さて前回、イギリス・スコットランド北部の崖のふもとに2年間ずっとひとりぼっちで取り残されている羊の話をお伝えしたが、続報が入った。
スコットランドの動物虐待防止協会から「危機的状況にはない」という理由で救助されず、監視が続けられていた。
だがこのニュースが報じられると、本来なら群れで仲間と暮らす動物が、たった1匹で長期間放置されている状態はつらすぎるという声が多く上がり、救出を求める嘆願書には5万以上の署名が集めっていた。
そこでスコットランドの牧羊業を営み、BBCの番組司会者である男性の呼び掛けて合計5人の男性によって救助作戦がついに実施された。
羊は2年ぶりに崖から連れ出され、伸びた毛もすっきりとカットされた。
'Britain's loneliest sheep' rescued from remote shore in Scottish highlands
人里離れたスコットランド、ハイランド地方の浜辺で、2年もの間、仲間もおらずたったひとりぼっちで孤独に生きてきた羊が、ついに農家の人たちによって救出された。
フィオナと名付けられたメスの羊は、クロマーティ湾の崖のふもとで草を食べて生き延びていたが、背中の毛が地面につくほど伸びた状態になっていた。
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巨大な羊毛はかなりの重さで羊の負担になっていて、急な斜面の崖を助けを借りずに上がることなど不可能だった。
ついに5人の男性によって救助される
しかし、この羊に同情する人が増えるにつれ、救助の動きが高まった。
フィオナの窮状に関する報道を見たスコットランド、エアシャー州の羊飼いで、BBCスコットランドのテレビ番組『Landward』の司会者でもあるキャミー・ウィルソンさんの呼びかけで救出作戦が実施されることになった。
ウィルソンさんはフィオナが放置されている状態だったことに関して、SNSユーザーから「牧羊農家の人たちは何も気にならないのか」「羊をそこで死なせるつもり?」といった批判的なコメントを寄せられたという。
あのまま羊を放置しておくと、まちがいなく命の危険にさらされる。私は知り合いの農家に連絡し、救助に協力してほしいとお願いしました。(キャミーさん)
キャミーさんを含め、集まった5人の男性たちは、危険な状況にもかかわらず、11月3日の早朝に救助を開始した。
5人のうちの2人は、ウインチを使って3人を250メートルの崖下に降ろし、フィオナのもとへ送った。
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フィオナが崖の下から長い間動けなかったのは、とても危険だったからです。
助け出すには私たち5人の馬力が必要でした。(キャミーさん)
やがて、農夫たちはフィオナが避難していた洞窟に追い詰めることに成功した。
実際に会うまでどんな性格の羊かわかりませんでしたが、33年間この仕事をしてきて、あんなリラックスした羊に会ったことはありませんでした。
フィオナはとても落ち着いていて、救助された状況にとても満足しているようでした。(キャミーさん)
Britain’s ‘loneliest sheep’ rescued after two years at foot of cliff https://t.co/4gyXz0URtD
— The Guardian (@guardian) November 4, 2023
2年間分の毛が刈られて見違えたフィオナ
フィオナの救出劇は、スコットランドの動物虐待防止協会(スコットランドSPCA )の監督のもと実施された。
救助後、キャミーさんが飼育している羊たちの検査官がフィオナを検査してくれたという。
ありがたいことに、フィオナの健康状態は良好です。
健康診断が終わったフィオナは、2年間分の毛を刈られることになった。
そぎ落とされた毛は、まるでちょっとしたフカフカのラグのようだ。フィオナは見違えるほどすっきりとして、スリムな羊になった。
フィオナの毛刈りビフォア・アフター
多くの思いやりが救助の成功につながる
実は、フィオナの救出を求める嘆願書には54000人の署名が集まっており、そこにはこう書かれていた。
私たちはこのような困難な作業に必要な技術と資源を持つプロの動物救助隊に資金を集めたいのです。
フィオナを窮状から救い出したいと、英国ホバークラフト社も救助を申し出てくれたという。
そして、この救出劇に必要な資金を集めるためのGoFundMeアカウントでは、目標額のほぼ半分の2000ポンド(約37万円)を達成した。
孤独な羊を思う人々の熱意が集まり、今回無事にフィオナは救助されることとなった。キャミーさんたち5人も、もちろん喜んでいる。
フィオナはまもなくファーム・パークに移動する予定で、キャミーさんは「多くの皆さんがよく知っている場所で、これから毎日彼女を見ることができますよ」と話している。
ファーム・パークに行けば、きっとたくさんの仲間にも会えるだろう。もう孤独に過ごす必要はない。
フィオナのことを心配していた多くの人たちからは、「救助されて良かったー!」「今日一番のうれしいニュース」「農夫の5人の男性陣、ありがとう、ありがとう、ありがとう!」「すっきりなってよかった。これからはファーム・パークで幸せに暮らしてね」といった喜びの声が相次いでいる。
References:'World’s loneliest sheep' finally rescued from rock after 2 years – and haircut booked/ written by Scarlet / edited by parumo
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