高速道路の新たな通勤割引として石川県で試行されている「フリータイム通勤パス割引」が効果を上げているようです。政府の経済対策にも位置付けられ、全国に拡大する見込みです。

石川県で試行中「フリータイム通勤パス割引」の効果

国土交通省は2023年11月10日、道路政策を話し合う有識者審議会「第60回国土幹線道路部会」を開催。高速道路の料金施策などが議論され、そのなかで石川県内の北陸道にて試行中の新たな割引施策「フリータイム通勤パス割引」の導入効果が発表されました。この割引は「平日朝夕割引」の見直し案として試行されているもので、今後、全国に拡大する見込みです。

これは、事前登録で指定した区間の利用料金を、月初から月末までの1か月間、曜日や時間帯にかかわらず、最大50%割り引く制度です。今年春から石川県内の北陸道で開始され、7月には対象範囲が県内全域に拡大しました。

全車対象の一律割引ではなく、指定した区間で利用できるETCのフリーパス商品として販売。このため、鉄道などの通勤定期に似通うところがあります。

たとえば片山津IC~金沢東IC間の場合、10回分の利用額に相当する1万3200円(普通車)で販売され、その2倍にあたる2万6400円が利用可能額とされます。利用可能額を超えた分の利用も、50%引きとなります。ただし、同日内の4回目以降の利用については、割引適用なしの通常料金が別途請求となります。

つまり、「10回分(5往復分)の通行料金を事前に支払えば、1日3回までは、月末まで同区間内を毎回半額で利用できる」ことになります。適用は24時間です。なお、1日3回というのは往復の2回と、買い物などでもう1回利用できるようにしてあります。

この「フリータイム通勤パス割引」は、かつてのETC専用「通勤割引」を代替した「平日朝夕割引」の見直し策として位置付けられています。

平日朝夕割引は、平日朝6~9時、17~20時(各時間帯に1回のみ)における地方部の高速道路(東京・大阪近郊は対象外)の料金を月の利用回数に応じて約30~50%割り引くもので、今回のように区間指定はありません。また、割引は翌月20日にETCマイレージサービスの還元額(無料通行分)として付与され、マイレージサービスへの登録も必須です。

しかし、コロナ禍を経て変化した勤務形態の多様化に対応できないうえ、渋滞緩和効果が限定的だと指摘されていました。時間帯に縛られない割引とすることで、混雑時間帯の前後の時間帯へ交通を分散する目的もあります。

地方だからこそ? 一般道の混雑緩和にも

審議会では石川県内における試行結果も明らかにされました。毎月500人以上の利用者が活用し、その約9割が通勤目的での登録。1ユーザーあたりの利用回数は平均で「ひと月30回」と、多くの人で従来より利用回数が増加、それでいて利用時間の分散効果も見られたといいます。

混雑する一般道に代えて高速道路に転換し、通勤時間を10~15分短縮できたという人のほか、朝だけ高速道路を使っていたのが、帰宅時にも利用するようになった人が多いそうです。夜間や日中の利用も増加しています。

ユーザーからは、「いろんな時間帯で仕事をしているため、今回のフリータイムの割引制度はとても有用です。ありがたいです」といった声もあるといいます。

この制度をベースにした高速道路の新たな通勤割引については、政府が11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に盛り込むことを発表しています。2024年4月から全国の複数エリアで試行を開始し、2026年度中には、現行の平日朝夕割引に代えて本格展開される見通しです。

高速道路の通勤割引の見直しが行われている。写真はイメージ(画像:写真AC)。