世界各国ではF1と肩を並べるほど人気が高いモータースポーツ「ラリー」。そんなラリーの大会の中でも、世界最高峰と言われる「WRC(世界ラリー選手権)」の日本ラウンド「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が、2023年11月16日(木)~19日(日)に愛知県岐阜県で開催される。

【写真】過去に梅本さんが作成したペースノート。書き方はコドラによって異なるそう

今回の記事では「ラリー」とはどのような競技なのか、そして「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」の楽しみ方について、元SKE48のメンバーで、WRC招致応援団でもある梅本まどかさんにインタビュー。今大会にもコ・ドライバー(ラリー競技においてドライバーとともに車両に乗り込み、走行の手助けをする選手)として参加する梅本さんだからこそわかる、ラリーの魅力や今大会のポイントを教えてもらった。

■「ラリー」ってざっくりどんな競技?

「ラリー」とはモータースポーツの1種。公道などに設けられた「スペシャルステージ」(通称SS)と呼ばれる複数の競技区間をマシンが1台ずつ、1分~3分の間隔を開けてタイムアタックし、その合計走行タイムで順位を競うというものだ。数多くあるモータースポーツの中でも、ラリー最大の特徴といえば“一般道を走る”ことだろう。「SS」は、公園や林道、民家のある一般道などに特別に作られるのだ!

ラリーの語源には「集まる」という意味があり、もともとは中世ヨーロッパの騎士が、領主のもとへ各地から集結する際に競ったことが始まりだと言われている。世界初のラリー大会は1911年モナコ公国で行われた「ラリー・モンテカルロ」。ヨーロッパ各地の都市からモナコ公国へとラリーカーが集結するイベントだった。

■「ラリー」のポイントをわかりやすく解説!

ラリーは世界各地でさまざまな大会が開催されているが、基本的なルールは同じで、複数のSSを走行した合計タイムで順位を決める。ここからは、知っておけばもっと楽しめるラリーのポイントを解説していこう!

■ラリーのマシンはどこを走行する?

前述の通り、ラリーは複数のSSでタイムアタックをする競技。このSSは一般道や公園、河川敷などに特別に作られることが多い。稀に「スーパーSS(スペシャルステージ)」(通称SSS)という、スタジアムなどに特別に設けられたコースを、2台のラリーカーが同時に走行することもある。

そして、SSから別のSSへの移動区間「リエゾン」も競技に含まれる。このリエゾンは、スピードやタイムを競うわけではない。参加者には、リエゾンのルートや給油場所、制限速度や目標時間などが記載されたロードマップが配布され、これを参考に走行する。

競技車両に乗ったまま、一般道を通って次のSSへ移動する「リエゾン」。移動区間とはいえ競技中であることに変わりはなく、時間制限が設定されている。しかしながら、SSのような交通規制は行われないため、競技用のマシンも一般車両に混じって、かつ同じように交通ルールを守って走行することとなる。運がよければ、あこがれの選手を信号待ちで見かける、なんてことが起こり得るのもラリーの魅力かもしれない。

「リエゾンでは、競技車両も一般車両と同じように走行します。停車時に選手の写真が撮れることもあります。また、『頑張って』といった声援も、選手側にはちゃんと聞こえますよ!」(梅本さん)

■ラリーカーはどんなマシン?

ラリーカーは市販車をベースに製作しなければならないと規定されているため、使用されるマシンは普段一般道で見かける車とよく似ている。

例えば、ラリー大会のひとつ「WRC」の最上位グレード「ラリー1」のマシンは、見た目こそ市販車に近いものの、フレームやエンジンをはじめとする各パーツや駆動部、サスペンション形式が変更されており、中身は完全なるラリー仕様。さらに2022年シーズンより、ハイブリッドシステムを備えることも条件に加わった。

「ラリーカーの見た目は市販車と似ていますが、中身はまったくの別物。下のほうのカテゴリになると、本当の市販車も参加しています」(梅本さん)

