ユーザーの不満の表れでもある! 最近クルマのデザインに「復刻ブーム」が訪れているワケ

この記事をまとめると

■自動車の世界では往年の名車をオマージュした復刻ブームが相次いている

■アパレルや雑貨の世界でも、若者を中心に昭和レトロがブームとなっている

■いまはどれも似たデザインのクルマが多いので、個性的なクルマを求める声が増えている

相次ぐ復刻ブームにある背景とは

 ホンダN-ONEHonda eは、フロントマスクなどの外観が1967年に発売された軽自動車ホンダN360に似ている。現行フェアレディZは、1969年に発売された初代Zをモチーフにデザインされた。

カーデザインには変革期が訪れていた

 GR86の「86」は、1983年に発売されたAE86カローラレビン&スピリンタートレノから名付けられた。

 光岡自動車は、1993年に、2代目マーチをベースにしてフロントマスクをジャガーMkII風に改造したビュートを発売して注目された。いまでも同様のクルマを作り続け、バディはRAV4をベースに、かつてのシボレーブレイザーに似たフロントマスクを装着する。ロックスターは、ロードスターをベースに、外観を往年のシボレー・コルベット風に仕上げた。

カーデザインには変革期が訪れていた

 こういった復刻モデルが生まれて注目される背景には、複数の理由がある。

 まずは昭和の時代に流行った商品を復活させるリバイバルのトレンドだ。たとえば1990年以前の食器や家電製品のデザイン、お菓子や清涼飲料水、アナログ版のレコードやカセットテープなどが、最近は注目を集めている。当時を知る中高年齢層には懐かしく、若い世代には新鮮だ。クルマも同様の受け取られ方をする場合がある。

カーデザインには変革期が訪れていた

 ふたつ目の理由は、近年のクルマは、デザインの個性が薄れたことだ。N360や初代フェアレディZが登場した1960年代は、クルマのデザインが発展途上の段階にあった。そのために試行錯誤も多く、優秀か否かは別にして、さまざまなデザインが生まれた。

カーデザインには変革期が訪れていた

 しかし、いまはデザインも走行性能と同様に洗練され、売れ筋になるトレンドへの均質化が進み、差が付きにくくなった。

 たとえばN-BOXタントのような全高が1700mmを上まわるスライドドアを装着した軽自動車は、どの車種も最大限度の室内空間を追求するから、ボディの基本スタイルが似通ってしまう。とくに、カスタムと呼ばれるエアロパーツを装着した上級シリーズは、どれも存在感の強いフロントマスクを採用する。そのために顔立ちまで似ていて、車種の判別が難しい。

カーデザインには変革期が訪れていた

 ほかのカテゴリーも、ヘッドライトは大半の車種が吊り目状のデザインを採用する。丸型の1灯式や2灯式が混在した2000年以前に比べると、クルマの表情が画一化され、一様に睨み付けるような怖さを感じる。

 その点で、1960年代のクルマをモチーフにしたHonda eやフェアレディZの表情は、柔和で睨み付ける印象はない。つまり、復刻ブームは、昨今のカーデザインに、ユーザーが不満を感じている裏返しともいえるだろう。どれも似通っていて好きになれないと感じているわけだ。

カーデザインには変革期が訪れていた

カーデザインには変革期が訪れていた

カーデザインには変革期が訪れていた

ユーザーの不満の表れでもある! 最近クルマのデザインに「復刻ブーム」が訪れているワケ