モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。11月8日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「国の『基金』の残高16兆6,000億円 政府が見直しへ」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆膨れ上がる国の「基金」 一体なぜ?

国の事業のために設けられたおよそ150の「基金」では、これまでの積み立て総額のうち、使われていない残高が今年3月末の時点で16兆6,000億円に上っています。

こうした基金のあり方をめぐり、河野太郎行政改革担当大臣は、必要性が低いと判断できる「基金」の見直しを進める考えを示しました。

また、岸田文雄首相は10月30日(月)、「基金」について「使用見込みのない資金は速やかに国庫への返納を求める」と話し、在り方を見直す考えを示しています。

吉田:塚越さん、まずは国の「基金」とは何なのか、改めて教えてください。

塚越:基金は、特定の事業に向けて複数年度にわたって貯めておき、必要なときに使うことができる「お金」のことです。単年度の予算計上では難しいなど、見込みが難しい事業のために国が積み立てています。

そもそもは明治政府の頃、凶作のときの困窮者対策で積み立てられたのが始まりとされています。今では国が公募などで選んだ独立行政法人や公益法人に充てられ、他の資産と管理を分割します。あるいは、都道府県市町村に任せる基金もあります。

複数年度にまたがって積み立てるものなので、コロナ対策のような緊急性があるものや、最新の半導体の国産支援、脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)など、中長期的な取り組みでも利用できるのが基金の利点です。

これは利点でもある一方、基金は官庁の外部にあるので、チェック機能が働きにくいです。つまり、適切にお金が活用されない可能性があります。

◆2019年末と比較すると約7倍に

吉田:その「基金」の残高が16兆6,000億円もあるということですが、これはどうしてなのでしょうか?

塚越:まず、「基金の残金」は昨年度末の時点より3兆7,000億円も増えており、コロナ前の2019年度末と比べると、なんと7倍もの規模に膨らんでいます。

一方、政府がおよそ150の基金について運用状況を調べたところ、過去10年間で積み立てられた基金の総額は35兆円。そのうちの8割に当たる28兆円は、コロナの緊急経済対策が相次いだ2020年からの3年間に集中しています。

積み立てられている金額も多いですが、残金も16兆円と多く、特にコロナ期に積み立てて使わなかったお金も一気に増えていることが分かります。これについては、コロナの時期に必要性が十分精査されないまま積み上がって、水ぶくれになっている可能性もあると、内閣官房の担当者は指摘しています。

つまり、規模ありきで膨らませた結果、使い切れないほど残金があるということです。政府はこの秋に、有識者も交えて「行政事業レビュー」をおこない、利用状況等を点検する方針です。

◆国のずさんな管理体制 私たちが“監視”する姿勢を見せる必要性

ユージ:国の「基金」の残高が16兆6,000億円もあることについて、塚越さんは、どうご覧になっていますか?

塚越:考えられないくらい大きな金額ですが、朝日新聞によれば基金が急増している一方で、「休眠状態」、つまり事実上使われていない事業も29あり、これが全体の15%を占めていると報じています。さらに、2022年度末時点でこの29の事業残高は1兆4,000億円にのぼります。

これだけあれば、もっとさまざまな経済対策ができるはずと思うかもしれません。ただでさえ需要がなくて使われていない基金が多いうえ、この29の基金は昨年度の支出がゼロなのにもかかわらず、人件費や運営費などの管理費には、合計5億8,000万円が使われていました。

政府は2006年に基金の基準を閣議決定しており、5年に1回見直して、設置後10年以内で事業を終了するとしています。ただ、省庁は1回手にした基金は手放したくないので(事業を終了させないために)さまざまな理由を述べています。

例えば2012年にできた省エネ関連の設備投資に関する基金は、新規の受付がありませんが、補助金を出した設備がきちんと使われているかをモニタリングする必要があるとして、今も管理費だけ使われているとのことです。これだけ聞くと必要な支出だと思うかもしれませんが、それならば管理費は一般会計から出したほうが、きちんとチェックできるのでは? という政府内の声もあるという感じです。

ユージ:これまでは、基金が適正に運用されているか、チェックしていなかったということですか?

塚越:基金をチェックして、適正に運用する方法論が確立されていないことが問題です。東京新聞によれば、基金が設置された団体が、事業を委託、再委託を繰り返して責任の所在が分からなくなるケースもあるということです。やはり基金の運用に関する法律を制定して厳しくチェックすべき、という指摘もあります。

岸田政権は今回もいろいろな経済対策を出していますが、そもそもその政策がいいのかどうかという議論と同時に、(私たちの税金が)どのように運用されているのかということも、私たち自身もチェックしないと、今回のように無駄な使い方になってしまっている可能性があります。政治家や官僚に対して、私たちが監視している姿を見せていく必要があると思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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11月8日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年11月16日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
国の「基金」残高16兆円以上…なぜここまで膨らんだのか? 専門家が解説