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 日本の山梨大学JAXAの研究者たちは、世界で初めて宇宙でマウスの受精卵を育てることに成功したそうだ。

 国際宇宙ステーション「ISS」で培養されたマウス受精卵は、特に問題なく正常に成長することが確認された。

 研究チームによれば、この研究は「哺乳類が宇宙で成長できる可能性を示す初めてのもの」で、「ISSの完全な微小重力下で哺乳類の初期胚を培養した世界初の実験」であるという。

 それが意味するのは、マウスだけでなく、人類もまた宇宙で健康な赤ちゃんを産めるかもしれないということだ。

【画像】 宇宙の微重力下でマウス受精卵の細胞分裂を確認

 ほとんど重力がない宇宙で哺乳類の受精卵を育てたこの実験は、山梨大学の若山照彦教授と宇宙航空研究開発機構JAXA」などのチームによるものだ。

 その目的は、お腹の中にいる哺乳類の赤ちゃんが、宇宙の「微小重力」でもきちんと成長できるかどうか確かめること。

 実験に使われたマウスの冷凍受精卵は、2021年8月にスペースX社のファルコン9で国際宇宙ステーション「ISS」に送り届けられていた。

 そこで受精卵は特殊な装置で解凍され、ほとんど重力がない状況で4日間培養。それから再び地球へと返され、地上のごく普通の重力で育てられた受精卵と比べられた。

[もっと知りたい!→]人類の生き残りをかけて。妊婦を宇宙に打ち上げ、世界初となる宇宙出産を行うプロジェクト。2024年に打ち上げ予定

 その結果、宇宙で育てられた受精卵は、ごく普通に成長していることが明らかになったのだ。

 細胞分裂して胎盤の細胞と胎児の細胞とに分かれ、着床の準備が整った受精卵を「胚盤胞」という。

 ISSの宇宙飛行士によって培養された受精卵は、無事この段階にまで成長。その細胞の数は正常で、DNAや遺伝子の異常も見られなかったそうだ。

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ISS の微重力下で発育した胚盤胞の質を示すグラフ / image credit: iScience/CC BY-NC-ND 4.0

 『iScience』(2023年10月27日付)に掲載された研究では、この成果について「重力が哺乳類の受精卵の胚盤胞形成と初期分化に大きな影響を与えないことが明らかになった」と説明している。

 ちなみに、胚盤胞にまで成長したのは、受精卵72個のうち17個(23.6%)。これは地上で育てられたものに比べればわずかに生存率が低い。

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人類は宇宙で子供を作ることができるか?

 ただし、宇宙で育てられた胚盤胞が本当に”正常”であるかどうか、完全に確認されたわけではない。

 それを知るためには、「将来的に、ISSの微小重力環境で培養した胚盤胞をマウスに移植し、出産できるかどうかを確認する必要がある」とのこと。

 くわえて、哺乳類が宇宙で子供を産めるかどうかは、重力の違いだけでなく、宇宙線の影響によっても左右されるかもしれない。

 今回の研究では、この点については多少の調査はされたが、受精卵を冷凍し培養する段階で、その影響は特に考慮されなかった。

 もしも人類が本当に月や火星で暮らすようになるのなら、そこで子供を作れるかどうかはとても大切なことだ。

 そしてその可能性について、かなり楽観的な専門家もいる。ある天文学者の予測によれば、史上初となる宇宙生まれの人間の赤ちゃんは2050年に誕生するだろうとのことだ。

References:Mouse embryos grown in space for first time: Japan researchers / 宇宙でマウス受精卵の育成に成功”山梨大学などの研究チーム / written by hiroching / edited by / parumo

 
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人類が宇宙で子供を作れる日が来るかも。マウス実験で受精卵の育成に成功(日本研究)