ストーカー規制法違反、リベンジポルノ防止法違反などの罪で起訴されていた20代男性に対して、大阪地裁は2023年9月、懲役2年(求刑同じ)執行猶予3年の判決を下した。

裁判において反省の姿勢を見せた被告人だったが、事件時は被害者に対して「ライターで炙って目を失明させようと思った」など激しい感情を有していたことも明らかになった。裁判の全容を追った。(裁判ライター:普通)

●風俗店で女性スタッフを盗撮

被告人は20代の男性。おしゃれな黒縁メガネをかけ、外見にも気を配った雰囲気を漂わせており、陰湿な犯行とのギャップを感じた。

起訴状によると、被告人は派遣型性風俗店でサービスを受けている間に女性スタッフの胸部を隠し撮りし、その動画をX(事件当時はTwitter)に投稿したとされている。

また被告人は過去、トラブルを起こしたため、被害女性の指名を店舗から拒否されていたが、偽名を用いて派遣依頼。そうと知らない女性が派遣されてきた際、被告人の姿を見て逃げ出した女性を追って、刃体の長さが12cmほどのハサミを所持して150mほど追いかけたとして、つきまとい行為などに問われた。

被告人はいずれの事実についても認めている。

●自殺を考えるほどの犯行決意

検察官の冒頭陳述と取り調べられた証拠によると、被告人は被害者からサービスを受けていたが、被害者を罵るなどしたため、指名拒否の対応をされていた。しかし、偽名を使って指名を続けるため、店は警察に相談し、被告人に対し近づかないよう注意を行った。

被告人は被害者に対し、好意を抱いており、サービスを受ける中で「喧嘩」もしたが、その度に仲直りもしていると考えていた。しかし、指名拒否をした店側の対応により裏切られたと恨みを募らせていく。直接話をできれば、関係が良好になる可能性があると考える一方で、もし良好にならなければ危害を加える意思もあった。刃物の所持は、その後、自殺をするためであった。

Xの投稿は、女性に制裁するという意図があり、それにより被害者が降伏する可能性はあると考えた上での犯行だった。被害者になりすましてアカウントを複数作成し、投稿を行った。拡散されたことにより、2万アカウント以上の目に触れた可能性がある。

被害者は、被告人がハサミを所持しているのを目にして、必死に近くのコンビニまで走って逃げた。「何かあったらと思うと、たまらなく恐い」、「二度と近づいて欲しくないので、刑務所に入れて欲しい」と処罰感情を供述した。

●父親は「親として情けない。私にも責任がある」

弁護側の証拠として提出されたのは、被告人の反省文だった。中には、被害者へ精神的苦痛を与えたことのお詫びと、自身がすぐ感情的になりやすいことを改めるといった内容が書かれていた。

情状証人として出廷した同居する被告人の父は、まず初めに事件について聞かれると「親として情けない。私にも責任がある」と、力強く証言した。男同士で普段の対話が少なかったことを反省し、これまで以上に深く関われるようにするとした。

しかし、その一方で「今後、道から外れそうと感じたらどうするか」との質問に対しては、「一応注意はするが、成人しているので責任は自分で取るように教育している」とも証言した。

●手錠、ライター、ハサミをあらかじめ用意

弁護人からの被告人質問では、最初の質問で驚きの内容が語られた。

弁護人「被害者を最後に指名した日、手錠、ライター、ハサミを持っていたけど、手錠で繋げて、場合によってライターで目を焼くつもりだったということで間違いないですか?」

被告人「はい」

話せば、なんとかなるのではという思いから、偽名を使ってでも指名を続けた。また供述調書によると「他人が苦しんだり、困ったりしているのを見るのが好き」と述べていたことも認めている。しかし、「弁護人や父親と話をして考えが変わった」として被害者への謝罪と再犯に及ばないとの意欲を供述した。

しかし、検察官からは反省度合いに疑問が残るとして厳しい質問が展開された。

検察官「お父さんとはどんな話をして考えが変わったのですか」
被告人「なにでというか、留置場にいる時間が長かったので」

検察官「どうやって考えを改めたのですか」
被告人「今まで同じ考えなら、こういうことになってしまうと」

検察官「殺そうとまで考えていたのに、過ちをしないとどうして変われたのですか」
被告人「やってることは犯罪なので、それはダメだと」

検察官「元々やっているときは犯罪と思わなかったのですか」
被告人「善悪の区別がついていませんでした」

検察官「調書には『気が変わりやすい』とありましたが、また今の考えが変わることはないですか」
被告人「ないです」

その後、被害者はもちろん、店、家族、知人にも一切近づかないことを誓約した。

被告人による最終陳述において「今回、自分がやったことで、多くの方に迷惑をかけたことを深くお詫びします。申し訳ありませんでした」と陳述した。

女性スタッフに恋愛感情→指名拒否されて逆恨み 「目を失明させようと思った」被告人の激烈な感情