古川雄大が主演を務め、小池修一郎が脚本・歌詞・演出、フランスの人気作曲家ドーヴ・アチアが音楽を担当する新作ミュージカルLUPINカリオストロ伯爵夫人の秘密~』。豪華な顔ぶれが大注目を集める本作で、カリオストロ伯爵夫人をWキャストで演じるのが、元宝塚歌劇団トップスターの柚希礼音と真風涼帆だ。出演発表時にSNSで大きな反響を呼んだ2人に話を聞くと、星組で切磋琢磨した2人ならではの熱い絆が感じられるインタビューとなった。

【写真】柚希礼音&真風涼帆、颯爽とした立ち姿に目が奪われる!

柚希礼音、小池修一郎と9年ぶりのタッグに感じた変化

 本作はフランス小説家モーリス・ルブランによる「怪盗ルパン」シリーズを下敷きに、自由な発想で、各キャラクターが入り乱れる冒険活劇ロマン。アルセーヌ・ルパンと魅惑的な美女カリオストロ伯爵夫人、令嬢クラリスシャーロック・ホームズをはじめとした著名なキャラクター達が登場し、財宝を巡ってさまざまな駆け引きを繰り広げる。

 ドーヴ・アチアによる心躍るオリジナルミュージカルナンバーはもちろん、ダンス、アクション、ルパンカリオストロ伯爵夫人による男女を入替えた対決などエンターテインメント性をふんだんに盛り込み、観客を19世紀末パリの舞踏会へと誘う。

――宝塚時代に新人公演で真風さんが柚希さんのお役を演じることはありましたが、今回はWキャストとしてカリオストロ伯爵夫人を演じられます。最初にお聞きになった時のお気持ちはいかがでしたか?

柚希:「ほんまに~!?」と驚きました(笑)。

真風:(笑)。本当にびっくりしました!

柚希:私は全然タイプが違う方とWキャストをすることが多かったんです。コロナ禍はお互いの芝居の稽古を見ないことも多かったんですけれど、今はいつも一緒にお稽古をしていて、1人ずつやって注意されたことを、「なるほど」とそれぞれ思いながら順番にお稽古していく。星組時代、同じ方向を向いて学んできたゆりかちゃん(真風)と一緒だと、あえて何かを変えたりしなくても、カリオストロ伯爵夫人について2人で研究や確認をたくさんしながら、役を作っていけているなという感じがしています。

真風:宝塚時代にやらせていただいたWキャストは、人数分役があったので、相手がその役をやっている時には自分は違う役を演じなくてはいけなくて。ちえさん(柚希)が演じてらっしゃるときに前で見てお稽古に臨むというのは初体験なので、刺激的です。常にちえさんがいろいろやってらっしゃるのを拝見できるのは安心感もありますし、たくさんのことを学ばせていただいています。

――柚希さんは小池先生とは、2014年の『眠らない男・ナポレオン —愛と栄光の涯(はて)に—』以来の顔合わせとなります。久々に演出を受けられていかがですか?

柚希:小池先生とはお久しぶりで、すごく面白いです。久しぶりにご一緒して、セリフの言い方の音程や、お芝居の付け方がより繊細に細かくなられたように感じました。

あるとき、小池先生が「ポン!と登場してほしい」とおっしゃって。「いや、それは無理でしょ!」とみんなが言うのですが、「いや無理じゃない!」と。絶対にポン!と登場させようとあの手この手で、なんとか叶えようとされるので、そこはお変わりないなと(笑)。でも、それを実現できた時に、やっぱりほかの演出家の方々とは違う、小池先生の面白さがすごくあるので、いつまでもワクワクとする演出をされるなと思いました。

――真風さんは、退団公演『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』に続いての小池先生作品です。

柚希:(真風は)男性がいる稽古場が初めてだから、キョロキョロしちゃっていたよね(笑)。

真風:男性キャストの皆さんの声量に驚きました(笑)。勝矢さんとかがバーッとお話されると、これまでたくさんの稽古場を経験されている小池先生も「うわっ!」と体をバウンドさせて大喜びされていたのが印象的でした(笑)。

柚希:アンサンブルの皆さんも声が響いてすごいよね。後ろからおじいちゃんの声が聞こえてきたので振り返ってみたら、若い男性が歌っていたり。本当に皆さん芸達者で刺激的なお稽古場です。

