11月10日から上演がスタートした、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』 ~One More Time~にシナモロール好きの男子・源誠一郎役で出演中の上山航平。サンリオ作品との縁も深い上山に、俳優デビューしてからの約5年を振り返りながら、自身の原点や俳優としてのターニングポイントや印象に残っている先輩俳優のエピソードなどを語ってもらった。

【写真】アンニュイな表情でこちらを見つめる上山航平

■俳優としての基礎を学んだ“メモミュ”は「自分の原点」

――まずは芸能界を目指したキッカケから教えてください。

僕は小1から中3まで野球をやっていたんですが、高校入学のタイミングで辞めてしまったので、他になにか熱中できるものはないかと探していたんです。通っていた高校は一般の学校でしたが、クラスメイトや先輩たちの中に芸能活動をしている人が多くいて、いろいろと話を聞いているうちに面白そうだなと興味を持ち始めました。

でも、オーディションを受けても最初はまったく受からなくて(笑)。それでも諦められなかったので養成所に1年間通って、高3の頃に前の事務所に所属しました。

――オーディションになかなか受からなかったとのことですが、そこで諦めるのではなく養成所にまで通ったというのは、芸能界への熱意がかなりあったんですね。

そうですね。僕は小2から小5までの間、ブラジルに住んでいたことがあるのですが、ブラジルでは日本のNHKだけ観ることができたんです。ブラジルが夜のときに朝ドラが放送されていたのでよく観ていましたし、動画サイトなどでも日本の映画やドラマを観ていました。だから、幼い頃から無意識に芸能界へ憧れは持っていたんだと思います。

ただ、芸能界って自分とは遠い世界の話だと感じていた面もあったので…。周りに芸能活動をしている人たちがいたことで、頑張れば目指せる世界なのかもと思えたのかもしれないです。

――俳優デビューしてから5年ほど経ちますが、舞台の仕事の魅力はどういうところに感じていますか?

俳優として活動するまで舞台を観る習慣がなかったので、舞台の仕事はすべてが初めてのことだらけでした。上手(かみて)、下手(しもて)という舞台特有の用語を勉強するところから始めたくらい。最初は稽古期間の長さに驚いたりもしましたが、舞台はナマモノでまったく同じ公演というものがなく、公演によってお客さんの反応も違うので、そういう部分がおもしろいなと思っています。

――舞台の基礎知識から学んでいったとのことですが、それこそデビューまもないタイミングでご出演されたサンリオピューロランドのロングラン作品「MEMORY BOYS〜想い出を売る店〜」(以下“メモミュ”)は初めてのことだらけだったのでは?

そうですね。“メモミュ”には9カ月ぐらい出演していたんですけど、同じ公演をずっとやり続けていくということで、正直、マンネリ化してきてしまうときもあって。毎回新鮮な気持ちで演じるにはどうしたらいいんだろうと、自分で考えたり周りのスタッフさんに聞いたりしたんです。そこから「相手のお芝居をちゃんと受けて反応する」という、俳優をやる上で大前提のことを意識するようになったんです。

俳優としての基礎や人前に立つ人間としての自覚や大切なことを教えてもらった“メモミュ”は、間違いなく自分の原点です。

■須賀健太の言葉で奮い立ち「ますます頑張ろうと思いました」

――“メモミュ”で基礎を学び、その後さまざまな作品にご出演されてきたこの5年間の中で、一番大きな出来事をあげるとしたら?

劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演です。僕はもともと須賀健太さんが主演をやられていた演劇「ハイキュー!!」を観ていて、そこから原作を好きになったんです。こんなに面白い作品があるのかと驚きましたし、舞台上でこの作品を表現できるんだという衝撃もあって、いつか自分も出演したいと思っていました。だから、劇団「ハイキュー!!」への出演が決まったときは本当にうれしかったです。

――劇団「ハイキュー!!」では、長年、演劇「ハイキュー!!」を引っ張ってこられた須賀さんが演出を担当されましたね。

まさか須賀健太さんに演出をつけてもらえるとは思っていなかったので、最初に聞いたときはとても感動しましたし、稽古が始まる前から健太さんの言葉は全部吸収しようと思っていました。そもそも健太さんは役者なので、役者ならではの視点でアドバイスをくださっていましたし、“劇キュー”はとても自主性を問われる現場でもありました。

