広い面積の中に多面的な魅力を持つ大田区。今回はそんな大田区の住みやすさに関するデータを大公開します。街の特徴や気になる治安、子育て・買い物・娯楽環境などを詳しく解説します。

【関連記事】 東京のド真ん中「東京都千代田区」住みやすさをガチ評価【データで紐解く東京⑤】

大田区の基本データ

23区の中で最大の面積を誇り、人口も14区内2位と多いエリアです。高級住宅街、庶民的な下町、工業地帯、史跡など様々な顔を持っている点が魅力のひとつでしょう。

都心からは比較的離れた地域ですが、駅数が豊富で、東京湾多摩川羽田空港などへのアクセスが良好。また、ファミリー層が多いため、昼間人口の割合が他の区に比べて大きいという特徴があります。

大田区の特徴

田園調布のような高級住宅街や蒲田のような町工場の街など、多面的な魅力を持つ大田区。ここでは、そんな大田区のまず押さえておきたい特徴をご紹介します。

東急沿線に連なる住宅地と川と海の水辺空間が同居

23区内で最大の面積であり、住む街の選択肢も幅広いこの地域。区北部の著名な田園調布だけでなく、東急池上線沿線には上池台、南雪谷、久が原、池上など整然とした低層住宅中心の街並みが連なっています。池上には700年以上の歴史を持つ池上本門寺やデイキャンプ場がある本門寺公園もあり、緑も豊富です。

一方、東急多摩川線下丸子駅を最寄り駅とする多摩川寄りのエリアには、特に若い世代に向けた共用施設の充実した大規模マンションが並んでいます。区の中古マンション価格は5,136万円(70㎡換算)と14区内で最も手ごろです

保育サービスアドバイザーの設置で初めての子育てにも強い味方

2016年度からは新たに保育サービス定員の拡充を図っているこの地域。しかし、2017年度4月の待機児童数は、入園申し込みの大幅増に加え、育児休業中の保留児童を加える国の待機児童の定義見直しに伴い、572人と前年度の229人から343人増加してしまいました。このような結果を踏まえて、区は当初の待機児童対策を見直し強化。2021年発表の調査では、ついに0人を達成しました。

2013年10月からは、さまざまな保育サービスの中からニーズに合ったサービスを適切に選択できるよう、保育士が相談、案内、助言をしてくれる「保育サービスアドバイザー」を設置。現場を熟知する保育士が相談にあたるとあって、より具体的なアドバイスが期待されています。

大田区を6つの視点でガチ評価

大田区の治安(★5/3)

人口が多いこともあり、刑法犯認知件数が多いこの地域。しかし、人口当たりの値で考えるとそこまで治安が悪いわけではなく、1000人当たりの火災発生は14区内4位の少なさです。

また、治安の良し悪しは街によっても大きく異なります。高級住宅街として有名な田園調布などの閑静な住宅街と比較すると、繁華街のある駅前などは治安が悪い傾向にあります。住む地域によっては、日頃から防犯対策が必要でしょう。

大田区の子育て環境(★5/3)

継続的な取り組みにより、2021年度に待機児童数0名を達成した大田区。母子健康手帳とともに配布している育児応援券によって、保育サービスアドバイザーへの相談はもちろん、区立保育園の見学や給食の試食体験などを行うことができます。ショートステイトワイライトステイなどの一時保育サービスも充実。

また、約4000もの町工場が集積する特徴を活かし、小学生を対象とした体験教室も頻繁に開催されています。

大田区の医療(★5/1)

人口が多く面積も広い地域であることを考えると、医療施設数・医師数ともに少ない傾向にはあるものの、小児科系診療所数は全国・東京の平均より高い値となっています。

また、区独自の医療費助成があるのが特徴。不妊治療を行っている人や大気汚染の影響を受けると推定される疾病(気管支喘息や慢性気管支炎など)にかかった人を対象とした医療費助成が行われています。

大田区の自然環境(★5/4.5)

東京湾多摩川など水辺の自然環境を活かした公園が点在しているこの地域。東京港野鳥公園では、埋立地に田んぼや雑木林を再現した里地里山があり、工作や生物観察、暮らしの体験などができます。23区内で3番目に広いドッグランを持つ城南島海浜公園ではペットと一緒にバーベキューを楽しむことも。広い敷地を生かした特色あふれる広々とした公園が多いと言えるでしょう。

大田区の買い物・娯楽(★5/3)

区内の買い物や娯楽を語るのに欠かせないのが、国内外へのビジネスや旅行の拠点となる羽田空港。国内外の観光客が楽しめる個性豊かなレストランやショップに加え、展望デッキもあり、飛行機に乗る予定がなくとも満喫できるでしょう。

蒲田駅大森駅前には大きなショッピングモールもあり、日常的な買い物には事欠かない地域と言えます。

大田区の住まい(★5/3)

蒲田や大森・空港臨海部などは再開発が進んでおり、都心や帰省や出張に便利な羽田空港へのアクセスも良いため人気な地域です。特に一戸建ての割合は14区内2位であり、長期的な居住を意識したファミリー層が多い傾向にあります。