◆女性セリフにすんなりなじむ真風に驚き


――ストーリーや演じられるカリオストロ伯爵夫人の印象はいかがでしょう。

真風:いろんな世界がいっぱい入っているからワクワクしますよね。ホームズも出てくるので、イギリスファンの方はきっとテンション上がると思います。

私は在団中からその時代にご縁があって、好きな時代背景、好きな世界観なので、イメージもすごく湧きますし楽しいです。冒険活劇感というか、キャラクターの快活な生き様といいますか、オリジナルな話なので、すべてが史実に完璧に基づいているわけではないんですけど、分かる人には分かる、通なキャラクターの持ち味なども楽しんでいただけるかと。

逆に、原作とは違うオリジナリティーも多く感じていただけるかもしれません。全体的に楽しい作品になるのかなと感じているので、そのワクワク感や高揚感がお客様にも伝わっていくような作品になるのではないかと思います。

柚希:ワクワクするよね。いろいろな要素が入っているんですけれど、やはり小池先生のオリジナルという感じで。私たちも「カリオストロ伯爵夫人ってどんな人だろう?」と思って、いろいろ読んだりしましたが、元々のキャラクターを使って小池先生がまた新たに作られた感じがあるので、この作品の中の出演者たちというオリジナルな感じがあり、それぞれがより魅力的になっているんです。

カリオストロ伯爵夫人は、ミステリアスで、目的のために女性になったり男性になったりするんですが、最後は小池先生渾身の長台詞があって、私たちもあっと驚きました。

伯爵夫人が男の人に扮するシーンもあって、自分としては男役を何年か離れていますが、ついつい男役を演じてしまいそうになるので、そこがとても難しいです。

真風:宝塚では男性を演じますけど、今回は男性に扮した女性を演じるので、まったく別物ですもんね。

私は、カリオストロ伯爵夫人の妖艶さはもちろんなんですけど、もうちょっとアグレッシブな部分といいますか、目的のために自分自身も躍動していく感覚なども作り込んでいけたらいいなと思っています。

柚希:でも、退団後初めての作品だけど、すんなり馴染んでいるよね! 私は「~だわ」みたいな語尾が気になっちゃって、退団して1年ちょっと経った『お気に召すまま』あたりでもまだ、“どうする!?”って感じだったのに。ゆりかちゃんはもうすっかり、そこは大丈夫な感じだよね。(宝塚時代『ノバ・ボサ・ノバ』で)メール夫人やっていたからかな?(笑)

真風:そうかもしれません。

◆共演者には古川雄大、真彩希帆ら魅力的な顔ぶれがずらり


――共演者の皆さんの印象はいかがですか?

真風:ルパン役の古川さんは、本当に優しくていい方です。

柚希:ね~! 素直でピュアなんだろうなという感じで。私たちの机の前に「この踊りはどうやって踊ったらカッコよくなりますか?」と聞きに来てくださったり。

真風:「手の角度はこうですか?」って聞いてくださるんですよね。お人柄の良さがひしひしと伝わってきます。

柚希:今回はいろんな役をされるんですけど、どの役になられてもかわいかったりカッコよかったり。舞台って本当に人が出るんだなと思いました。

真風:真彩(希帆)さんは…。

柚希:ディズニーのプリンセスみたい! 

真風:星組時代も一緒でしたが、下級生だったのでそんなに絡みがなかったんですけど、やっぱりかわいいですよね。

柚希:サイズ感もね~。本当にかわいい。

――そんな心強いカンパニーの皆さんとは帝国劇場公演の後は、名古屋、大阪、福岡、長野と全国を回られます。

柚希:長野まで行きたかった(笑)。(※編集部注:長野公演は真風のシングルキャストで上演)

真風:名古屋や福岡で何を食べるか考えておかないとですね。

柚希:宝塚時代に全国ツアーで回っていたときは、胃腸炎になるくらいでしたから(笑)。

真風:そんなに!(爆笑)

◆ディナーショーで8年ぶりに共演 真風のサポートに感謝


――お二人は、今年8月に柚希さんのディナーショーで8年ぶりに共演されました。

真風:楽しかったです! 

