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mage credit:Carlos Augusto Silva

 記録的な干ばつに襲われたアマゾンの熱帯雨林で、謎めいた古代の彫刻が姿を現した。2000年前のものと思しきその彫刻は、岩石に彫られた人面などで、長らく大河の底に沈んでいたことが明らかになったのだ。

 このコロンブスのアメリカ大陸発見以前の彫刻は、ブラジル、マナウスのネグロ川がアマゾン川の濁流と合流する地点で発見された。

【画像】 干ばつの影響で川底の岩に刻まれた古代彫刻を発見

 川底の岩に彫られていたのは、人間の顔や動物の姿、正方形や円といった幾何学模様だと説明するのは、岩の彫刻を研究している、ブラジル、アマゾナス連邦大学の先住民考古学者カルロス・アウグスト・ダ・シルヴァ氏だ。

 これまでも、2005年、2009年、2010年にこの地域が深刻な干ばつに襲われて川の水位が下がったとき、こうした謎めいた彫刻が垣間見えたことがあった。

 これら岩面彫刻は、ブラジル国立歴史芸術遺産研究所(IPHAN)によって、正式に記録されている。

 10月21日の発掘調査では、100以上もの岩面彫刻が見つかり、これまでネグロ川で確認された中で最大の数だという。

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極度の干ばつのせいで、ネグロ川の川床の岩に刻まれた人面彫刻がその姿を現わした。 / image credit:Carlos Augusto Silva

 彫刻は、「エンコントロ・ダス・アグアス」(ポルトガル語で"水の出会い"を意味する)にある岩に彫られている。

 その景観の美しさと、1970年代以降見つかっている近くの川岸に埋もれていた遺物など、民族誌的、考古学的な発見によって、ブラジル文化遺産となっている。

 水底に埋もれた最新の岩面彫刻が発見されたのは、川の水位が半分以上干上がってしまった10月の始めのことだった。

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この岩面彫刻は、2000年前に彫られたものだという / image credit:Carlos Augusto Silva

ネグロ川の水位は1902年の記録開始から最低となる

 彫刻の発見場所から13km離れたマナウス港によると、今年のネグロ川の水位は、1902年に記録をとり始めて以来の最低水準だという。

 今も水位は下がり続けており、この10月には、川の水位は毎日平均10cmも低下している。

 ブラジル環境省は、アマゾン熱帯雨林の干ばつは、さまざまな要因が重なった結果だと発表している。

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 エルニーニョ現象が気候変動によって悪化し、さらに大量の乾燥した有機物が発生、私有地や公有地での犯罪による火災なども起因しているという。

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今年ネグロ川の水位は、1902年に観測が始まって以来、最低となった / image credit:Carlos Augusto Silva

 サンパウロ大学の考古学者エデゥアルド・ゴエス・ネヴェス氏によると、アマゾンの水位は何千年にもわたって変動しているという。

 例えば、8000年から4000年前は、気候が乾燥していて、今日よりもはるかに水が少なかったらしい。だが、現在の干ばつは純粋に自然が原因というよりは、部分的には人為的なものが多分にある。

 この地域は非常に乾燥しているため、今回見つかった岩面彫刻が露出している期間は、もっとも長くなるかもしれないと、ネヴェス氏は指摘する。

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この10月の干ばつで明らかになった顔の彫刻のひとつ / image credit:Carlos Augusto Silva

約2000年前の彫刻と推測される

 これら、岩面彫刻がいつ彫られたものなのかは正確にはわかっていない。「この彫刻に関連する有機物が見つからない限り、年代を特定するのは難しいのです」ネヴェス氏は言う。

 しかし、現場には年代を特定する手がかりがあった。岩面彫刻近く、ネグロ川上流の川岸で見つかった陶器は、放射性炭素年代測定によれば、2000年前のものだという。

 「とはいえ、同じ時代の人たちが、岩面彫刻も彫ったと断定するのは時期尚早ですが」シルヴァ氏は言う。

 「エンコントロ・ダス・アグアス」は非常に流れの急な場所で、見つかった陶器は川の水で運ばれて移動した可能性がある。

 つまり、陶器を作った人たちと、彫刻を作った人たちは別である可能性はあると、ネヴェス氏は指摘する。さらに、マナウスから北西800kmを含むアマゾン川沿岸の多くの場所にも同様の彫刻が見られると、両氏は言う。

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干上がったネグロ川 / image credit:Carlos Augusto Silva

 通常、水は彫刻を隠し、保存する役目を担う。だから今、彫刻が露出し、人々の好奇心が現場に集中することが、考古学者にとって心配なのだという。

 ブラジルの法律では、考古学遺物を傷つけることは禁止されていて、IPHANは近日中に環境と遺産保護のために、取り締まりを含めた教育活動を一般にも普及することを急いでいる。

 今回の岩面彫刻の発見によって、この地域に遥か昔に住んでいた住民の知性と技能がよくわかるとシルヴァ氏は言う。

彼らは、かつて西洋社会によって残酷に否定された歴史におけるアマゾンの再生のようなものと言えるでしょう。

文学の世界では、現地の人たちは知能が低いと考えられていたのです。何千年も長く残る硬い岩という素材に彫刻を施すには、何世代にもわたって受け継がれてきた、純粋に教育的知識である技術が必要です。知能が劣っていたなどというのは、とんでもない言いがかりです

追記:(2023/11/07)本文を一部訂正して再送します。

References:Severe drought reveals more than 100 rock carvings in Amazonian tributary that may be up to 2,000 years old / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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アマゾンの深刻な干ばつで岩石に刻まれた2000年前の人面彫刻が明らかに