2050年、動物から人へと感染する人獣共通感染症によって、現在の12倍の人々が死亡すると予測されるそうだ。
『BMJ Global Health』(2023年11月2日付)に掲載された研究では、ここ数十年で、動物から人に感染症が移る「スピルオーバー」が規模・頻度ともに増加傾向にあることを明らかにしている。
この調査を行った米国のバイオテクノロジー企業「Ginkgo Bioworks」の専門家チームは、気候変動による地球温暖化と森林伐採によりこの傾向が今後も続くため、早急に行動して世界の公衆衛生リスクに対処する必要があると呼びかけている。
今もなお警戒が求められている新型コロナウイルスは、もともとコウモリが宿主だったという説がある。このように動物から人へ病気が移ることを「スピルオーバー(漏れ出すの意味)」という。
今回の研究では、過去60年の間にこうしたスピルオーバーがどれだけ起きているのか調査された。
対象となったのは、フィロウイルス(エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱)、SARSコロナウイルス、ニパウイルス、南米出血熱の4種だ。
また分析された主なデータベースは、世界保健機関(WHO)によって報告された伝染病、1963年以降に発生し50人以上が死亡したアウトブレイク、1918年・1957年のインフルエンザ大流行といった歴史的に重要な流行だ。
調査の結果、1963年から2019年にかけて、3150件以上の集団感染(アウトブレイク)が発生していることが判明。そのうち24カ国75件がもともと動物から人間に感染したものだった。
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それによる死者は合計1万7232人。そのうち1万5771人がフィロウイルスの犠牲者で、ほとんどはアフリカで起きたものだったという。
人獣共通感染症で2050年までに死者が12倍に増加する可能性
研究チームによると、こうしたアウトブレイクは1963~2019年に毎年5%ずつ増加しており、それによる死者も9%ずつ増えている。
このままの傾向が続けば、動物から人間への感染は2050年までに2020年の4倍、死者は12倍にも達すると予測されている。
しかも、こうした数字は過小評価されている可能性が高い。というのも、病原菌とみなすための基準が厳しいことにくわえ、2020年以降流行した新型コロナウイルスが調査対象に含まれなかったからだ。
こうした結果からは、動物から人への感染症はたまたま突発的に起きているわけではなく、ここ数十年でだんだんと規模が拡大し、しかもより頻繁になっている傾向がうかがえるとのこと。
この結果を踏まえ、世界的な公衆衛生リスクを対処するために早急に行動をするべきだと、研究チームは訴えている。
References:Historical trends demonstrate a pattern of increasingly frequent and severe spillover events of high-consequence zoonotic viruses | BMJ Global Health / Study: Animal-to-human diseases could kill 12 times as much by 2050 / written by hiroching / edited by / parumo
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