世界最強の称号を欲しいままにしているクロフォード。そんな彼に降りかかったハプニングの舞台裏とは。(C)Getty Images

 異例の事態がボクシング界を騒然とさせている。現地時間11月9日、国際ボクシング連盟(IBF)が、世界ウェルター級4団体統一王者テレンスクロフォード(米国)の王座を剥奪する意向であると明らかになった。

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 歴史的偉業をやってのけた36歳にとって、まさにハプニングだろう。

 WBO同級王者だったクロフォードは、今年7月に3団体統一王者のエロール・スペンスJr.(米国)に9回TKO勝ち。史上初となる2階級での4団体統一を達成。直後に米老舗誌『The Ring』の厳選する階級を超えた格付けパウンド・フォー・パウンドPFP)で1位となるなど声価を高めていた。

 しかし、彼の声価を高めた歴史的試合で締結した契約内容が問題となった。米メディア『Boxing Scene』によると、王者は各団体の指名試合の義務を果たす必要あるのだが、クロフォードにはスペンスJr.(米国)との即座の再戦条項があり、IBF暫定王者ジャロン・エニス(米国)との防衛戦が実現できず。これにより王座剥奪の処分が下されるという。

 米メディアを中心に「クロフォードが4団体統一王者ではなくなった」というセンセーショナルな見出しが世界中を駆け巡った。そうしたなかで『Boxing Scene』の取材に応じたIBFの広報担当者は、交渉に舞台裏を鮮明に明かしている。

8月25日にIBFはTBCプロモーションズに対し、クロフォードが暫定王者のエニスとの交渉を始めるように手紙を送った。交渉は9月24日までに終えることになっていた。9月22日にIBFは、クロフォードの代表を務めるハリソン・ホワイトマンからメールを受信。スペンスvsクロフォード戦にはダイレクトリマッチの合意条項が含まれ、それをスペンスが、すでに施行したことが示されていた。そのため、クロフォードはエニスと交渉することはできない」

 WBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者・井上尚弥(大橋)とも、PFP上位を争っていたクロフォード。2階級での4団体統一という功績と、彼の圧倒的な強さに汚点が残るわけではないが、今回の騒動はあらゆる構想を練っていたであろう陣営にとっては手痛い出来事となりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

井上尚弥と“世界最強”を争うクロフォードがIBF王座剥奪に 暫定王者との対戦義務を果たせず「スペンスとの再戦条項があり」