最近の研究によると、7.3か月にわたる禁酒で、ダメージを負った脳が大きく回復することがわかったそうだ。
お酒は美味しく楽しいものだが、飲み続ければ健康に悪影響が出ることが明らかになっている。
とりわけ気になるのが脳への影響だ。長期のアルコール摂取によって、認知障害や脳の構造変化を引き起こすだろうことが指摘されている。例え1日1杯でも脳が萎縮していくという研究結果も報告されている。
だが希望はある。米国の研究者が、お酒を約7か月やめたアルコール依存症患者のほとんどの脳領域で、はっきりとした回復を確認したのだという。
『Alcohol』(2023年8月30日付)に掲載された今回の研究は、アルコール使用障害患者が治療(つまり禁酒)を始めてから脳がどのように変わるのかを、磁気共鳴画像法(MRI)で7.3ヶ月にわたり観察したものだ。
とりわけ詳しく観察されたのが大脳の表面に広がる、神経細胞の灰白質の「大脳皮質の厚みだ。
この脳の外側の層は、私たちが物事を理解し認識するうえで大切な役割を果たしている。
だが脳の体積や表面積とは遺伝的・表現型的に異なっているため、禁酒で脳が回復するのかどうか調べるには都合がいいと、VAパロアルト・ヘルスケアシステムのティモシー・C・デュラッツォ氏は説明する。
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調査されたのはアルコール依存症患者88人と、そうした障害がない45人(比較のため)だ。
約7か月の禁酒で脳領域の皮質の厚さの回復を確認
これらの患者が禁酒を始めてからの脳の様子を観察してみると、ほとんどの脳領域で皮質の厚さがはっきりと回復していることがわかったのだ。
回復が認められたのは、観察対象だった34領域のうち26領域。お酒をやめれば、神経などの組織を回復させる力が、脳にはあるだろうということだ。
禁酒によって複数領域の大脳皮質の厚さが回復することを初めて実証したものと、デュラッツォ氏は話す。
ただし脳が回復するペースは人によってそれぞれ
ただし回復するペースは、人によって違う。
治療開始までの過去1年間で、飲酒が多かった人ほど、眼窩部・三角部・縁上部などの回復ペースが遅かった。
このことは、アルコール摂取の量と期間が、回復に影響するだろうことを示している。
またアテローム性動脈硬化(コレステロールがたまり、血管が狭くなったり、詰まったりする症状)があると、前頭前野・下頭頂部、側頭/中側頭をはじめ、特定の領域で回復ペースが遅かった。つまり脳の回復には、血管の健康が大切ということだ。
だから高血圧・高脂血症・糖尿病・喫煙など、動脈硬化を悪化させ、動脈にプラーク(血管内のふくらみ)ができやすくなるような症状や習慣がある人は、脳の回復が遅い。
そのため禁酒で脳を復活させるには、そうした状態をきちんと治すことも大切となる。
なお、今回の研究は参加者が少ないため、禁酒による脳の回復効果がどれほど一般的なものなのか、はっきりと結論することはできない。
また皮質の厚みが回復したことで、その人の精神・認知機能・生活の質などがどのように改善するのかもわからない。こうしたことは、今後研究すべきテーマであるそうだ。
References:Regional cortical thickness recovery with extended abstinence after treatment in those with alcohol use disorder - ScienceDirect / Groundbreaking research shows significant brain recovery after abstinence from alcohol / written by hiroching / edited by / parumo
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