トヨタの2022年4~12月期決算は、売上高が27兆4,640億円で過去最高を記録。2012年6月期~2022年5月期における純利益の通算ランキング(東洋経済データ事業局調べ)は3位がNTT、2位がソフトバンクグループ、1位がトヨタ自動車です。 好調である理由の1つに、新型コロナウイルス拡大によって業界全体で低迷した販売台数の回復が早かったことが挙げられます。 新卒でトヨタ自動車に入社し、独立後は社会人教育関連事業を展開、作家としても活躍する浅田すぐる氏が、トヨタの問題解決法を解説します。

トヨタの問題解決手法「TBP」とは何か?

トヨタ・ビジネス・プラクティス、通称「TBP」。

まずは素朴に直訳すると、「トヨタにおける仕事(=ビジネス)の実践、業務の進め方(=プラクティス)」といった意味になると思います。

要するに、「トヨタにおいて、働くとはこういうことです!」という定義が、明確に言語化されているのです。

一方、みなさんの会社では、「仕事とは?」「働くとは?」に関して何かしら明文化されたものはあるでしょうか?

あるいは、組織としてそうした定義がなかったとしても、自分なりに説明できるレベルで考え抜いてあるでしょうか?

ぜひ自社や自身の仕事観と比べながら、この後を読み進めていってください。

トヨタにおける仕事の定義、8つのSTEP

トヨタにおける仕事の定義は、次の8つのSTEPで構成されています。

「TBP8STEP」と言われていて、日本に限らず世界中の従業員がこれを学ぶのですが、この8つのSTEPは秘中の秘といった類のものではありません。書店に並ぶトヨタ関連本を紐解けば、だれでも学べる開かれた知見です。

本書では、出版年が2019年と比較的新しい参考文献として、『ザ・トヨタウェイサービス業のリーン改革』(ジェフリー・K・ライカー、カーリン・ロス著/稲垣公夫訳/日経BP)に掲載されている文言を引用し、以降で活用していきます。

・STEP1:問題を明確に定義する

・STEP2:問題を分析し、分解する

・STEP3:改善の目標を設定する

・STEP4:真因を分析する

・STEP5:対策を立てる

・STEP6:対策を実行し、最後まで見届ける

・STEP7:結果とプロセスの両方をよく見る

・STEP8:うまくいったプロセスを標準化する

「問題の明確化」「真因(とりあえずは真の原因といった理解で大丈夫です)の分析」「対策の立案」等々。要するに、この8STEPは「問題解決手法」のことなのです。

したがって、「トヨタにおける仕事とは何か?」の定義は、次のひと言で要約することができます。

TBP=トヨタにおける「仕事=働く」とは、

トヨタにとって仕事とは?

TBP=トヨタにおける「仕事=働く」とは、「問題解決」である

さて、ここで私のスタンス、「傍楽」について紹介いたします。その定義は、次のひと言で表現することができます。

著者の仕事のスタンス「傍楽」とは?

「仕事=働く」とは、「だれかを楽にすること」である

みなさんもすぐに両者の接続ができたのではないかと思います。私はなぜ、「何度も研修を受講したい!」と感じるほど、TBPに感動したのか?「仕事=問題解決=傍楽」が、一気通貫でつながったからです。

加えて、どうすれば周囲の問題を解決し世のため人のために貢献していけるのかについて、8つのSTEPを踏めば実践できるよう明文化されている。

貴重なノウハウを誰でも知ることができる

しかも、書店のトヨタ本コーナーに行けば、だれもがこの叡智にアクセスできてしまう。これは誇張でも何でもなく、日本が世界に誇る無形文化遺産だと思うのですが、いかがでしょうか。

ちなみに、こうやって多くの人が再現しやすいように言語化やフレームワーク化しておくことを、トヨタでは「標準化」と言います。

浅田 すぐる

「1枚」ワークス株式会社代表取締役 「1枚」アカデミア・プリンシパル 動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰

(※写真はイメージです/PIXTA)