「指定席」が世界的なスタンダードとなっている旅客機ですが、世界には早いもの勝ちの「自由席」スタイルをとる航空会社が存在しています。今回、その機体に乗ることができました。

搭乗券には座席番号のかわりに「整理番号」

多くの航空会社では、旅客が座る座席の場所はあらかじめ指定されていることが一般的です。ただ世界には”早いもの順”で乗客が好きな席に座る「自由席」スタイルをとる航空会社も存在します。アメリカを拠点とするサウスウエスト航空です。今回、同社の旅客機に乗ることができました。

サウスウエスト航空はいわゆるLCC格安航空会社)に分類される大手航空会社ですが、予約後の便や路線変更、キャンセルにも無料対応しているほか、手荷物も2点まで預けることができるので、もっとも安い運賃でも、日本国内のLCCより手厚いサービスを受けることができます。

先述のとおり同社は「自由席」ですが、良い席に座るためには搭乗口で、できるだけ列の先頭の方に並ばなければなりません。

この順番を決めるのは、搭乗24時間前から開始される「チェックイン」の順番です。そのほかにオプションで追加料金を払い、前列を確保する方法もありますが、オンラインでチェックインをできるだけ早く行い、前列に並ぶのがスタンダードです。

航空券を発行すると座席番号のかわりに、列のどこに並ぶのかという「整理番号」が書かれています。筆者は「B17」、つまり「B」グループの17番目があてがわれました。当然、アルファベットのグループ順は「A」のほうが先に搭乗することができます。

今回乗ったハワイ・マウイ島のカフルイ空港の搭乗口には「11-15」「16-20」といった立て看板が置かれており、自分の整理番号の区画に並び、その順番で搭乗します。

「自由席で行く国内線」どんな感じ?飛行機もレア

今回乗ったサウスウエスト航空機は、ボーイングの「737-8」。ボーイングのベストセラーシリーズ「737」シリーズの最新派生型「737MAX」のひとつで、国内航空会社でもANA(全日空)、JAL日本航空)、スカイマークが導入を決めていますが、まだこれらの航空会社では就航していません。

機内に入ると、ほとんどの席の窓のシェードが閉じられており、まるで国際線の“仮眠時間”のような暗さのなか、青い機内照明が灯っている、国内航空会社ではあまり見ない独特の空間となっています。

自由席ということもあり、早く降りられる前方が比較的混んでいる状況。窓側などの席も多く埋まっています。しかし家族連れの方などは、3列にならぶ座席を1組で確保するケースも見られました。

また、多くの乗客が飛行中もシェードを開けずに過ごしており、どちらかというと「機内からの景色を楽しむ」より、「空飛ぶバスや新幹線」のようなイメージでフライトをとらえているのかもしれません。

シートの横幅は17.8インチ(約45cm)、前後間隔は32インチ(約81cm)とのことで、体感としては1席の広さは国内フルサービスキャリアと同等といったところ。また、新型機らしく首の位置に合わせてヘッドレストを動かせる機構も備わっており、一般的なLCCのイメージよりは、かなり快適性も重視している客室仕様となっています。

ドリンクサービスも実施されます。筆者が搭乗したのはハワイ島間を結ぶ短距離路線でしたが、それでも水が提供されます。機内のしおりによると、176マイル(海里換算で約326km)以上の路線では、ソフトドリンクの提供もあるのだとか。ドリンクラインナップはコーラやオレンジジュース、コーヒーのほか、ドクターペッパーやホットチョコレートといったなんともアメリカらしいものも用意されています。

LCCに分類されるものの、機内サービスはフルサービスなどに近い基準をもつサウスウエスト航空。この「コスパの良さ」も、同社が大きな国内ネットワークを持つ理由でしょう。

また、自由席の採用は、慣れていない人にとっては分かりづらい側面は否定できない一方で、「席が決まっているからギリギリに搭乗口にいけばいい」という顧客心理を抑えることができ、遅延の防止にもつながることもあるなど、効率的なシステムともいうこともできそうです。

サウスウエスト航空機(乗りものニュース編集部撮影)。