NHKは11月6日東京都内の3世帯について、放送受信契約の締結と受信料および割増金の支払いを求める訴訟を東京簡易裁判所に提起したことを発表した。

この中で、NHKは「契約締結をお願いする文書の送付や電話・訪問などにより誠心誠意説明し、丁寧な対応を重ねてまいりましたが、応じていただけなかった」と提訴までの過程を説明。

そのうえで、「個別事情を総合勘案したうえで、やむなく割増金の請求を含めた提訴に至りました。今後も公平負担の実現に向けた取り組みを進めてまいります」とコメントしている。

NHKが「割増金」の支払いを求めるのは初めてというが、一部のインターネット上では、反発する声もあがっている。はたして、今回の「割増金」とは、いったいどういうものなのだろうか。

●受信料=NHKの財源

NHKは、「公平・公正な立場で放送の自主性を保ちながら、テレビやラジオの放送を通じて国民の生命・財産を守り、公共の福祉、文化の向上に貢献すること」という基本的使命を果たすため、特定のスポンサーに頼らない「財政の自立」が必要だとして、受信料を財源に運営されている。

放送法は、NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばなければいけないと定める(64条1項)。テレビを設置した国民に受信料を支払わなければならない法的義務を課すことで、NHKの財源を確保している。

NHKによると、2022年度末の受信料の推計世帯支払率は78.3%(前年度比マイナス0.6ポイント)。約2割強の世帯が未払いの状態で、大都市圏では支払率が低い傾向があり、逆に地方圏では支払率が高い傾向があるという。

●割り増しで「通常の3倍」請求される

NHKの掲げる「受信料の公平負担」が支払率100%で達成されれば理想だろうが、現実には容易でない。そこで財源確保の手段として2022年10月施行の改正放送法で新設されたのが「割増金」だ。

放送法の定めを受けたNHK放送受信規約12条では、「不正な手段により放送受信料の支払いを免れたときは、当該放送受信契約者に対し、支払いを免れた放送受信料に加え、その2倍に相当する額である割増金を請求することができる」としている。

対象となるのは、「不正な手段で受信料の支払を免れた場合」と「正当な理由がなく期限までに受信契約の申込まなかった場合」。NHKのホームページでは、対象者に一律に請求するのではなく、「個別事情を総合勘案しながら運用したい」としている。

割増金まで請求されると、未払い額の「3倍」になる。割増金請求の可能性をちらつかせ、自主的に受信料を支払ってもらいたいという思惑がある。

NHKは「受信料の公平負担」を強く打ち出している。財源確保に加え、すでに受信料を支払っている視聴者の「なぜテレビを置いているのに支払っていない人がいるんだ」という不満解消や支払率のさらなる低下防止を防ぐ狙いもあるだろう。

NHKはホームページで、受信料の公平負担に向けた取り組みについて、未払い者への受信料制度に対する理解を働きかけるとしたうえで、「それでもなおご理解いただけない場合には、最後の方法として、民事手続きによる支払督促や民事訴訟を活用する」と明言している。

割増金のルールを定めても、実際に請求されることがなければ「絵に描いた餅」となる。NHKは、今回の提訴が「割増金」の支払いを求める初めてのケースとしており、今後の「割増金」制度の運用を左右する試金石となりそうだ。

NHKがついに「受信料の3倍」求めて初提訴 財源確保へ未払い者に割増金 どんな仕組み?