「馬から落馬」「頭痛が痛い」などの言い方は、日本語の誤用の例としてよく持ち出される「重言(じゅうげん)」の一種です。しかしその重言の中には、誤りかどうか判断が微妙なものもあります。その代表的なものが、教えて!gooにも質問が寄せられていた「違和感を感じる」です。

『返事を返す』に『違和感を感じる』

質問者のpg_0575さんは「違和感を感じる」という言葉を日常的に使っていたそうですが、それが間違っているという意見を某Q&Aサイトで見かけたそうです。これを疑問に感じた質問者は「間違いなんでしょうか?正しいのでしょうか?」と投げかけています。

まずnoname#15285さんは「違和感を覚える」との言い換えを提言。たしかに無難に言い換えるには、その言い方か「違和感がある」が適切な気がします。

Sasabukiさんは、自分は日本語の専門家ではないと前置きをしながらも、「『違和感を感じる』は問題ありません」と断言。

「『不快感を感じる』は重言ですが『違和感を感じる』は違います。それは『不快』はそれだけで『感じを表す語』であり、それに『〜感』をつけることで『不快という感じ』という意味の複合語になります。一方、『違和』だけでは『感じ』ではなくて、『〜感』がつくことで『不快』と同じ『感じを表す語』になりますから、それを感じるのはおかしくありません。重言かどうかは、字面での重複が問題なのではなくて、意味のダブりがあるかどうかがポイントとなります」

さらにSasabukiさんは「例えば『店を開店する』とだけ聞くと、はっきりと意味が被っていますが、『サラリーマン向けの店を開店する』にすると、不自然ではなくなります」との例を出し、「意味が文脈や使用背景によって変わることにも着目すべき」とも補足。文脈によって誤用の印象が強まったり弱まったりするのは面白いですね。

■使い方に明確な基準はない?


そして実際に辞典の編集部に問い合わせて、メールで返答を受けたというfuyumereiさんの回答。

「有名な辞典の編集部は『違和感を感じるは重言です。しかし間違いだと非難するのはやや衒学的(げんがくてき)行為ではないか』と回答。別の有名辞典編集部は『違和感を感じるは、一瞬(現時点では笑い話である)馬から落馬式の重言かもしれないと思い、何度か唱えました。重言だと感じる方もいるでしょう。そう思う方は、違和感を覚えるなど別の言い方をするでしょう』という言葉を使いました。(中略)…二社のメールには、『人それぞれでいい』というのが良く表れていました」

日本語ブームの影響か、重言を見つけるとつい「誤りだ!」と指摘したくなってしまいますが、その判断は時と場合と、使う人読む人の感覚によって異なるもの。明確な基準が設けられないものだけに、使う側にも読む側にも、しばらく配慮が必要と言えるかもしれません。

ちなみに筆者は、話す場合は「違和感を感じる」で全く問題なしですが、書くときは「違和感を感じる」は避けようとするタイプ。しかし見落としてそのまま原稿になっている場合も多いので、そこまで違和感を感じていないのかもしれません(笑)

古澤誠一郎

間違った日本語?