向井理が主演を務めるドラマ「パリピ孔明」(毎週水曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)。同ドラマは、現代の渋谷に若かりし姿で転生した中国三国時代の天才軍師・諸葛孔明(向井)が、歌手を目指すアマチュアシンガー・英子(上白石萌歌)のために魔法のような作戦を考えては、彼女の前に立ちはだかる壁を軍師のごとく切り崩し、成功に導いていくサクセスストーリー。このたびWEBザテレビジョンでは、プロデューサー・八尾香澄氏と、スタイリングを手掛けるBabymix氏にインタビューを実施。孔明をはじめ、英子やKABE太人(宮世琉弥)、前園ケイジ(関口メンディー)などのカラフルで個性的な衣装のコンセプトや裏話、制作にあたって苦労した点などを、プロデューサーとスタイリストそれぞれの目線から語ってもらった。

【写真】「一番苦戦した」ディーン・フジオカ“劉備”の鎧、柔らかい生地を鎧に見せるすごさ(写真全19枚)

■「最初の衣装合わせの時は、諸葛孔明のコスプレ衣装をネットで買ってきて…」

――まず、「パリピ孔明」の作品の衣装を作るにあたって、どのようなことを考えましたか?

八尾:最初に、Babyさんから「一人一衣装にしようと思う」というお話をいただきました。今回の作品では、“このキャラクターと言えばこれ!”というような、一つのベストな衣装を用意するという形が合うんじゃないか、と提案いただいて。その言葉に、私が乗っかった感じです。

結果的には、シチュエーションが違うとき、例えばトレーニング中のミアとステージ上のミアとでは分けたのですが、それ以外は、そのキャラクターを象徴する一つの衣装をそれぞれが着用しています。でも、英子の衣装だけは毎回違うんです。変化していくのはヒロインだけというコンセプトも、Babyさんのアイデアです。

――孔明の衣装はひときわ目を引きますが、どのようなコンセプトで作っていったのでしょうか?

Babymix:資料探しからスタートしました。八尾さんをはじめとしたいろいろな方の知恵を拝借しながら試作を重ねていったのですが、良い衣装を作るには、まず良い生地が必要なんです。良い生地を探していた時に、グリーン系で良いものを見つけることができたので、孔明の衣装はあの色になりました。最初に頭巾の試作品を何パターンか作ってみたのですが、なかなか難しくて。孔明をはじめとする中国系のキャラクターの衣装は、結構悩みました。

八尾:ずっと悩んでいましたよね。最初の衣装合わせの時は、諸葛孔明のコスプレ衣装をネットで買ってきて、重ね着したりしながら何がやれるかを模索しました。結局一から作ることになり、孔明の衣装を作り始めてから完成までは、1カ月くらいかかりましたよね。

Babymix:そうですね。そこから使用感を出したり“汚し”を入れたりして、結果的に現在のボロボロな形に行きつきました。他にも、着物の襟や裾についている羽などのディテール、着物をグラデーションカラーで染めることなどは、特にこだわったポイントです。

向井理“孔明”のシルエットのこだわりを明かす「圧倒的存在感を」

――向井さんだからこそ取り入れたアイテムはありますか?

Babymix:向井さんは何を着ても似合うので、逆に、何でもできるという気持ちがありました。取り入れたアイテムとは少し違うのですが、シルエットを全体的に大きくしました。

八尾:そうですね。向井さんご本人は細くてスラっとしているのですが、今回は袖にボリュームを持たせたり、お腹の部分にいろいろなものを入れたり、肩幅を大きくしたりしました。というのも、英子や他のキャラクターと並んだ時に、圧倒的存在感を放たせたいという狙いがあって。実は、肩には肩パッドが4枚くらい入っています(笑)。大きな頭巾とのバランスも考えて作り込んだサイズ感になっています。

――以前、向井さんが「孔明の衣装は暑さ対策が施されている」とおっしゃっていたのですが、具体的にどのような工夫をされているか教えてください。

Babymix:撮影期間が夏だったので、何枚も重ねている孔明の衣装をそのまま着たら命にかかわるぞと言うことになって(笑)。背中の部分を抜いたり、袖の中をメッシュにしたりと、内側の部分を通気性の良い生地に変えるなどの工夫をしました。

――孔明の衣装の制作費は、やはり結構かかったのでしょうか?

