総務省10月31日に公表した「労働力調査」によると、完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%という結果でした。本稿ではニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏が、23年9月時点の雇用関連統計を分析し、日本の雇用環境の現状について解説します。

1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%

総務省10月31日に公表した労働力調査によると、23年9月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から▲3万人の減少となる中、就業者が前月から6万人増加したため、失業者は前月から▲8万人減の177万人(いずれも季節調整値)となった。

就業者数は前年差21万人増(8月:同22万人増)と14ヵ月連続で増加した。

産業別には、製造業が前年差▲21万人減(8月:同▲3万人減)と2ヵ月連続で減少し、医療・福祉が前年差▲7万人減(8月:同6万人増)と4ヵ月ぶりに減少したが、生活関連サービス・娯楽業が前年差11万人増(8月:同▲1万人減)と4ヵ月ぶりに増加し、宿泊・飲食サービス業が前年差24万人増(8月:同16万人増)と15ヵ月連続で増加した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ53万人増(8月:同41万人増)と19ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差44万人増(8月:48万人増)と2ヵ月連続で増加、非正規の職員・従業員数が前年差8万人増(8月:同▲7万人減)と2ヵ月ぶりに増加した。

2.製造業の新規求人数が大幅減少

厚生労働省10月31日に公表した一般職業紹介状況によると、23年9月の有効求人倍率は前月から横ばいの1.29倍(QUICK集計・事前予想:1.30倍、当社予想も1.30倍)となった。

有効求人数が前月比▲0.0%、有効求職者数が同▲0.1%といずれも前月からほぼ横ばいとなった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.11ポイント低下の2.22倍となった。新規求人数が前月比▲5.7%と大きく落ち込んだ(新規求職申込件数は同▲1.0%)。

新規求人数は前年比▲3.4%(8月:同1.0%)と2ヵ月ぶりに減少した。

産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年比5.2%と24ヵ月連続で増加したが、製造業(同▲12.7%)、建設業(同▲8.1%)が7ヵ月連続、卸売・小売業(同▲2.9%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲1.0%)が4ヵ月連続で減少した。

社会経済活動の正常化やインバウンド需要の拡大を受けて、宿泊・飲食サービス業は就業者数、新規求人数ともに大幅増加が続いている。

一方、製造業は生産活動の停滞を反映し、就業者数、新規求人数ともに大幅に減少し、その他の業種でも求人数の減少が目立っている。

企業の人手不足感は非常に強いものの、生産活動の停滞やコスト増の影響などから、宿泊・飲食サービス業以外の業種では、企業の求人意欲にやや陰りが見られる。

(写真はイメージです/PIXTA)