自衛隊や各国の軍隊が運用している偵察機や観測機は一見すると同じもののように見ますが、実は使い方に違いがありました。しかも今後は、人が乗らないようになるかもしれません。

「観測」って何を見ているの?

自衛隊や各国の軍隊には、相手側の情報を収集する「偵察機」のほか、ほぼ同じ機種を用いた「観測機」という航空機が存在します。近年では無人機の進出も著しい分野ですが、いったい何を「観測」するのでしょうか。

そもそも、厳密にいうと偵察機と観測機は違います。前者は攻撃前に相手方の状況を確認する任務に用いられるのに対し、後者は攻撃中に用いられます。その任務は「弾着観測」、つまり撃った砲弾がどこに着弾したかを確認しているのです。

戦車に搭載されている砲は射程が数kmと比較的短く、目標を直接視認して照準・射撃するのに対し、りゅう弾砲などの野砲や艦船に搭載された艦砲の場合、その射程は20km以上にもなります。ここまで長距離になると目標は地平線(水平線)の向こう側となり、直接見ることはできません。

また、砲弾が長距離を飛翔する間は、風など気象条件の影響を受けて弾道が徐々に逸れていきます。このため、野砲や艦砲では1回で目標を捉えることはできず、段階を踏んで照準と目標とのズレを修正していく作業が必要となります。目標に接近し、弾着点を修正する基準となる情報を上空から提供するのが、観測機の役割です。

そのため、偵察機には操縦士のほか、偵察員と呼ばれる人員が同乗して任務にあたりますが、観測機では砲撃の専門家(砲兵/特科隊員)である観測員が搭乗します。砲の弾道特性を知る観測員は弾着点を観測し、どれくらいの修正が必要なのかを的確に伝達することで、より効果的な砲撃を可能にするのです。

ヘリから無人機へ 外国製も積極導入

陸上自衛隊では、1969年より小型のOH-6ヘリコプターを観測機として採用し、改良を加えながら長年運用してきました。本来ならOH-1偵察ヘリコプターが後継機となる予定だったのですが、調達価格が高騰したために量産機は34機で調達が打ち切られ、OH-6全機を置き換えることができませんでした。

2020年にOH-6が全ての部隊から退役したため、155mmりゅう弾砲FH70や99式自走155mmりゅう弾砲を運用する特科部隊では2023年現在、主に汎用ヘリコプターUH-1JやUH-60JAを観測任務に充当しています。

弾着観測の任務は危険が伴うため、世界的に無人機の採用も進んでいます。陸上自衛隊では2001年より、富士重工(現:SUBARU)製の小型無人ヘリコプターをベースにした遠隔操縦観測システム(FFOS)の調達が始まり、後に改良型である無人偵察機システム(FFRS)の調達へとシフトしています。

ほかにも、狭い範囲での偵察・観測用としてカナダのエリヨン社製小型無人機、JDXS-H1(スカイレンジャーR60)が2017年頃から少数ずつ調達され、部隊での評価試験が重ねられています。

これら以外にも、陸上自衛隊では無人機の導入を推し進めていることから、将来的には有人の観測機は基本的に廃止され、無人機が主役となっていくのかもしれません。

陸上自衛隊のOH-1観測ヘリコプター(画像:陸上自衛隊)。