Babymix:制作費についてはお答えできないのですが、時間と手間がものすごくかかっています。衣装を作っている人たちの労力は、金額に比べたら3~4倍です。例えば、下から上にかけてきれいなグラデーションを作るというのは、生地の特性上とても難しかったのですが、何度も手で染めて納得のいくものを作り上げました。

■「どのキャラクターも意見が分かれた」そんな中で“満場一致”だったキャラも…

――孔明以外で、作り上げるのが難しかった衣装やスタイリングはありますか?

Babymix:ネガティブな意味ではなく、どのキャラクターも結構意見が分かれました。

八尾:分かれましたね。でも、ケイジだけは最初から満場一致で、みんなが「あれ以外ないね!」と口を揃えるくらいはまりましたね。

Babymix:ご本人はフィッティングルームの中で「この短さ履くんですか!?」って言っていたんですけど…。「とりあえず履いてみて、嫌だったらやめていいから!」と伝えて着ていただいたら、あまりにしっくりきて、そのまま決まりました。あとは、オーナー・小林役の森山(未來)さんの衣装も悩みましたね。

八尾:最初は、全部ヒョウ柄ってどうなんだろう、という話になりましたよね。衣装合わせはそれぞれ個別に行うので、みなさん自分の衣装の派手さにぎょっとされるのですが、森山さんもやはり全身ヒョウ柄の衣装を見て驚いていて。森山さんから“小林って、さすがにもうちょっと普通のやつじゃない?”という空気が出ているのを感じたりもしました。作品全体のコンセプトを説明して理解してもらい、撮影が終わる頃には、とても気に入っていると言ってくれました。

あと、KABEくんの衣装を決めるのにも結構時間がかかりました。KABEくんはミア西表(菅原小春)やケイジなどに比べると灰汁の強さは控えめなキャラクターではあるので、一回目の衣装合わせのときに、用意されていた衣装がちょっと個性が無さ過ぎるように見えて、どうしたら良いか悩みました。まだキャラクターの輪郭がはっきりしていない衣装というか、他の人のパンチがあり過ぎるがゆえに一人だけ薄味に見えるなと。そこから、彼を特徴づける色や物が欲しいと言う話になり、試行錯誤して今の形が見えた時に、すごくしっくり来ました。

Babymix:そうですね。英子とKABEくんは、等身大に無理なくかわいく見えたらいいなと思って作りました。英子を演じる上白石さんはすごくピュアで、本当にいい子なんです。その爽やかな感じを英子にも活かしたくて、上白石さんの私服のテイストを組み込みました。また、周りがモンスターのような感じなので、英子がニュートラルに見えるように意識しました。加えて、モンスターのような雰囲気にも負けないくらいの屈託のなさを持っているキャラクターだと感じたので、そういう面も表現できるようにこだわりました。

■一番苦戦したのは「ディーン・フジオカ“劉備”の鎧」

また、一から作り上げたものだと、劉備(ディーン・フジオカ)の鎧が大変でしたね。今回、一番苦戦したのは鎧かもしれないです。

八尾:中国の鎧って、まず日本にほとんどないんです。でも、鎧を一から作ってもらうにはすごく費用がかかるので、今回は難しくて。その少ない既存品の中から探してきたものを一度合わせてみたのですが、漢服をあれだけ作り込んでいると、なかなかしっくりこないんです。

とはいえ、鎧をつけているシーンはどうしてもカットできなくて悩んでいたら、Babyさんが京劇の衣装を見つけてきて、「これを改造したら鎧になるんじゃないか?」と。京劇の衣装は柔らかいものなので、その言葉を聞いた時は「この人何言ってるんだろう?」と思ったんですけど、不思議なことに、フィルターを通して見ると鎧っぽく見えるんですよ。

Babymix:京劇の中では鎧として使っているものだから、「パリピ孔明」においての劉備たちの鎧はこれがいいんじゃないか、ということにまとまりました。京劇の衣装では、肩の部分にフリンジがついているのですが、それならもう何でもありだなと思って、劉備の鎧にはそのままフリンジを付けたり、陸遜の鎧にはスタッズを付けたり、いろいろとアレンジしました(笑)。この作品をアートにしたいという僕の思いが詰まっています。

八尾:リアリティーとは少し離れたのですが、作品の説得力となるものを作り上げてくださったので、結果的にすごく上手くいきました。

「パリピ孔明」プロデューサー・八尾香澄氏&スタイリスト・Babymix氏にインタビュー/(C)フジテレビ