柚希:本当に支えてもらいました。

――“微力ながら”というキラーワードも生まれまして(笑)。(※編集部注:ディナーショーで共演した紅ゆずるがトークで“微力ながら”というフレーズを多用し、柚希からツッコミを受けた)

柚希&真風:爆笑

柚希:ゆりかちゃんは宝塚時代から、新人公演で私の役をすることが多かったので、私が舞台に出ている時は常に袖から見ているスタイルだったんです。今回のディナーショーも、しばらく自分の出番はこないのに、開演とともに常に袖から全部見てくれて、私が袖に入ったら早変わりも手伝ってくれて! 本当にめちゃくちゃ支えてくれて、ぐったりしたらしいです(笑)。

真風:本当に楽しかったです。やっぱりちえさんが培ってこられたすべてが詰まったディナーショーだったと思うので、“TREASURE”(柚希ファン)の皆様との絆がまぶしすぎて。記念すべき瞬間に立ち会わせてもらえて最高でした。たっぷりの愛を感じて、私もたっぷりの愛を浴びました。

柚希:トップスターさんを辞めた直後にあんなに尽くしてくれて。

真風:そうですね。でもやっぱりあの頃とは違うかなという気持ちもありました。あの頃の自分とはまた違うからできたことっていうか、あの時には分からないこともたくさんあったんだなって。

自分がトップを経験したからこそ分かることがたくさんあって、前よりもちえさんの気持ちが、“こうなのかな”“ああなのかな”と思いましたし。あの時にもっと力があればと、ちえさんに対してもですし、まぁ様(朝夏まなと)にもいつも思うんですけど、私の力が足りず、ご迷惑をたくさんおかけしてきて…。

柚希:かけてない!かけてない!

真風:それの恩返しが少しでもできたらいいなと思って。

柚希:すごく恩返ししてもらえちゃった!

真風:幸せな時間を過ごしながら全力の恩返しを…

柚希&真風:微力ながら(笑)。

真風:とにかく楽しくって、卒業されて、ちえさんが女優さんとして経験されてきたうえで、もう1回宝塚の楽曲を歌ってくださるっていうのがエモくて! ヒューヒュー言って楽しんじゃいました。

――久しぶりに共演した真風さんの姿は柚希さんの目にはどう映りましたか?

柚希:星組に入った当時、見た目はスターさんみたいなオーラがあるのに、なかなか思うようにできなくて苦しんでいる下級生時代もあって。そこからこんな立派になって…と走馬灯でした。

――真風さんは、ご自身の中に“柚希礼音イズム”を感じられる部分はありますか?

真風:私は、ちえさんになりたいとずっと星組時代にストーカーさせていただいていたので(笑)。新人公演時代にノウハウといいますか、踊り方ひとつ歌い方ひとつ、たくさん教えていただいていたので…。男役が10年やると男役をやろうと意識しないみたいな感じで、柚希さんみたいに、と思っているわけじゃないんですけど、根本的にすべてを教えていただいたのがちえさんなので、見てくださってる方も「あら?」と思われるところは多いかなと思います。

――最後に、本作への意気込みをお聞かせください。

柚希:小池先生の作品への出演は宝塚退団後初めてで、初の帝国劇場出演です。本当に小池先生は、自分的にも節目の時に現れてくださって、自分を一歩成長させてくださる稽古をしてくださるので、今回もなにか新しい自分がまた生まれて、もう一歩踏み出すことができればいいなと思います。みんなと一丸になってワクワクする作品をお届けしたいと思います。

真風:退団後初のミュージカルの作品で、私も小池先生とは常々節目の時にご一緒する機会が多いので、また今回も沢山の事を学ばせていただけたらと思っております。卒業後分からないことだらけですが、小池先生はもちろんちえさんとこうしてご一緒させていただけることで変な不安がなく、感謝の気持ちでいっぱいです。今回の状況に感謝をしながら、新しいものに挑戦していけたらと思います。そして、皆様に元気になっていただける舞台を作れるよう精進します。

(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 ミュージカル・ピカレスク『LUPINカリオストロ伯爵夫人の秘密~』は、東京・帝国劇場にて11月9日~28日、名古屋・御園座にて12月7日~20日、大阪・梅田芸術劇場メインホールにて12月29日~2024年1月10日、福岡・博多座にて2024年1月22日~28日、長野・ホクト文化ホール 大ホールにて2024年2月8日~11日上演。

(左から)柚希礼音、真風涼帆  クランクイン! 写真:高野広美