一緒に暮らすペットには1日も長く健康でいてほしい。そのためにはどんな食事をとらせ、どんなことを心がけたらいいのか、飼い主は常に考えていることだろう。
温和でやさしく、友好的なゴールデンレトリバーは世界的に人気の高い犬だが、がんの一種である「血管肉腫」になりやすいことがわかっている。
この病気は高齢になるほど発生しやすいのだが、それ以外の要因を調べるため、避妊・去勢手術との関連性を調べた研究が行われた。
『Veterinary and Comparative Oncology』(2023年8月27日付)に掲載された論文によると、オスの去勢に関しては血管肉腫に疾患する確率はかわらなかったそうだが、メスに関しては避妊したメスのほうがリスクが上がることがわかったという。
血管肉腫は血管を構成する細胞が腫瘍化する転移性の高い悪性のがんだ。動物の中では、中高齢の犬が最も発生率が高いとされており、ゴールデンレトリバーや、ジャーマン・シェパードなどに多い病気である。
脾臓、肝臓、心臓、腎臓、皮膚、骨など犬の体のどこにでも発生するが、発生する場所によって症状が大きく異なる。
その予後は悪く、およそ9割の犬が診断から1年以内に死んでしまうことが多い。積極的な治療を行っても、2年以上生きられる犬はごく少数だ。
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ゴールデンレトリバーの避妊・去勢手術と血管肉腫の関連性を調査
以前から、去勢・避妊手術を受けた犬は、血管肉腫が発症しやすくなるのでは?という疑いがあったが、その相関関係は十分に調べられていなかった。
そこで今回、オーストラリア、アメリカ、フランス、オランダの国際研究チームがゴールデンレトリバーを対象とした血管肉腫の発生率と性別、去勢・避妊手術の関係性を、長期間にわたって生涯調査をした。
研究に登録した3044頭のゴールデンレトリバーのうち、やがて233頭(7.65%)が血管肉腫と診断された。
メスの避妊手術にのみ関連性、オスの去勢はリスクは変わらず
ゴールデンレトリバーの平均寿命は10歳から12歳までと言われているが、8歳までなら、性別や去勢・避妊手術の有無問わず、血管肉腫になる可能性は低いことがわかった。
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ところが8歳を過ぎると、避妊手術をしていないメスよりも、手術をしたメスの方が病気になるリスクが高くなることがわかった。
またオスの場合、去勢手術をしていても、していなくても、どちらも血管肉腫のリスクは変わらなかったという。
獣医疫学関連の企業Ausvet社の専門家アリソン・ヒルマン博士は、より高齢な犬のデータを含めることで、犬のがんと去勢・避妊手術との関係をさらに調査する必要あると述べている。
血管肉腫は人間では珍しいが、犬には多く見られる病気だ。
この腫瘍の臨床的・病理学的な特徴は犬も人間もよく似ており、犬の研究からわかったことは、人間にも役立つヒントが得られるという。
研究が進むことでより有効な予防法や治療法が見つかるかもしれない。一日でも長く愛犬が元気でいられるよう、今後の研究に期待したい。
31歳まで生きられる犬だっているんだから、希望はきっとあるはずだ。
References:Descriptive analysis of haemangiosarcoma occurrence in dogs enrolled in the Golden Retriever lifetime study - Hillman - Veterinary and Comparative Oncology - Wiley Online Library / Golden Retriever Lifetime Study data uncovers potential connection between sterilization, hemangiosarcoma / written by hiroching / edited by / parumo
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