■「HIMEHINA」運営がBrave groupと経営統合 業界でも類を見ない“連合国”へ

 VTuber業界にまたひとつ大きな地殻変動が起きた。バーチャルアーティスト「HIMEHINA」(田中ヒメ鈴木ヒナ)を運営する株式会社LaRaが、株式会社Brave groupとの経営統合を発表したのである。「RIOT MUSIC」「ぶいすぽっ!」「Palette Project」などを擁する企業グループに、2018年からの古株が加わる形だ。

【動画】VTuber・ぬくみんが“顔バレ”する瞬間

 2022年に「ぶいすぽっ!」運営元の株式会社バーチャルエンターテイメント、「Palette Project」運営元のMateReal株式会社を経営統合したBrave groupは、その後も拡大を続けている。国内新規プロジェクトの『MUGEN LIVE』『HareVare』『Vlash』や、海外プロジェクト『V4Mirai』など、複数の子会社による多角的な事業展開を進めており、そのあり方は“連合国”のようである。にじさんじホロライブのような“大国”とは、ある意味では対になるような姿だ。

 子会社の株式会社MetaLabで進めているメタバース事業についても、新たにXRアプリやCGコンテンツ制作などを手がける株式会社ディーワンとの経営統合を進めており、さらなる強化を図っているようだ。グループ会社の総数は13社にものぼり、バーチャルな業界において有数のグループ体制が構築されつつある。

 そんな中、「ぶいすぽっ!」は茨城県河内町・金江津小学校スタジオをまるまる貸し切ったイベント『ぶいすぽっ!文化体育祭』を開催した。本当の学校を用いた、文化祭体育祭がモチーフのチャレンジングなイベントである。一方このイベントに対し、イベント開催を妨害する内容の脅迫メールが届いたことが明かされた。イベント中止には至らなかったが、警備を強化するなどの対応が発生したようだ。

 こうした事件も起きた中、バーチャルエンターテイメントは株式会社viviONの「誹謗中傷対策委員会」との連携を発表した。viviONはかつてBrave groupが運営していた「あおぎり高校」の現運営企業であり、旧運営と連携を組んだ形だ。両社はVTuberに限らず、“あらゆる業界”の誹謗中傷の撲滅を究極目標に掲げ、対策ノウハウの共有・伝達に取り組む。「にじさんじ」と「ホロライブ」も同種の連携体制を敷いており、誹謗中傷対策は業界全体で喫緊の課題として、集中的に取り組まれている様子だ。

■あの温水洋一が美少女VTuberに!? ベテラン俳優が“バ美肉”を果たす

 先日は後藤真希がVTuberとしてデビューしたが、「変化球」ともいえる新たな芸能人のVTuber化事例が飛び出してきた。俳優の温水洋一だ。

 この事例を手がけたのは宮崎県都城市。同市は、「ふるさと納税日本一」を4回経験した都市であり、肉と焼酎が特産品である。これをPRするべく作られたのが、「温水洋一が美少女VTuberになって特産品を宣伝する」という動画だった。……なにを言っているかわからない人も多いと思うが、一字一句違わぬ事実である。

 「ぬくみん」という名前で動画に登場したVTuberは、3DCGの少女アバターで、なかなかに“あざとい”動きを見せてくる。その動きはベテラン俳優・温水洋一による渾身の演技であり、声も氏の地声をボイスチェンジャーにかけたようなものである。VTuberの文脈的には「バ美肉」と呼ばれるものに近い。“顔バレ”する展開には若干の揶揄も感じるが、力の入れ具合はたしかに本気である。そのあたりの“あるある”ネタを盛り込んでいるあたりも、「VTuberのパロディ」として忠実に取り組まれた印象だ。

 ちなみに、今回の動画投稿の少し前から、顔バレしない「ぬくみん」の姿が都城市の公式Xアカウントに投稿されている。きちんと「新人VTuber」のハッシュタグなどを含めた投稿で事前の仕込みを入れているあたり、やはり「VTuberの文脈」をしっかり理解しているようだ。

白上フブキが「仮面ライダー」映画ゲスト声優に APOKIは『Popteen』モデルに採用

 ことし下半期で多くみられる、VTuber業界から異業界へ進出する動きとしては、ホロライブ所属タレントの白上フブキが、「仮面ライダー」シリーズの映画作品『仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ』へゲスト出演する件が挙げられる。映画発キャラクターである「ギーツケミー」の声優を担当するとのことで、配役も当人も「白いキツネ」という共通項を持つのが、採用のポイントだろう。

 VTuberが声優としてキャスティングされるケースは少しずつ増えているが、「仮面ライダー」本家へのゲスト声優出演は、なかなかに大きい事案だ。いわゆる「ゲスト芸能人枠」と思われるが、ここに「バーチャルタレント」が採用されるのは、「仮面ライダー」シリーズでも初の事例のようだ。

 また、韓国で活躍しているバーチャルK-POPアーティスト・APOKIは、ティーン向けWEBメディア『Popteen』のクリエイターモデルに採用された。ハイクオリティなMVと共に送り出す楽曲がグローバルヒットを叩き出しているAPOKIが、日本の10代女性をターゲットにしたメディアに抜擢される形だ。こうした事例が出てくるくらいには、VTuberが大きなポップカルチャー」へと成長しつつあるのを実感させられる。

(文=浅田カズラ)

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