AKB48を卒業した岡田奈々が、全曲の歌詞を自ら書き下ろしたソロデビューアルバム『Asymmetry』を、26歳の誕生日である11月7日に発売した。リード曲「裏切りの優等生」の他、「ネット弁慶の皆様へ」「この世から僕だけが消えることが出来たら」など刺激的なタイトルが目を引く同アルバムは、彼女の本音が詰まった“ノンフィクション”の一作。本作に込めた思いや、グループ卒業当時の心境を赤裸々に語ってもらった。

【写真】「自殺願望のあった時期もあった」など悩んだ頃のことなどを赤裸々に語った岡田奈々

■ここ1年くらいの岡田奈々の思いが詰まった作品

――全曲の歌詞をご自身で書かれているということですが、いつごろから準備をしていたのでしょうか?

2022年の冬くらいから作詞をしていて、仮のレコーディングを今年の初めくらいに開始しました。自分が全曲作詞をするなんて思ってもみなかったので、自分の書いたメッセージが世の中にどんなふうに刺さるのか、とても気になります。ドキドキです。ここ1年くらいの岡田奈々の思いが詰まった作品になっています

――作詞を行う中で、ご自身について新たに発見したことは何かありますか?

「明るい曲が書けない」ということですね(笑)。ネガティブで陰キャな部分があるので、明るく前向きな元気ソングはなかなか作れないことに今回、気付きました。それも課題の一つにして、これから克服していきたいです。

■“自分が二人いるような感覚”を表現

――『Asymmetry』と名付けた本作に込めた思いを聞かせてください。

ジャケット写真でも表現しているような“自分が二人いるような感覚”を、左右非対称という意味のタイトルに込めました。自分の中にいろんな人格があって、どれが本当の自分か分からなくなる時が誰しもあると思うんです。

――ジャケット写真も岡田さんの提案ですか?

そうです。黒髪を伸ばしていた自分と、バッサリ切って髪色を変えた自分の二人で一緒に撮りたいとお願いしました。

――当時、髪の毛を切ったことによる心境の変化も大きかったのでしょうか?

今までの自分と決別した感じでスッキリして、新しいスタートを切れたような感覚になりました。服装も変わったし、良くも悪くも少し荒っぽくなったかもしれません(笑)。髪を切ると、やんちゃになるんです。

■「みんなが思っているようないい子じゃない」と葛藤

――リード曲の「裏切りの優等生」は刺激的なタイトルに感じます。

ファンの方は困惑してしまう曲なんじゃないかなとは思ったんですが、「岡田奈々にしか書けないもの」をお届けしたかったので、勇気を出して書かせてもらいました。書いたのは今年の1月ごろで、「昔の自分の考え方」と「2023年の自分の考え方」のギャップに苦しめられていた時期でした。

――「優等生」と呼ばれる機会が多かったんですね。

デビューしてバラエティー番組に出た時から、優等生・真面目キャラと言われていました。そんな自分と「本当は真面目じゃないのに」と思っている自分の葛藤が強くあったんです。「私は真面目なんかじゃないし、みんなが思っているようないい子じゃないのにな」と思っていました。

――「裏切りの優等生」というより、そもそも“優等生”なわけではなかった、と。

そうですね。その表現がもともと間違っていたのかもしれません。でも、「世の中はそう思ってしまっている」という現実を、今回は受け止めさせていただきました

■「私は私の人生を貫くぞ」という強い意志を込めた曲

――MVもすごく格好良い演出になっていました。

自分のやりたいことも着たい衣装もすべてをお願いしてやっていただきました。赤い背景も、鎖につながれている演出も、雨が降っている設定も私の要望です。

ボロボロの制服を着ているのは、AKB48時代に苦しいことも楽しいことも共にしてきたという意味を込めました。鎖は、自分で自分を閉じ込めて本来の自分を出さないようにしていたということをいうことを表現しています。眼帯を着けているのは、本来の自分を片方隠していることを意味していて、MVの終わりにそれを外すことで、「本来の自分を取り戻して、ここから何も怖いものはない。真っすぐ走ってソロで頑張っていく」という意志を表しています。

――「ネット弁慶の皆様へ」も攻めた曲ですよね。

煽ってますよね。曲名を出した時から“ネット弁慶”の方が沸いていました(笑)。そんなに煽っている曲というか…なんて言うんだろう? 煽っている曲です(笑)。

――それくらい伝えたいメッセージがあったということですよね。

ネット弁慶の方たちによって、どれだけの人が傷付き、心を痛めているかということを知ってほしいということと、「それに負けて命を落としてたまるものか」「私は私の人生を貫くぞ」という強い意志を込めた曲です。言葉の刃ですからね。このタイトルに反応してマイナスなこと言っている人が弁慶なんだと思います。

■ネットでたたかれても「その人と顔を合わせることはない」

――強い意志を持って書かれたと思いますが、やはりつらい時もあったと思います。どうやって克服するに至ったのでしょうか?

どんなにネットで騒がれて、たたかれてしまったとしても、その人と顔を合わせることもないし、その人と人生を共にするわけでもないんですよね。そう考えると、身の回りにいる家族や友人、スタッフさんたちを大事にした方が、自分の人生が豊かになるんじゃないかと“悟り”を開きました。

そういう発言をしているのは、意外と同じ人だったり、限られた片手で数えられるような人たちなんですよ。世界には80億人くらいいるのに、そんな人のために命を落としちゃダメだな、もっと強くならなきゃなと思いました。

■「どうして生まれてきたんだろう」と考え、自殺願望のあった時期も

――命の話が出ましたが、さまざまな収録曲に「生きる」「死ぬ」という詞が繰り返し登場しています。それは生と死について考えた時期があったからですか?

死生観については小学生のころから考えていました。「どうして生まれてきたんだろう」と考えて、自殺願望のあった時期もありました。スキャンダルによってネットでたたかれてしまって「諦めてしまおうか」と考えたこともありました。そういうことを経て、この作品を作り、強くなれた自分がいます。

――そういった時期からどう抜け出したのでしょうか?

しんどくてストレスが溜まって爆発しそうな時は、お酒を飲みながら歌詞を書くんです。今回のアルバムにも、お酒を飲みながら歌詞を書いたものもあります。「Mayday」という曲です。「助けてほしい」という信号の言葉なんですけど、お酒を飲みながら書いています。

作詞で自分の思いを文字にすることがストレス発散につながっていたんですよね。作詞は自分に向いていました。全てノンフィクションなんですよ。失恋ソングからうっぷんを晴らすような曲まで、全部が自分の思いです。

――では、アルバム発売を楽しみにされているファンへメッセージをお願いします。

収録される13曲は今の等身大の岡田奈々が書いたメッセージです。困惑させてしまったり、傷付いてしまったりする方もいるかもしませんが、これが本当のリアルな岡田奈々です。聴いていただいた上で何かを感じてもらえたり、精神的な支えになれたらうれしいです。ぜひお気に入りソングを見つけて、会いに来て教えてほしいなと思います。

◆取材・文=山田健史/ヘアメーク=清水恵美子(maroonbrand)、スタイリスト=高橋美咲(Sadalsuud)

ソロデビューアルバムをリリースした岡田奈々にインタビュー/撮影:山田健史