皇室に代々受け継がれた美術工芸品を保存・公開している三の丸尚蔵館が、開館30周年を機にリニューアルオープン。名称を「皇居三の丸尚蔵館」と改め、新しいスタートを切った。11月3日(金・祝) より、開館記念展『皇室のみやび─受け継ぐ美─』と特別展示『御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代(みよ)を迎えて─天皇皇后両陛下が歩まれた30年』の2つの展覧会を開催し、三の丸尚蔵館が所蔵する国宝4件や、皇室ゆかりの品々を展示している。
皇居東御苑内にある三の丸尚蔵館は1993年に開館した美術館。上皇陛下と香淳皇后により、皇室に代々受け継がれた美術工芸品が国に寄贈されたことをきっかけに生まれた施設で、その名はかつての江戸城三の丸の地にあることにちなんでいる。同館の管理・運営は2023年10月に宮内庁から独立行政法人国立文化財機構に移管。新たに建設された新館でリニューアルの日を迎えた。
開館を記念して開催される2つの展覧会は、どちらも館の特色が色濃く現れたものだ。開館記念展『皇室のみやび─受け継ぐ美─』は、2024年6月23日まで、4期にわけて開催される展覧会。2023年12月24日までの第一期では三の丸尚蔵館の収蔵品より、伊藤若冲《動植綵絵》や国宝《蒙古襲来絵詞》など近年に新たに指定された同館所蔵の国宝8件のうち4件を公開する。入場は事前予約制(日時指定)のため、快適な展示空間で鑑賞することができる。国宝4件は個人で使用する限りは写真撮影も可能だ。
高階隆兼によって描かれた《春日権現験記絵》は、藤原氏が氏神である春日明神から受けた加護と霊験を綴った絵巻。豊かな色彩と精緻な描写、そして愛らしくいきいきとした鹿の姿が見どころだ。
《蒙古襲来絵詞》は2度にわたって起きた元寇のうち、2度めとなる弘安の役を描いた絵巻。絵巻の主人公は肥後国御家人の竹崎季長。赤い甲冑を着て出陣する季長を中心に物語は展開する。
国宝《屏風土代》は、藤原佐理と藤原行成とともに、平安時代中期の「三蹟」と歌われた小野道風による、屏風用に書いた漢詩の下書きだ。残念ながら現在、その屏風は失われてしまっているが、下書きからも流麗な文字が見て取れる。
そして、近年とくに人気の伊藤若冲《動植綵絵》は若冲が約10年をかけて描いた全30幅からなる作品。若冲が京都の相国寺に寄進し、その後、明治期に相国寺から皇室へと献上された。同展では、全30幅のうち8点を前期、後期にわけ4幅ずつ展示する。後期も《貝甲図》や《紅葉小禽図》など人気の作品が展示予定だ。
展示点数は少ないものの、どの作品も目を引くものばかり。余裕をもって見ることができる日時予約制の空間で、贅沢な時間を楽しんでみよう。
そして、隣接する展示室では、特別展示『御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代(みよ)を迎えて─天皇皇后両陛下が歩まれた30年』も開催されている。天皇皇后両陛下がふたりで歩んできた30年の歴史を、ゆかりのお品とともに紹介する。
結婚の儀や御即位の儀で用いられたご装束や調度品、お祝いの品のほか、愛子内親王殿下ご誕生のおりに、上皇上皇后両陛下より送られた犬張子、そして天皇陛下の愛用品などが会場に並ぶ。
なお、皇居三の丸尚蔵館は、増築が進められている。ミュージアムショップなどの施設を備えてフルオープンするのは2026年度の予定だ。これからのさらなる皇居三の丸尚蔵館の発展も楽しみにしたい。
取材・文:浦島茂世
<開催情報>
皇居三の丸尚蔵館 開館記念展『皇室のみやび―受け継ぐ美―』
2023年11月3日(金・祝)~2024年6月23日(日)、皇居三の丸尚像館にて開催
・第1期:「三の丸尚蔵館の国宝」11月3日(金・祝)〜12月24日(日)
・第2期:「近代皇室を彩る技と美」1月4日(木)〜3月3日(日)
・第3期:「近世の御所を飾った品々」3月12日(火)〜5月12日(日)
・第4期:「三の丸尚蔵館の名品」5月21日(火)〜6月23日(日)
※第1〜3期は会期中、展示替えあり
※日時指定予約制
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