■ドライバーとコドラの2人1組で乗車

ラリーではマシンの運転を担当する「ドライバー」のほかに、「コ・ドライバー」(通称コドラ)も乗車。コドラは、コースの形状や特徴をドライバーに伝える役割があり、この先に走行する道路の状況を書き込んだ「ペースノート」を読み上げ、ドライバーはその指示に従って運転する。さまざまな道路を走るラリーでは、コドラの存在が非常に重要となる。

「ドライバーとコドラは、事前にコースを下見する『レッキ』という作業を通して『ペースノート』を作ります。コドラは、当日はこれを見ながらドライバーをナビゲートします。いかにドライバーが気持ちいいタイミングで指示を出せるかが、コドラの腕の見せどころです!」(梅本さん)

ちなみに、ラリーにはライセンスさえ取得すれば誰でも出場できる。マシンは市販車を使用するという規定があるので、自家用車で参戦する参加者も。専業ドライバーではなく、趣味でラリーに出場するという人もいるそうだ。

■世界戦が日本で開催「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」

さまざまなルールのラリーの大会がある中で、最も有名な大会のひとつが「FIA(国際自動車連盟)」が主催する「WRC(世界ラリー選手権)」だ。WRCは1年をかけて複数回のラウンドで競い合い、すべての合計点数で順位を決める大会。WRC2023は1月のラリー・モンテカルロからスタートして、全13ラウンドを戦っている最中なのだ。

そして、WRC2023の13ラウンド目が「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」。つまり、フィナーレを飾るバトルが、ここ日本で繰り広げられるのだ!

フォーラムエイト・ラリージャパン2023」の開催日程は、2023年11月16日(木)~19日(日)。観戦エリアとなるSSは「豊田スタジアム」(愛知県豊田市)をはじめ、愛知県豊田市岡崎市新城市・設楽町、岐阜県恵那市中津川市に全16カ所設けられる。

■今大会注目の「豊田スタジアムSSS

今大会、最大の注目SSといえば「豊田スタジアムSSS」だろう。普段はサッカーラグビー競技が行われるスタジアム内の芝生をすべて撤去し、期間限定でコースを新設する。

豊田スタジアムSSS」の見どころは、なんと言っても「デュアルSS」。「スーパーSS」とも呼ばれ、2レーンのマシンが同時にスタートしてタイムアタックを繰り広げる、ラリーでは非常に稀なタイプのSSだ。豊田スタジアムSSSのコースには立体交差や鋭角なカーブのほか、ミニジャンプもあり、間近で大迫力のラリー競技が楽しめるだろう。

デュアルSSはラリー競技でもかなりめずらしいのでおすすめです。基本的にラリーはタイムアタックなので自分との戦いという側面が強いのですが、デュアルSSになると直接相手が見える勝負の要素が追加されるので、どんな展開になるか楽しみです!」(梅本さん)

今大会のメイン会場でもある豊田スタジアムでは、11月16日(木)には1台ずつ競技をスタートするセレモニアルスタート、11月19日(日)には表彰式にあたるセレモニアルフィニッシュも開催。物販やイベントも充実したSSとなっており、観戦しやすいといった点でもおすすめだ。

■「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」の楽しみ方

4日間かけて愛知・岐阜で開催される「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」。ここからは今大会おすすめの楽しみ方を紹介しよう。

■迫力のタイムアタックを観るなら「SS」

一般道を閉鎖してタイムアタックを行う「SS」。本格的にラリー観戦がしたいなら、やはりSSがおすすめだ。各SSには、安全な場所にギャラリーステージが設けられ、目の前を疾走するラリーカーのエンジン音やタイヤ音、砂煙、ドライバーの繊細かつ大胆なテクニックなどを間近で体感できる。

SSは今大会のメイン会場「豊田スタジアムSSS」をはじめ、「鞍ケ池公園SD」「三河湖SS」「岡崎市SSS」など16カ所。SSで観戦するには、各SSごとに販売されているチケットが必要となる。

2023年11月8日現在、「豊田スタジアムSSS」や「岡崎市SSS」のチケットなどが販売中。価格は一般発売で「豊田スタジアムSSS」が大人4000円~、「岡崎市SSS」が大人1万3000円~となっている。販売状況など、詳細はチケット公式サイトで確認を!

