度の区間賞を獲得しているエース石原翔太郎(4年)を補員登録している。

「大学日本一」を決める戦いはテレビ朝日系列で生中継され、11月5日(日)の8時05分にスタートする。当日は気温が高くなりそうで、終盤区間の〝大逆転〟があるかもしれない。いずれにしてもドラマチックな戦いが期待できそうだ。

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