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 夢を見ている時、それが夢であると気が付き、夢の中の出来事を自在に操れたことはあるだろうか?そのような夢を「明晰夢」という。

 現在、スタートアップ企業のProphetic社は、この神秘的な体験をいつでも好きなときに味わえるウェアラブル・デバイスを開発している。

 その「The Halo」というデバイスは、着用者がレム睡眠に入った瞬間を検知し、超音波とAIで脳に働きかけ、明晰夢へと誘うのだという。

 それはただ超現実的でスピリチュアルな体験なだけではなく、心に平穏をもたらしたり、創造性を解き放ったりと、目覚めている時のあなたの人生をも豊かにする可能性があるそうだ。

【画像】 神秘的体験を味わえる明晰夢の効果

 明晰夢というスピリチュアルな体験を好きな時に味わえるデバイス「The Halo」を開発するのは、最高経営責任者エリック・ウォルバーグ氏と最高技術責任者ウェスリー・ルイス・ベリーIII世氏が立ち上げた技術スタートアップ企業「Prophetic社」だ。

 自分自身も12歳の頃から明晰夢を見るというウォルバーグ氏によると、それはただ神秘的な体験以上のものであるようだ。

 同氏曰く、空を飛んだり、建物を地面から浮き上がらせたり、夢の登場人物と話したりと、明晰夢は「究極のバーチャルリアリティ体験」とでも言うべきもの。

 そんな現実では考えられない体験を通じて、PTSDや不安といった心の問題を癒し、さらには運動能力や創造性を解き放つなど、さまざまな素晴らしい効果が期待できるという。

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超音波で脳を刺激するウェアラブルデバイス「The Halo」

 現在開発中の明晰夢誘発デバイス「The Halo」の中核となる技術のひとつが、「経頭蓋集束超音波(TUS)」だ。

 この技術は超音波パルスを利用して脳を探り、神経細胞に作用する。

 似たようなものとして、電気や磁気で神経細胞を刺激する方法があるが、TUSはもっと正確かつ深く働きかけることができるという。

 明晰夢を見るための家庭用デバイスは、以前からあったが、それはかなりかさばるもので、実際に明晰夢へと誘われる確率も低かった。

 そしてThe Haloについても、どれほどの性能なのか今の時点でははっきりしない。

 産婦人科のエコーなど、超音波を利用した医療用器具は何十年も前からあるが、それで脳を刺激するTUSのような技術は比較的新しいものだ。

 だが、それで脳や心の問題を解決できる可能性については、「脳を調査する科学的機器としても、その活動を調整する治療器具としても利用できる可能性」があるとする研究や、「うつ病や不安障害のような抑うつ的な気分を特徴とする病気の治療に有効である可能性がある」とする研究があるなど、かなり有望であるようだ。

・合わせて読みたい→明晰夢を見るための科学的テクニック(オーストラリア研究)

 そして肝心の明晰夢へと導いてくれる可能性についてだが、少なくともProphetic社の開発チームは強い自信をのぞかせている。

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明晰夢を見られるデバイス「The Halo」のイメージ図 / image credit:Prophetic

明晰夢の他にも、悪夢を見なくなるようにコントロール

 The Halo自体は、Card79社と共同開発されたもので、現時点では脳波データを読み取ることができる。

 さらに今後1年間で、同じく開発パートナーであるラドバウド大学ドンダーズ研究所と協力してAIモデルを訓練し、超音波による神経活動の刺激によって実際に明晰夢を誘発できるようにする。

 開発チームによると、理想的とするのは、The Halo使用者がそれを身に付けているとほとんど意識することなく、夢にごく自然な変化を引き起こすことだという。

 だがThe Haloの性能次第では、たとえば脳の扁桃体(感情の処理や記憶を司る)を刺激することで嫌な夢を見なくなるなど、夢の感情的な側面もコントロールできると期待されるそうだ。

 また将来的には夢の内容までコントロールし、見たい夢を見られるようにもできるかもしれない。

 実際、レム睡眠中にガンマ波を刺激することで、意識を持ったまま夢を見られるようになったと報告するものなど、それが可能ことを示唆する研究があるのだという。

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Radboud University

2025年に発売予定、本当の人生を豊かにする手助け

 The Haloで本当に明晰夢を見られるようになるのかどうか、現時点では未知数だ。

 それでも、明晰夢を見る方法や、そこで聞いた音楽を現実世界に持ち帰る方法など、夢を現実に生かすためのコツや装置はいくつも考案されている。

 だがここで思い出すのは、映画やドラマの中で語られる夢を操作する技術は、後味の悪い結果で終わりがちだということだ。

 しかしProphetic社は、このような新しい技術の安全性やプライバシーに関する懸念についてはよくわかっており、それらは技術ロードマップの中できちんと扱われている。

 また開発チームによると、将来的に夢の内容を高いレベルでコントロールできるだろうことは、かなり確かなのだという。

 今の時点ではっきりしないのは、それによって心の幸福をどこまで得られるかということだ。

 TUSのような新しい技術が、そうした限界を明らかにし、夢の意味の理解に役立つだろうとのこと。

 現時点でThe Haloは2025年の発売がひとまず予定されている。普段から明晰夢に慣れ親しんでいるウォルバーグ氏は、この技術が人々の夢から覚めた後の人生を豊かにしてくれるよう願っている。

References:PROPHETIC / Scientists Are Researching a Device That Can Induce Lucid Dreams on Demand / written by hiroching / edited by / parumo

 
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自由自在に夢をコントロールできる「明晰夢」を見られるデバイスを開発