車検が残ってても「前倒し」で受けることが可能! 「悪用」もあるのにそもそも何のための制度?

この記事をまとめると

■日本の公道を走行するには車検が必要

■車検は期限が残っていても好きなタイミングで前倒しで受けることができる

■こうした制度を悪用する例もある

普通の人にとって車検の前倒しは損しかない!

 クルマに乗っていると楽しいことしか頭に浮かばないものかと思っていましたが、やはりクルマ好きのなかにも心配性な方は少なからずいるようです。高速道路をかっ飛ばしている最中にバーストしたらどうしようとか、渋滞にはまった際には水温や油温が気になってドライブどころではない、あるいは車検が切れたのに気付かず乗り続けてしまったら手が後ろにまわってしまうのではないか、などなど数え上げたらキリがありません。もっとも、たいていの心配事には解決策があるもの。むしろ、気にするほうがおかしいことすらあるのです。

 たとえば、車検が失効してしまったクルマに乗り続けたら、たしかに道交法違反になるのですが手が後ろにまわる=逮捕にいたることはレアケース。30万円以下の罰金、および免停30日と厳しい罰こそ待っていますが、少なくともブタ箱には入りませんのでご安心を。

前倒し車検の必要性

 それでも不安で仕方がない、できることなら早めに車検を受けて夜はぐっすり眠りたいのだ! いるんですよね、こういう心配性というか用意周到というか、慎重なタイプ。ですが、ざっくばらんに言って車検の前倒しはさほど意味がないばかりか、損することだってあるのです。

 そもそも、車検は満了日の1カ月前からの期間中に更新するのがデフォルトかと。心配性はこの1カ月がウズウズしちゃうのでしょうが、じつは1カ月より前だって車検を更新することは可能となっています。むしろ、いつだって、何回だって車検は受けていいことになっていますからね。

前倒し車検の必要性

 とはいえ、満了1カ月より前に受けたとすると更新した日から起算して満了日が設定されるので、残っている車検の有効期間が無駄になるばかりか、税金や保険料まで無駄になり、心配を打ち消す代金としてはいささか高くつくわけです。

 それでも不安で仕方がない、という方にはふたつの処方箋があります。まずは、「指定整備工場」なら満了日の45日前から車検を受付けるシステムがあり、保安基準適合標章というのを出してもらえばいいのです。で、この標章がもつ2週間の有効期間内に運輸局に提出すればなんの無駄もなく車検の取得が可能。あくまで、1カ月前に海外出張やら入院やら都合がつかない人向けではありますが、できないことはないというソリューション。もうひとつの処方箋は、悪いこた言わないのでカウンセラーにでも診てもらうのが吉って感じ。

悪徳中古業者が制度を悪用する手口とは

 ところで、この「いつだって、何回だって」車検を受けられるというシステム、悪徳業者がずいぶんと使いこなしていたことご存じでしたか。何度も車検を受けて走行距離を上書きすることで、車検証の実走行を少なく見せるという手口。つまり、クルマの走行距離を改ざんして車検を受けることで1回前の走行距離を消し、続けざまに2回目の車検を受けたらさらに前回の距離が帳消しになるというもの。もっとも、2017年に「最大走行距離」が記載されるよう法制化されたため、こうした手口は使えなくなりました。

前倒し車検の必要性

 が、悪質な業者というのはあとを絶たないもので、仮に最大走行距離が3万キロで、そこから車検までの2年間に3万kmを走って、合計6万kmになっていたとしても、車検前にメーターを改ざんして3万5000kmにしていたとしたら、これ見破るの難しいですよね。自社で車検を担う中古車販売店が、メーター改ざんをしようと思えばいくらでも悪さができるというわけ。

前倒し車検の必要性

 もっとも、いくらメーターをいじくったとしても、いまどきのクルマはECUにデータが記録されているので、ちゃんとした流通ルートを経て売られたクルマであればさほど心配する必要はないでしょう。走行距離に疑義が発生しないよう、オークション業者やディーラーはそうしたデータをしっかり備えているからです。また、いまではよほど人気のあるタマでなければ走行距離の改ざんは流行らない様子。手間ひまかかるわりに儲けは微増、これではリスクを負う気にもならないというもの。

 なお、自分のクルマの走行距離に疑いがあって、夜もおちおち眠れないという方には「一般社団法人 自動車公正取引協議会」という組織が相談に乗ってくれます。心配性なクルマ好きの強い味方ですよ!

車検が残ってても「前倒し」で受けることが可能! 「悪用」もあるのにそもそも何のための制度?