開場101年目を迎える大阪松竹座の2024年は、1月3日(水)からの『坂東玉三郎 初春お年玉公演』で幕を開ける。そして1月18日(木)からは落語家の春風亭小朝とのコラボレーションでおくる『坂東玉三郎 はるのひととき』を、1月26日(金)からは『坂東玉三郎コンサート 星に願いを』を開催と、踊りに歌にと玉三郎の魅力をふんだんに楽しめる1カ月となる。

1月3日(水)から14日(日)までの『坂東玉三郎 初春お年玉公演』では、口上と、地唄箏曲・胡弓演奏家の川瀬露秋の演奏による舞踊「黒髪」、「由縁の月」を披露する。構成について玉三郎は、案も交えて「お正月の口上と、女方にスポットを当てた解説もします。その流れで「黒髪」になります。12月に歌舞伎座で「天守物語」を上演しますので、(「天守物語」の)富姫で出て、また亀姫の姿にもなって琴を弾くという趣向にしようかと。露秋さんたちの中で琴を弾き合わせていく予定です。そのあと、大阪松竹座の100年の歴史や僕が松竹座を案内するような映像があって、「由縁の月」となります」と話した。

「黒髪」と「由縁の月」は歌舞伎を発祥とする踊りだ。「「黒髪」は元々歌舞伎から出てきて、長唄から地唄になっていきました。「由縁の月」は「吉田屋」で歌われる長唄が地唄になりました。『初春お年玉公演』は、歌舞伎に出てくる作品が地唄で踊られるということになります」

坂東玉三郎 (c)松竹

坂東玉三郎 (c)松竹

1月18日(木)から20日(土)は『坂東玉三郎 はるのひととき』。玉三郎の歌を交えながら春風亭小朝の人情噺「越路吹雪物語」を上演する。「5年程前に、小朝さんが楽屋へお訪ねくださいまして、何か一緒にやりたいと言っていただきました。あまり深い話ができないまま別れたのですが、その時に「越路吹雪物語」をやりたいと仰ったんです」と振り返る。

そんな経緯もあり今年7月に南座で上演した『夏のひととき』で小朝と相談し、『はるのひととき』の演目として「越路吹雪物語」を披露することが決まった。

「僕は越路さんの影というイメージで、落語の中に歌が入っていく構成になっております。ピアフの歌など数曲の歌唱を考えています。「越路吹雪物語」はもともと、アコーディオンだけで上演されていたそうですが、今回はピアノとシンセサイザーが入ります。小朝さんは洋服とのことで、僕も洋服で登場する予定です」

そのほか、小朝の落語「芝浜」と、玉三郎による地唄舞「雪」も披露する。「関東の役者が関西で地唄を舞うというのは大変僭越なのですけれども、地唄舞はお座敷あるいは小さな空間でできてきた芸術で、武原はんさんが劇場でも上演されました。動きが少ない中で音楽に乗って情緒纏綿とする空気が劇場に流れていく。長唄の歌舞伎舞踊と全く違った、凝縮された中での魅力があると思います」と語る。

共演する小朝については、「何でも受け入れてくれるので、南座の『夏のひととき』でも、どんどん導いてくれて、すごく助かりました」とし、スポンジみたいな人と称する。

坂東玉三郎 (c)松竹

坂東玉三郎 (c)松竹

1月26日(金)~28日(日)の『坂東玉三郎コンサート 星に願いを』では、ピアノ、バイオリンビオラチェロコントラバスというバンド編成でおくる。「いつもセットリストがなかなか決められないのですが、今、考えているところでございます。タイトルが『星に願いを』ということですから、星に関わるものを数曲、あとはこの10年間、歌わせていただきましたものを並べていきたいと思っております」

大阪松竹座の新たな試みとして、この3公演は特別な料金設定になっている。「映画より安い」という触れ込みがぴったりな、1,500円という席も用意されている。まだ大阪松竹座に来たことのない人を呼び込みたいという切なる願いが込められたこの試みに、玉三郎も賛同。「3公演とも来てほしい」といざなう。

「いろんな方に来ていただきたいということで、後ろの席は来やすい値段を設定されております。今、世の中の状況が厳しいじゃないですか。そういう中で、足を運びやすい公演があってもいいんじゃないかと、大阪松竹座さんとしても決断されたのだと思います。私みたいなものが新しい試みをすることによって、先々もこういうことができるのではないでしょうか。お客様のことを考えてやらなければならない時代でもあると思います」

大阪松竹座は前身の映画館から見ていると玉三郎。「(松竹創始者の)白井松次郎さん、大谷竹次郎さんが、この様式の劇場をミナミに作ったということに感動しました。新しくなって、片岡仁左衛門さん襲名から何度も出演させていただいて、非常にいい空間でもあります」という。

「僕たちは(観客に)「観てよかったわ」と思って帰っていただくことが基本です。極めて「来てよかった」と思っていただけるものを作ることが僕たちの責任です。これから何をお客様に提供していくか、楽しんでお帰りいただくためにどうしようかと今、考えているところです」と玉三郎。101年という新たな時代を刻む大阪松竹座の第一歩となる新春公演を前に、観客が楽しめるものを作りたいと更なる意欲を見せた。

取材・文=Iwamoto.K

坂東玉三郎