ドバイに本拠地を置くウルブズから1位指名を受けたカノ。リーグオーナーの1人としても活動している(C)CoCoKARAnext

 中東と南アジアを拠点とするプロ野球リーグベースボール・ユナイテッド」が発足する。10月に行われたドラフト会議では、元ロッテブランドン・レアードや元DeNA平田真吾などNPB経験者だけでなく、247勝レジェンド投手のバートロ・コローン、ゴールドグラブ賞4度のアンドレルトン・シモンズ、6年連続打率3割超えを記録したロビンソン・カノなど、MLBの錚々たるメンツが指名された。

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 中東、南アジアで野球を普及すべく動き出したプロジェクトの仕掛け人の1人が、ドバイに本拠地を置くウルブズから1位指名を受けた「最強2塁手」、ロビンソン・カノだ。MLBイチロー松井秀喜氏らともチームメイトだった名手は、自ら選手としてプレーする傍ら、共同オーナーとしても名を連ねている。

 野球未開の地での新プロジェクトを立ち上げたロビンソン・カノに、その真意を聞いた。

「すでにニュースで報じられている通り、今はドバイで始まる新しいリーグオーナーの1人としても活動しています。8チームを予定していて、その内の4チームに携わっています。これの目標としては、多くの素晴らしい選手に活躍の場を与えるということです。今は素晴らしい選手がたくさんいるのに、野球ができる環境が減ってきているんですね。メジャーリーグでも長期契約がないとなかなか長く活躍できないですし、技術を持っているのにチャンスがない選手に、そういう場を作ることが一つの目標ですね。

 もう一つは、MLBNPBに影響しないシーズンオフにやることは、若い選手にとってはとてもプラスになるんじゃないかと思っています。ウィンターリーグとは時期が被る可能性がありますが、なかなか試合に出られない選手はあまりにも多いので、そういった選手のきっかけになればいいと思っています。野球技術を磨いたり、メンタルを養ったり、夢を持っている若い選手やまだまだ活躍できる30代の選手にもっともっと野球を続けて欲しいなという思いでやっています。そして野球を楽しんでくれる人がもっと多くの地域に広がってくれたらいいですね」

 野球にかけるカノの思いは、新プロジェクトだけではない。2023年のWBCにはドミニカ代表のキャプテンとしてチームに貢献した他、2013年に行われた第3回のWBCでは、ドミニカの8戦全勝優勝の立役者となった。2013年当時、名門ヤンキースで4番を打つなど主軸を任されていたカノ。日本チームはイチローダルビッシュ有などのメジャー組を欠くなど、当時はまだメジャーリーガーWBC参戦が積極的ではない時代に、なぜバリバリメジャーリーガーとして参戦したのか。

「私は常に自分の国を愛していて、国のために優勝したいという気持ちがありました。一つのきっかけとしては、2009年のWBCで敗退して国に帰った時にファンの悔しがっている顔を見て、なんとか国にトロフィーを持ち帰りたいという気持ちでやってきました。その年はヤンキースプレーしていましたけど、私は神様が導いてくれると信じていました。

 おかげで、優勝した時の国の盛り上がりはすごかったですね。喜んでくれることが嬉しかったです。野球にはパワーがあると改めて実感しました。今年はキャプテンという立場だったので、みんなをまとめたり、何があってもこのチームで優勝するという強い気持ちでやってきました。このチームは誰がキャプテンをやってもできたと思う程に素晴らしい選手が揃っていた中で、選手やスタッフ、色々な人にキャプテンとして選ばれて、とても光栄に思っています。チームとしては残念な結果になってしまったので、次のキャプテンにも頑張ってほしいと思います。それだけ価値のあることだと思うので」

 野球の持つパワーを多くの人に届けるため、現在は実戦に向けて施設でトレーニングに励んでいるというカノ。薬物規定違反、自由契約など、野球ができなかった経験を経て、再起をかける。

「17年間メジャーリーグでやってきて、今年は自分の身体に対して、技術的なことやフィジカルなところを維持しようとして、一生懸命トレーニングしています。MLB時代は常に上を目指してやってきました。いいことであっても嫌なことであっても、どんなことがあっても次のことに対して油断しないこと。しっかり準備することが大事だと思ってやってきました。そして何より、試合に出ること、試合に出て昨日以上にいい結果を出すことを心がけていました。だからこそ、若い選手にはたくさんの試合経験を積んで欲しいと思っています」

 最後にもう一つの夢を教えてくれた。

「家族とも話したことがありますが、いつか日本でプレーしたいという夢があります。私は多くの日本人選手とプレーをして、日本の素晴らしさを学びました。礼儀正しさや日本の野球のやり方、ファンの応援など、とても魅力に感じています。そういった場所でプレーしたいという気持ちがあるので、縁があれば日本の皆さんの前でプレーしたいですね」

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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