クリスマスを翌月に控え、婚活パーティーが盛況だと、結婚相談所を運営している知人から聞きました。パーティーで成果がなかった人が結婚相談所に入会するケースが多くなるため、11月は年間を通じて書き入れ時とのことです。

 実は筆者は、コロナ禍の2020~2022年の間、結婚相談所に2年ほど在籍していたことがあります。また、大手結婚相談所「ツヴァイ」のマッチングシステム「結婚EQ診断」(現在はサービスを終了)を監修した経験があり、婚活市場をある程度、知っています。そこで、今回は結婚相談所のシステムや実態について、解説します。

入会時に公的書類が必要

 まず、結婚相談所のシステムについて、簡単に説明します。婚活希望者が結婚相談所に入会する際は、戸籍抄本や納税証明書、給与明細、卒業証明書、誓約書などの提出が必須です。そのため、一般的なマッチングアプリにありがちな、年齢や経歴などの詐称ができない仕組みになっています。また、月額費について、男女の価格差はありません。

 入会が認められると、会員データが登録されます。その後、パソコンやスマホを通じて、候補者の情報が提供され、お見合いのマッチングを行います。お見合いでお互いに相性が良いと感じた場合、仮交際を行い、結婚をするかどうか判断します。

 ところで、結婚相談所の業界では、複数の結婚相談所で構成される「連盟」と呼ばれる組織が存在します。筆者が在籍していた結婚相談所は、IBJという会社が組織する「日本結婚相談所連盟」に所属していました。

 入会時に登録された会員データは、在籍する結婚相談所だけではなく、連盟内で共有されます。そのため、連盟内の他の結婚相談所に在籍している人とお見合いをすることも可能です。

 当時、在籍していた相談所は、入会金0円、登録料5万円、月額費0円、お見合いセッティング費5000円でした。連盟内の他の相談所の料金を見ると、入会金0~20万円、月額費0~3万円、お見合いセッティング費5000~2万円と、かなり幅広くなっています。会員のデータベースが同じなので、連盟の中でも価格が安い相談所を選んだ方がメリットが大きいと言えます。

 筆者の場合、2年間で申し込みが約600件ありました。その中で、お見合いに至ったのは100件で、仮交際に進んだのが10件です。

 一方、筆者からお見合いの申し込みをしませんでした。なぜなら、申し込まれた側にお見合い場所を設定する優先権があるからです。筆者の場合、事務所があることのほか、ホテルが多く、カフェを予約するのに便利だったため、新宿をお見合い場所に指定することが多かったです。

待ち合わせ場所の選定は慎重に

 お見合いの際は必ず、ホテルのカフェを予約してもらいました。ケーキセットなどをオーダーする必要はあるものの、2人で5000~8000円程度です。お見合いでは、基本的に男性が飲食代を支払うのがルールです。これは必要経費と考えてください。

 間違っても、席を予約せずにお見合いに挑むことは避けなければなりません。土日・祝日のホテルのカフェは、多くの人でごった返しています。待ち合わせ後、カフェに並んだものの、1時間待ちなんてこともざらです。相手を待たせてしまった場合、お見合いが不成立となる可能性が高くなります。

 待ち合わせは、カフェの席のほか、ホテル内のエレベーターの前や生花店など、目印になるような場所を指定される場合があります。

 ただし、婚活業界では「お見合い写真は3割増しが基本」といわれており、結婚相談所に登録されているプロフィル写真は、実物よりもきれいに見せているケースが多いです。お見合いの待ち合わせ場所に行っても、相手をすぐに見分けることができない場合があります。

 筆者もホテル内のエレベーター前で待ち合わせたときに、相手がどこにいるのか分からなかったため、近くにいた人に声を掛けて確認したことがあります。そのため、席での待ち合わせがスムーズといえます。

 なぜ、プロフィル写真を撮影する際は、実物よりもきれいに見せるのでしょうか。プロフィル写真によって、お見合いのマッチング率が高まるためです。マッチングの件数に応じて、相談所にセッティング費が支払われますが、会員数が多ければ多いほど利益が増えます。

 成婚で退会されるよりも、月額費を払い続けながら、都度お見合いをしてもらった方がありがたいと考える相談所は意外と多いです。そのため、最近では相談所が写真の3割増しを推奨しています。

 お見合いの際は、男女ともにスーツを着用するのが定番ですが、筆者はスーツをお勧めしません。なぜなら、自分のプライベートな姿を相手にアピールできないからです。仮交際に発展したときにスーツを着用する人は少ないと思いますし、「お見合いのときと印象が全然違う」ということにもなりかねません。

 そこで、お見合いに臨むときはジャケットを着用しつつ、決め過ぎない程度にした方が無難だと思います。

成婚率は15%程度

 筆者が在籍していた相談所は、料金がIBJの連盟の中では最安値でした。データベースが共通である以上、連盟内の高額な相談所に入る必要はありません。

 高額な相談所はカウンセラーの質が高いことをアピールすることが多いですが、婚活市場では、基本的に人間性などが重視されるため、カウンセラーのスキルによって成婚率が向上するものではないと考えています。

「当社の会員は上場会社の社員8割」「当社の会員は年収1000万円以上が過半数」などの過剰な宣伝を展開する相談所もあります。しかし、このような情報は意味を持たないでしょう。上場企業や年収は、必ずしも結婚の決定要因にはならないからです。

 仮交際の期間は3カ月です。この期間で成婚するかどうかの意思決定をしなければなりません。最長6カ月まで延ばすことは可能ですが、短期決戦であることに間違いありません。

 また、結婚相談所は、会員に対してお互いの家に遊びに行ったり、宿泊を伴うイベントを実施したりするなどの行為を禁じており、違反が発覚した時点で退会扱いになります。

 結局、仮交際に至っても何の話も詰められないまま、終了するケースも多いのです。成婚退会する割合はおおむね10~15%といわれています。ここでいう成婚退会とは婚約のことです。退会後にお互いの家にあいさつに行ったり、詳細を詰めていったりすることになりますが、自分が思い描いていたプランと異なる場合は破談になることも多いです。

 筆者は先述のようにお見合いを100回行いましたが、そのうち相手から断られたのが2回のみでした。一番多いときは、「午前11時半:新宿」「午後1時:渋谷」「午後3時:品川」「午後5時:東京」「午後7時:新宿」といった形で、1日5件のお見合いを行ったことがあります

 しかし、1日に2件以上お見合いをすると、移動時間が気になり、会話に集中できません。お見合いは1日に集中させるのではなく、分散させた方が効率がアップすると思います。

 結婚相談所の会員数の男女比は4対6で、女性の方が多いです。年収が高く、外見に優れた、いわゆる高スペックな男性には申し込みが殺到します。

 なお、筆者はバツイチで、50歳を過ぎてからお見合いに臨みましたが、ハンディをあまり感じませんでした。となると、やはりご縁ということに尽きると思います。婚活に期待してもいいですが、期待し過ぎないことが肝心かもしれません。

コラムニスト、著述家 尾藤克之

結婚相談所の実態は?