ひとつのシーンをとっても、「自分たちだったらどう演出するか考えてみて」と健太さん言われて、それを3人1組になって考えて発表して、健太さんや他のスタッフさんたちがいいと思ったものが本番で採用される、という作り方をしていたんです。演出を考えることは今までにない経験でしたし、“自分も舞台を作っているひとりなんだ”という自覚と責任感を学ぶことができたと感じています。

――須賀さんとは現場でどのようなやりとりをされていたのでしょう?

健太さんは役者のことを本当に細かいところまで見て、アドバイスをしてくださっていました。僕たちの挑戦する姿勢を褒めてくださるし、いいものは採用してくれるので、役者側からしたら挑戦しやすい空気感を作ってくれていましたね。

千秋楽のあとにカンパニー全員の前で挨拶をしてくれたとき、健太さんが「今回は演出という立場だったけど、次は絶対共演しような!」と言ってくれて、それが本当にカッコよかったんです。いつか共演したいとはもともと僕も思っていましたけど、ご本人からそう言ってもらえたことで、ますます実現できるように頑張ろうと思いました。

――ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』 ~One More Time~にも出演されていますし、サンリオキャラクターと縁がありますね。

ご縁しかないですね(笑)。先ほども言ったように“メモミュ”が僕の原点なので、“サンリオ男子”に出演できると聞いたときもめちゃくちゃうれしかったです。“メモミュ”ではマイメロディと一緒に公演をやらせてもらっていたのですが、まだ俳優としての経験が浅かった僕を導いてくれた存在だったので、マイメロディのことは“マイメロディ師匠”という感覚です(笑)。今作の“サンリオ男子”をしっかりと盛り上げていくことによって、サンリオキャラクターたちへ恩返しができたらいいなと思っています。

――役どころとしてはシナモロール推しの男子を演じられますが、もともと推しキャラはいたのでしょうか?

今はシナモロールを推していますが、もともとはウィッシュミーメルですね。“メモミュ”の1周年イベントのときに、サンリオキャラクターが一人ずつ描かれたTシャツを着ることになったんですけど、そのときに僕が着たTシャツがウィッシュミーメルちゃんだったんです。

ビジュアルもめちゃくちゃかわいいなと思いましたし、そのあとピューロランドに行ったときにウィッシュミーメルが出演するショーを観てもっと好きになりました。

山田孝之に憧れて芸能界へ「いつか共演できたら」

――幼少期から映画やドラマが好きだったとのことですが、憧れの俳優さんはいますか?

山田孝之さんです。高校時代、山田さんの出演作を全部観ていたぐらい好きで。僕自身が野球をやっていたこともあって、ドラマ「H2〜君といた日々」(2005年、TBS系)が特に好きな作品です。若い頃は王道のイケメンだったけど、年齢を重ねれば重ねるほどワイルドになられて、役の幅も広い方ですし、僕もいつかは山田さんのようにさまざまな役に対応できる俳優になりたいと思っています。

――最後に、現在ご自身の課題だと感じていることを教えてください。

課題だらけです。最近の2.5次元作品では歌とダンスを求められることがほとんどなので、芝居もそうだし、歌、ダンスについても底上げしていかないといけないなと。そもそもの芝居も、僕はこれまでクールな役を演じることが多かったので、それとは正反対の自由奔放な役や悪役にも挑戦して経験値を上げていきたいです。

――課題を掲げ、それを改善していくことは簡単なことではないと思いますが、活動のモチベーションになっていることはありますか?

もちろん簡単ではないですが、まだ経験が浅いからこそ自分には伸びしろがあるとポジティブに考えています(笑)。そして、モチベーションというか僕の俳優としての最終目標は、「アナザースカイ」に出演してブラジルに行くこと。ブラジルの地で、「ここが僕のアナザースカイ」と言えるように頑張っていきたいです。

◆スタイリスト=齋藤良介、ヘアメーク=田中宏昌、取材・文=榎本麻紀恵

上山航平/撮影=岡本武志