東芝ブレイブルーパス東京が本気で頂点を狙いに行く。初年度は4位、2シーズン目は5位、そして勝負の3シーズン目となる『NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24』で優勝するためにチームは万全を期す。11月13日のBL東京定例記者会見でトッド・ブラックアダーHCは勝利のために変化と新しいリーダーが必要だと説いた。

トッド・ブラックアダーHC

「今季大きなチャレンジを目の前にしている。昨季は期待した通りの結果を得られず、非常に悔しいシーズンに終わってしまった。シーズンが終わってから今日まで多くの課題克服に取り組んできた。1位になるためにまず最初に自分たちが変わらないといけないと考えた。適切なプランと適切なプロセスを構築して、それに基づいて動いてきた。
次のステップとして必要な行動を起こすため新しいリーダーを選んだ。チーム全員がリスペクトして背中を見て付いていきたくなるリーダーが必要だった。今季キャプテンにリーチ マイケルを任命できてうれしく思う。リーチはチームを愛し、彼自らの行動でみんなを引っ張っていける。バイスキャプテンは原田衛がなる。彼はリーダーシップのポテンシャルをものすごく秘めた若者。彼もリーチともに背中で引っ張れるリーダーである。チームに変化が必要で、一番変化をもたらすことができるリーダーと言える。
リーグワン』では各チームが補強し、楽しみ。このリーグは毎年レベルアップしているが、我々にとっていいチャレンジ。ここまでプレシーズンを通してやってきたことをシーズンに出すことが楽しみだし、開幕戦のヤマハ(静岡ブルーレヴズ)戦をターゲットにタフな時間を過ごしきた。開幕へ向けて残り2試合のトレーニングマッチは非常に大事。今週末(11月18日(土)・東京)サントリー(サンゴリアス)戦である程度メンバーを固めていきたい。次(11月25日(土))のクボタ(スピアーズ船橋・東京ベイ)戦もそう。開幕戦を万全な状態で戦えるようしっかり準備していきたい。ここから開幕までの数週間、すごく大事な時間になる」

指揮官は今季のスローガンについて言及した。
「『BE THE ONE』というスローガンを掲げてシーズンに臨みたい。チーム内でモチベーションの基盤となる言葉だと考えている。『BE THE ONE』という言葉にはいろんな意味がある。チーム内で共有しているのは、そのひとりに自分がなろうという意味。誰かにインスピレーションを与えられるような選手に自分がなろう。自分の才能を表現するひとりになろう。スキルを発揮するひとりになろう。タックルでもキャリーでもトライでもどんな局面でも自分を出せるひとりになろう。チームの中で自分の役割を遂行するひとりになろう。チームのためのやるべきことをやり切る、全員がそれぞれの役割を全うしてひとつのチームにまとまろうと。今季は『BE THE ONE』というスローガンを目にする機会も増えるだろうが、色んな意味を持たせてチームとして使っていきたい。『ラグビーワールドカップ(RWC)2023』でもひとつふたつの局面が試合を決めるのを見てきたことだろう」

リッチー・モウンガ(2023年1月6日撮影)

『RWC2023』で準優勝したニュージーランド代表のFLシャノン・フリゼルとSOリッチー・モウンガというふたりのビッグネームを今季補強した。ブラックアダーHCはふたりへの期待を口にした。
「先週末、リッチーとフリゼルがやって来た。今週に関しては新しいチーム、新しい環境に慣れる時間にしてほしい。今週のサントリー戦には出場させない。ゲームはクボタ戦と考えている。とにかくスコッド全員が揃ってうれしく思う。
私の期待は選手によって変わるものではない。チームに合流し、毎週毎週彼らのベストを尽くすことを期待している。非常にシンプル、毎日毎日、毎週毎週ベストを見せてほしい。とくにモウンガとフリゼルにはチームを引っ張ってほしい。まずはフィールド上の行動で引っ張ってほしい。ふたりは世界でベストな選手だと思う。彼らがなぜベストでいられるか、なぜベストに上り詰めることができたのかを示してほしい。チームメイトに対してどうスキルを身に付けたのか、どう準備するのか、どうリカバリーするのか、どうプレビューするのか、どうレビューするのか、示してもらえればと思っている」

モウンガとフリゼル以外にもニュージーランド代表主将サム・ケイン(東京SG)にSHアーロン・スミス(トヨタヴェルブリッツ)、FBボーデン・バレット(トヨタV)、世界最優秀選手に輝いたアーディー・サヴェア(コベルコ神戸スティーラーズ)に南アフリカ代表のトライゲッター・チェスリン・コルビ(東京SG)など、新たな大物たちが今季も『リーグワン』に続々参戦するが、金銭以外にも理由があるとブラックアダーHCは解説した。
「お金ももちろん一部の理由だが、すべてではないと思う。自分自身ニュージーランドからスコットランドへ移籍した際、違う環境でプレーしてみたいと思った。リッチーはクルセイダーズでずっとプレーし、何回もタイトルを取ってきた。新しい環境や新しいラグビー、新しいルーティンを求めていたと思う。『リーグワン』のコーチの質は『スーパーラグビー』より高いと言える。インターナショナルレベルのコーチはたくさんいる。お金だけではない。質の高いリーグだから、選手たちは『リーグワン』を選んだのだと思う」