一方で、比較的空き家の数が多いという特徴も。ただ、国や都を挙げての対策も進められているので、中古物件の需要も徐々に増加傾向にあります。

大田区の資産価値ランキング2023

※用途区分:住宅地

再開発地域が多く、特に東京湾沿岸のウォーターフロントエリアは、東京オリンピック開催と羽田空港のハブ化に伴って高層マンションや大型マンションの建築ラッシュが続いています。

再開発地域の「蒲田」や「山王」、「大森」などが区全体の地価平均を引き上げているものの、マンション平均価格は新築、中古ともに14区の中では最も安い状況です。

大田区の住みやすい街5選

大田区の中でも特に住みやすい街を厳選して5か所紹介していきます。高級住宅街から昔ながらの門前町までバリエーション豊かなエリアなので、好みに合った街がきっと見つかるはずです。ぜひ参考にご覧ください。

【南蒲田】駅前再開発で生活利便性が向上中の注目の街

最寄の京急蒲田駅からは、京浜急行本線の快特利用で品川駅まで約6分、羽田空港方面もエアポート急行利用で約10分とアクセス抜群なエリア。高架化や再開発により利便性が向上しました。京浜東北線東急池上線東急多摩川線蒲田駅も利用可能圏内であり、2駅で計5路線の利用ができます。駅前や隣接する駅には商業施設も多くあり、その利便性から注目が集まるエリアです。

【地名の由来】

「蒲田」の由来は所説あり。

1.泥深い田という意味で「鎌田」と書くことから由来する説。

2.「飛び越えた場所、沼に浮かぶ島」を意味するアイヌ語の「カマタ」に由来する説。

3.蒲(がま)が生えている田という説。

など。

【田園調布】英国の田園都市がモデルの高級住宅街

大正時代に住宅と庭園が共存するイギリス田園都市を模範につくられた邸宅街。駅前に放射状に広がる道路に沿って街区が構成され、1区画の面積が広いのが特徴です。1926年創立の自治会によって街の環境が維持されており、1982年には景観や環境を守るための独自ルール「田園調布憲章」が制定されました。景観保全を強化し、将来も変わらない住環境を目指しています。

【地名の由来】

1918年(大正7年)以降、実業家・渋沢栄一しぶさわえいいち、1840~1931年)らが設立した田園都市株式会社により「理想的な住宅地」として開発され、「田園調布」と名付けられました。それ以前は「調布村」といい、自生する麻や苧(からむし:イラクサ科の多年草)の皮を玉川で晒し、砧(きぬた:木や石の台)で打って布を作り府中に献上していた。「調」は「みつき」ともいい、昔の税のことで、貢ぎ物として布を献上していたことが村の名前の由来となっている。

【出典】雑学ネタ帳「『田園調布』の地名の由来」

【山王】文人が愛した静かで住みよい邸宅街

かつて志賀直哉、山本有三、徳富蘇峰ら文豪たちが住み、多くの文化人が集まった馬込文土村の一画を成す邸宅街。高台になっており、特に2~4丁目には敷地の低い一戸建てが集まっています。最寄の大森駅界隈には駅ビルや商店街、地域密着型の商業施設「ダイシン百貨店」などがあり、静かな中でも日々の買い物に事欠くことはないでしょう。

【地名の由来】

大森山王日枝神社が地名の由来。日枝(日吉)神社は大山咋(くい)神を祭神としているので、山王ともいう。

【大森北】スポーツやレジャー施設も身近な賑わいの街

京浜東北線京浜急行本線の間に位置するエリア。小中規模のマンション中心に広がっています。京浜東北線大森駅付近には、駅ビルや複合再開発で登場した商業施設が集積。昔ながらの商店街もあり、充実の買物環境と言えるでしょう。街の東側にはスポーツセンターや平和の森公園があり、スポーツやレジャーも楽しめます。

【地名の由来】

大森北の呼称は、住居表示施行時に定められたもので、この地域は大森駅が存在していたものの町外れであり町名も大森の冠称も付けられておらず、旧入新井地区、さらに遡れば旧不入斗地区と旧新井宿地区に属していましたが、相対的位置関係を考慮し大森の北ということから名付けられました。

【参考】Wikipedia「大森北」

【池上】寺院や公園に恵まれた池上本門寺の門前町

大田区のほぼ中央に位置する池上本門寺を中心としたエリア。最寄り駅である東急池上線池上駅前には門前町が形成されています。年末年始などイベント時には多くの参拝客が訪れますが、普段は落ち着いた印象。春にはお花見スポットとなる寺院や公園が多いのも魅力でしょう。池上駅前通り商店街やスーパーなど買い物環境は整っています。

【地名の由来】

諸説あり。

1.かつては「池亀」とも呼ばれ、この一帯が洗足池せんぞくいけを中心とした湿地帯で亀が多かったことに由来する説

2.洗足池の池の端に位置するという地理的な説

3.池上本門寺の起源は日蓮が滞在した池上宗仲の邸内にある「法華堂(ほっけどう)」(行を行う仏堂)といわれており、この地を領していた池上氏に因む説

など。

(※写真はイメージです/PIXTA)