「これぞ“ザ・ラリー”という迫力満点の走りが観たいなら林道、わかりやすく楽しく観たいなら豊田スタジアムSSS岡崎市SSSでの観戦がおすすめです!」(梅本さん)

■選手やマシンを間近で観られる「リエゾン」

いきなりSSで観戦するのはハードルが高いと感じる人は、まずはリエゾンで楽しむのもいいだろう。リエゾンでの観戦であればチケットは不要で、無料で観ることができる。リエゾンでの応援ポイントや日時については、公式サイトで一覧が公開されているため、これを参考にしてほしい。

リエゾンの中では特にゆっくりと走る区間が決められており、そういった場所であれば選手に手を振って応援したり、マシンを至近距離で観たりすることもできるだろう。

「リエゾンの中でも、岩村本通りの会場や、豊田市駅前の会場付近は特にゆっくり走るので、そこで観ていればほとんどの選手は手を振ってくれると思います。あとは、交差点などもおすすめですね!」(梅本さん)

■マシンをじっくり観るなら「サービスパーク」

整備を行うために設けられるチームの拠点「サービスパーク」は、マシンをじっくり見たい人におすすめのエリアだ。今大会のサービスパークは、豊田スタジアムに設置される。会場ではサイン会やトークショーなどのイベントも行われるほか、ドライバーやメカニックハイスピードでメンテナンスや修理を行う様子も見られる。

サービスパークが設置される豊田スタジアムに入場するには「豊田スタジアムSSS」のチケット購入が必要となる。また、各チームがメンテナンスを行う「サービスタイム」に観覧を希望する場合、観戦チケットに加えて「サービスパークコアタイム入場券」(1人500円)が別途必要なので注意!サービスタイムの実施時間については、公式サイトを確認しておこう。

「サービスパークは各チームの拠点なので、毎日そこからスタートして、必ず戻ってくる場所です。マシンも選手の出入りも見られると思いますよ」(梅本さん)

■ラリー以外のイベントも盛りだくさん!

今大会のメイン会場となる豊田スタジアムでは「ENJOY! RALLY STADIUM」をテーマに、各種イベントを開催予定。参加するには11月16日(木)~18日(土)は「豊田スタジアムSSS」のチケットが、11月19日(日)は「スタジアム入場券」が必要となる。

大会初日の「オープニングセレモニー」や最終日の「セレモニアルフィニッシュ」「表彰式」はもちろん、ドライバーによるサイン会「オートグラフセッション」や、トークショー「ミート・ザ・クルー」など、ファンにはたまらないイベントが目白押しだ。

このほか、豊田スタジアムSSSの特設コースをカートで走行する「EVカート体験 presented by CITY CIRCUIT TOKYO BAY」や「Kids あつまれ!RALLY縁日」など、子どもから大人まで楽しめるイベントも開催。また、ここでしか食べられないグルメも多数ラインナップする。

開催日はSS・リエゾンともに1分~3分おきにマシンが通るので、1日中楽しめるのもラリーの特徴。SSのチケットが手に入らなかったり、観戦エリアまで足を運ぶのが難しかったりする人は、パブリックビューイング会場での観戦もおすすめだ。一部有料の会場もあるが、ほとんどの会場が無料で利用できる。大型ビジョンでのパブリックビューイングも、迫力満点!詳細は公式サイトをチェックしよう。

梅本まどかさんプロフィール】

1992年愛知県名古屋市生まれ。SKE48でのアイドル時代を経て、現在は地元名古屋を拠点にタレントとしてマルチに活動中。大型二輪免許、国内Aライセンスを取得しており、モータースポーツ関連のメディアにも多数出演。WRC招致応援団に参加し、WRC日本開催をPRしている。「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」には、「ウェルパインモータースポーツ」チームのコ・ドライバーとして、「JRCar1」クラスで参戦する。

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昨年の「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」にも参加した梅本さん(写真左)/写真提供:梅本まどか