秋は運動会の季節、というのは日本でも北朝鮮でも変わりない。学校はもちろんだが、企業の運動会を行う点でも同じだ。もっとも、日本ではめっきり少なくなったが。

北朝鮮企業の運動会は、学校の運動場を借りて行われる。大きな企業は1カ月前、小さな工場でも半月前から運動場を借りて、競技の練習や準備が行われる。このやり方に対して、当局の下した指示が波紋を呼んでいる。黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

黄海北道教育部は今月初旬、道内の学校に対してこのような指示を下した。

「運動場をタダで貸し出すのではなく、無条件で対価を受け取れ」

学校も企業も本来は国の所有であり、をカネを受け取って運動場を貸し出すのは非社会主義行為(社会主義にそぐわないと当局が考える行為)に当たる。同様の行為は広く行われているとはいえ、本来は違法だ。しかし、教育部の指示があったため、取り締まりの対象にはならないという。

教育部は、パソコンなど様々な機材が国から学校に供給できていない状況にあり、以前のように機関や企業が学校を経済的に支援してくれない以上、対価を支払わせて運動場を貸し出すのは、「絶対に非社会主義行為ではない」と強調した。また、運動会以外でも、バスケットボールやサッカーの試合で貸し出すときにも、対価を受け取るのは当然とした。

ただ、料金規定が存在しないため、機関や企業、学校のイルクン(幹部)が決めることとなった。沙里院(サリウォン)市で今月14日から20日まで行われた運動会の場合、運動場を借りた機関、企業が学校を支援するということで現金や食べ物を渡した。

さて、受け取った現金の使い道だが、情報筋は沙里院市民の見方を伝えている。

「運動場を借りた対価として受け取った現金が学校の整備や現代化事業に使われればいいのだが、学校のイルクンたちが勝手に処理してしまうのは明らかだ」

つまり、私腹を肥やすのに使われてしまうということだ。どう見ても非社会主義行為なのに、当局のお墨付きを得て堂々とやり、学校に対する支援であるかのように美化する様子を、市民は「バカバカしい」と評した。

咸鏡北道南陽の学校(画像:デイリーNK)