まったく新しいタイプの浮体式洋上風力発電機が、まもなくノルウェーの海岸に浮かぶことになりそうだ。
首都オスロを拠点とする新興企業「World Wide Wind(WWW)」が開発した革新的な風力タービンは、どこか洋上に突き出るアンテナを思わせる。
今年5月に「Netexplo 2023 Global Innovation Award」を受賞した新型風力タービンだが、今度はノルウェー南西の海に設置するゴーサインが出されたという。
今回はあくまで試験的運用だが、そのプロトタイプはこれまでは難しかった深海の上にも設置することができ、風力発電に秘められた可能性の8割を解き放つと期待されている。
World Wide Wind(WWW)のビョルン・シモンセンCEOは、風力発電の本当の力を引き出すには、ただ陸上用の風力発電を海に持ってくるだけはダメなのだと説明する。
それは海に設置されていても、持続可能かつコスト効率の高いものでなければならない。
そのために開発された新型浮体式洋上風力タービンのプロトタイプは、長さ19mのマストに、鋭く尖った3本ブレードが2組取り付けられており、どこか海上のアンテナを思わせる。
発電タービン自体は、マストの根元にあり、海の中に沈んでいる。
2組のブレードは風を受けるとそれぞれ逆方向に回転し、マストとその内部のシャフトを回転させる。するとそこに接続されたタービンもまた回転し、電気を作り出す。
浮体式という名称からもわかる通り、このシステムは全体が海面に対して傾くように浮いている。
もちろんそれだけでは流れていってしまうので、ケーブルで海底につながれる。海底に直接固定するわけではないので、波に合わせてゆらゆらと揺れ動く。
World Wide Wind Paris NETEXPLO Innovation
深海にも設置可能
この方式の優れたところは、これまでの固定式のものでは設置できなかった深い海でも使えるところだ。
深海にも設置できるというのは、洋上風力発電にとってはとても大きなメリットだ。
・合わせて読みたい→鳥が近づくと風力発電のタービンが止まる。スマートカメラが鳥の衝突事故を大幅に減らす
なぜなら、洋上風力発電の潜在的な発電能力の8割は、深海が広がる海面を利用してはじめて利用できるようになるからだ。
その可能性を求めて、すでにさまざまな浮体式風力タービンが利用されているが、それらにも問題があり、思うように性能を発揮することができていない。
WWWの新型風力発電タービンは、軽量化やサプライチェーンの簡素化などによって、そうした問題に対処できるようになっている。
また野生生物への影響が小さく、風力発電の均等化発電原価(発電量あたりのコスト)を大幅に下げられる可能性もあるという。
WWWの創立者スティアン・ヴァレンティン・クヌッツェン氏は、「これが浮体式風力発電の”テスラの瞬間“になると信じています」と、Rechargeに語っている。
この10年間、浮体式風力発電の課題はなかなか解決できなかったが、ついにそれが変わろうとしている。
現時点でプロトタイプの発電能力は30kWだが、同社は今後数年のうちに、より大型で強力なタービンを投入したいと考えている。
2025年初頭には1.2MWの試験機の運用が予定され、2030年までには24MWの商業用タービンの発売も視野に入っている。最終的な目標は、40MW以上の洋上風力発電を開発することであるそうだ。
References:World Wide Wind: Signs agreement with AF Gruppen to test the world’s f – WorldWideWind / 'Floating wind's Tesla moment' | Supersize tilting turbine targets energy mainstream by 2030 | Recharge / written by hiroching / edited by / parumo
コメント