SNSで話題となった「〇〇に屈する道路」。何かを避けるように不自然カーブする様を指しますが、リプライにはそのような全国各地の道路が挙げられました。歴史をひも解くと、その理由に迫れます。

全国あちこち大喜利状態!?

2023年11月中旬、SNSで「〇〇に屈する道路」という“お題”が話題になっています。道路が何かの力に“屈する”ように、不自然な線形となっている場所を、全国のユーザーが投稿しています。どのようなところがあるのでしょうか。

京都 烏丸通

京都駅の中央口(北側)を出てすぐ、烏丸通は東本願寺の御影堂門前で屈折します。碁盤の目状の街並みで知られる京都ですが、駅前では早くもカーブが見られるわけです。しばしば「お寺の力に屈した」ともいわれますが、実際のところはどうでしょうか。

明治期、寺の前に市電を通そうと道路は拡幅されますが、参詣者の安全を考慮し、寺が迂回するよう要求。建設費などを負担する条件で烏丸通は東へそらされ、そこへ1912(明治45)年に市電が開業しました。

2023年3月、屈折してできた“三角州”を利用して、東本願寺の前には広場が整備されました。

国道24号とJR奈良線

続いても京都市内から。伏見区内を通る国道24号が、近鉄丹波橋駅の南東側で、JR奈良線に食い込んで緩やかなカーブを描いています。

ただし地図を見ると、奈良線も何かを避けています。それは六地蔵~桃山間の北側にある、伏見桃山陵です。これを避けて桃山駅から隣のJR藤森駅へ向かおうとすると急カーブになりますが、列車が走れる半径で線路を敷設した結果、国道に食い込んでしまいました。

同時に伏見桃山陵のある線路北側が台地になっている点も見逃せません。勾配やトンネルをなるべく避けようとする鉄道にとって、台地の縁をなぞるように建設するのは合理的なことでもあります。

ゲゲゲの鬼太郎 メロディーロード

鳥取県境港市にある米子空港の東側で、『ゲゲゲの鬼太郎』メロディーロードでも知られる鳥取県道47号「米子境港線」とJR境線が、大きく迂回しています。

理由はいうまでもなく、空港の滑走路が突き出しているから。ただし当初からこうだったわけではなく、滑走路の延伸に伴って誕生しました。

延伸は過去2回実施。1回目(1996〈平成8〉年)はターミナルビル建設と並行して行われ、500m延伸で2000mとなりました。続いて大型機就航のため、さらに500m延伸する必要性が生じましたが、この際に道路と鉄道を迂回させて工事を実施。滑走路は2009(平成21)年に供用が開始されました。

貫くとたたりが…?

東名高速道路の起点、東京IC東京都世田谷区)のすぐ南側の側道に、巨木を避けるかのようにぐにゃりと迂回する箇所があります。

道路が曲がっている箇所はガードレールで囲まれ、かつてここに第六天を祀った石祠と、“たたり”の話が伝わるご神木がありました。しかしそのご神木も老木ということで伐採され、現在は切り株が残るのみです。

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神仏が関係する迂回道路は全国各地で見られます。交差点の中に残された地蔵や祠などもその類でしょう。どんなに科学や文明が発達しても、神の力には屈せざるを得ないようです。

東本願寺の前で迂回する烏丸通(画像:Google Earth)。