コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回ピックアップするのは、漫画家の施川ユウキ(ハジメ)さんによる作品『星座を覚えても、星の話をするタイミングなど無い。』だ。

【漫画】孤独の青年・鬱野…電話勧誘やフードデリバリー、のど飴について考える鬱野に「人間の描き方が素晴らしい」と反響続出

同作は施川さんのアンチグルメ漫画『鬱ごはん』に収録された1話で、施川さんが2023年10月19日に自身のX(旧Twitter)に投稿したところ、6000件を超える「いいね」と反響が寄せられている。今回はそんな施川さんにインタビューをおこない、創作のきっかけやこだわりを語ってもらった。

フードデリバリーの仕事で出会った子どもの言葉に青年は…

主人公は“のど飴を食べる時に上から2つ目にある粒から食べる”という少し変わったこだわりを持つ青年の鬱野たけし。そんな鬱野はフードデリバリーの配達員として仕事をしている。

鬱野の元には、よくセールスの営業と思われる電話がかかってきていた。セールスと思うとなかなか出る気持ちになれないままでいた鬱野は、ある日「マンションのエントランスで受け取ります」という配達の依頼を受ける。部屋番号を知られたくないパターンかと思いながら指定の場所に向かうと、そこにいたのは小さな子どもたちとその母親だった。

鬱野の到着を楽しみにしていた子どもの反応に少し戸惑う。帰り際、子どもにある言葉をかけられた鬱野は…。

人との関わりが苦手で、どこか俯瞰しているような鬱野と無邪気な子供の出会いを描いた同作。何気ない子どもの一言に鬱野の行動が少し変わる様子に、ネット上では「解像度が高くて、すごく引き込まれた」「青年の反応がリアルで良い」と反響が寄せられた。

■「読後感の良い物語を目指した」作者・施川さんの想いやこだわりとは?

――『星座を覚えても、星の話をするタイミングなど無い。』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

星を見ながらサラッと星座の話ができたらカッコいいと思って星座を覚えても、なかなかそんな機会はなくて、結局忘れてしまうというあるあるネタを元に物語を作りました。

コミュニケーションについての話です。主人公の鬱野は積極的に人と関わりを持とうとしないタイプの人間です。配達員と顧客のすれ違いを当然のように受け入れているし、営業の仕事は絶対やりたくないと思ったりします。配達先の母子と不意にほっこりするやりとりがあり、その影響かどうかわかりませんが、星空の下で見知らぬ番号からの電話に出ます。読後感の良いエピソードを目指しました。

――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。

ふたご座流星群のニュース記事に日付が入っているところです。作品全体にリアリティが出ます。もちろん、ふたご座流星群の実際のピーク日です。描いた当時、たまたまあった天体ショーです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

ラストのコマとセリフです。電話相手のセリフは美しくもなんともないのに、シーンとして美しくなってしまっているところが気に入ってます。

――主人公を取り巻く日常(配達員の業務、電話からのセールス)がとてもリアルに描かれていますが、これは実体験を取り入れているのでしょうか?

「ウーバー、やってるの?」とよく訊かれますが、どこが実体験でどこが創作か曖昧にしたい気持ちもあるので秘密です。セールスの電話やのど飴の「孤独のひと粒」は実体験です。

――今後の展望や目標をお教えください。

この単話は『鬱ごはん』という連載漫画の中の一話です。2010年から描いていて、主人公の鬱野はリアルタイムに歳を重ねています。鬱野の人生を描ききるまで続けることが目標です。彼が急死する可能性もゼロではありません。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

この話は『鬱ごはん』5巻に入っています。気に入っていただけたら、ぜひチェックしてみてください。一話完結なので、どこから読んでも問題ないです。1巻から読むと、20代前半から30代半ばまでの、鬱野の生き様が詳細にわかります。

夜空を見ながらネット回線について問い合わせる鬱野/画像提供/施川ユウキさん