ジョネ・ナイカブラ

日本代表として『RWC2023』を戦ったFLリーチマイケル、WTBジョネ・ナイカブラ、LOワーナー・ディアンズも会見に登壇。次のようにフランス大会を振り返り、『NTTリーグワン2023-24』への意気込みを語った。

リーチ「『RWC』は結果的にすごく悔しい結果になって、終わってから達成感が全く生まれない4週間を過ごしてきた。ここから世界の壁を上るため、まず個人を強くして、『リーグワン』で活躍したい。今年スーパースターがたくさん『リーグワン』へ来るのを楽しみにしている。その中でトップレベルの選手にアタックして、タックルして自分も成長したい」

ナイカブラ「『RWC』はいい経験だった。結果は残念だが、いいこともあった。新シーズンをがんばりたい。
新しく加入したふたりの選手と一緒プレーすること楽しみにしている。いいシーズンにしたい」

ディアンズ「『RWC』で自分のしたいラグビーがなかなかできなくて、ケガの影響もあり、結果も出なかったが、それも経験してよかった。
リーグワン』に向けて、自分が足りないところ、整理しないといけないところを身に付けて、今季いいパフォーマンスを見せられるようがんばりたい。新しく入ったふたりとプレーを楽しみにしている。よりアタッキングラグビーができると思っているので、すごく楽しみ」

3人は3様の「BE THE ONE」を明かした。
リーチインスパイアという言葉をイメージしている。多くの人にインスパイアさせる選手になることをイメージしている」

ナイカブラ「僕にとって『BE THE ONE』はチームに信用される人になること」

ディアンズ「自分にとっての『BE THE ONE』は自分をベストにする、自分がベストを出せるよう、チームのために自分のポジションでベスト、一番を出すという風に捉えている」

リーチは主将返り咲きの経緯について明かした。
「シーズンが終わった後に『キャプテンをやらないか』と言われて、即行断った。若い選手、衛がやった方がいいと言ったが、それでも最終的に頼まれて。ラインアウトのリーダーがいて、スクラムのリーダーがいて、アタックのリーダーもいるので、シンプルにパフォーマンス重視でやりたいと考えた。多くのニュージーランド人スタッフがいて、どう選手がコネクトしていくかを考えて受けた。でも練習中はしゃべらずにやっている」

『RWC2015』『RWC2019』とラグビー日本代表のキャプテンの印象が強いリーチだが、BL東京での主将は2013-14の1シーズンのみ。当時をこう回顧した。
「10年前キャプテンを初めてやって、若くて何もわからずキャプテンやった。その後東芝が強くなったり、弱くなったり、いろんな経験して、スタッフと選手の間のことも経験し、日本代表のキャプテンも経験して、ここまできてただただ勝ちたい気持ちが一番強い。キャプテンになって自分の中で責任が変わってきて、いろいろ変えていきたい。HCが言った通り、べらべら話したくない。プレーも東芝らしいプレーをしたい。しゃべる人はたくさんいるので、べらべらしゃべらずプレーで見せたい」

リーチオールブラックスのふたりへの期待をこのように語った。
「モウンガにはゲームコントロールを期待している。アタック、モメンタムの使い方をすごく期待している。フリゼルにはボールを持って前へ出ることを期待している。ディフェンスでもアタックでもどんどん前に出てほしい。一緒にやるのを楽しみにしている。モウンガは若い10番にいろいろ指導してほしい」

リーチは4度目の『RWC』を経て、さらに向上心を燃やしていた。
「トップのトップでやったらコンタクトの強さ、60分からのコンタクトの強さを感じ、そこが足りないと感じた。どうやったら強さを出せるか、年々どう身体を作っていくか、佐藤(義人トレーナー)さんに相談して、あと東芝のS&Cコーチに相談した。(RWC)決勝まで行くためのメソッド、最終的にフィジカルだと思う。もう一回原点に返りたい」

また定例会見の冒頭には荒岡義和社長も出席。グラウンド上だけではなく、BL東京のビジネス面での成功も誓った。
「RWCイヤーということで、非常に大事なシーズンだと感じている。どうやれば『リーグワン』をもっと認知してもらえるか。昨季『ラグビーは知っているが、リーグワンを知らない』という人が多いことを感じた。その中でTOKYO MXさんとメディアパートナーシップを締結することになった。東京サントリーサンゴリアスさん、リコーブラックラムズ東京さんとともに東京をホストエリアにする3チームの試合をTOKYO MXさんに放映いただく。このシーズンにしっかり実績を残さないといけない」

果たして、BL東京はどこまでチーム力を高めてシーズン3年目に突入するのか。『NTTリーグワン2023-24』開幕戦・BL東京×静岡BRは12月9日(土)・味の素スタジアムにてキックオフ。チケットは11月17日(金)昼12時より一般発売。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

東芝ブレイブルーパス東京対静岡ブルーレヴズ NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 DIVISION 1のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11027036

(写真左より)ジョネ・ナイカブラ、リーチ マイケル、ワーナー・ディアンズ