今月1日、国際宇宙ステーションの船外で作業をしていたクルーが、船内に戻る際に工具の入ったバッグを落としてしまったことをNASAアメリカ航空宇宙局)が報告した。現在、このバッグは宇宙空間を漂っており、その場所も追跡できているという。双眼鏡などを使えば地球からもそのバッグを確認できる可能性があることを、米ニュースメディア『New York Post』などが報じた。

このほど国際宇宙ステーション(以下、ISS)の船外で作業を行ったのは、NASA宇宙飛行士のジャスミン・モグベリさん(Jasmin Moghbeli)とローラル・オハラさん(Loral O’Hara)だ。2人は船外において、太陽を追跡して発電を行い、ISSに電力を供給する太陽電池の部品を取り替えるメンテナンス作業を行っていた。

この他に、通信用の電子装置を取り外して収容する作業もあったが、船外で活動できる時間が迫ってしまい、この作業は行えなかった。そして6時間42分にわたる作業を終えた2人が船内に戻ろうとした時、工具の入ったバッグが誤って手から離れてしまった。このバッグは2人のもとから遠く離れてしまったため回収することができず、NASAは“紛失した”と報告している。

幸いなことに、紛失したバッグは以降の作業に必要なものではなかった。ISSの外に設置したカメラが宇宙空間を漂うバッグの位置を捉えており、宇宙管制センターがその軌道予測を行った。その結果、今後ISSに接触する危険性は低く、ISSやクルーに危険はないとした。

天体事象に関する情報を掲載しているウェブサイト「EarthSky」によると、このバックは現在、地球の軌道上を移動しているという。バッグは非常に明るく、実視等級(肉眼、またはそれと同様な感度をもつ装置で見た場合の星の明るさの等級)は約6等級とされている。この等級では肉眼で見るには暗すぎるが、双眼鏡を使えば地球からも観測できる可能性があるそうで、バッグが地球の大気圏に入って崩壊してしまうまでの数か月間は観測ができるとされている。

欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士であるメガンヌ・クリスチャンさん(Meganne Christian)は今月5日、自身のXアカウントで、工具の入ったバッグがジャスミンさんの手から離れていく瞬間を捉えた動画を公開した。その投稿には、日本人宇宙飛行士の古川聡さんが、富士山上空を漂っていたバッグを見つけたのが最新の目撃情報であると書かれている。

また、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学ジョナサン・マクダウェルさん(Jonathan McDowell)は、バッグは415×416キロの軌道で地球の周囲を回っていると、自身のXアカウントで説明している。さらに、このバッグはアメリカ宇宙軍の軌道上にある人口物の分類システムにおいて、正式に「58229 / 1998–067WC」と指定・分類されているという。

今回のニュースには、「私もガレージでよく工具を落とすから、気持ちは分かる」「うちの裏庭にでも落ちてこないかな」「ここから陰謀論が生まれそうだ」「双眼鏡で見られるなんてすごい」「イーロン・マスクが回収するかも」など様々な反応が寄せられている。

実は今回のように、工具が意図せず宇宙空間に放たれてしまったケースは過去にも発生していた。2008年、NASAの宇宙飛行士ハイディマリー・ステファニション=パイパーさん(Heide Stefanyshyn-Piper)が、ISSの太陽電池パネルの詰まったギアを修理しようとした時、工具の入ったバッグが手から離れてしまい、地球の軌道に乗ってしまったケースが確認されている。

また2006年には、同じくNASAの宇宙飛行士であるピアーズ・セラーズさん(Piers Sellers)が、宇宙船を保護する熱シールドの補修のため、スライム状の物質をキッチン用品であるヘラを使って塗り付けていた。その際、ヘラがピアーズさんの手から離れてしまい、宇宙のチリとなっていた。

画像は『New York Post 2023年11月13日付「NASA astronauts drop tool bag during spacewalk ― here’s how you can see it」(NASA Johnson/SWNS)(eol.jsc.nasa.gov/SWNS)』『Hindustan Times 2020年11月10日付「Ever wonder what happens when you open a jar of honey in space? Watch to find out」(Reddit)』のスクリーンショット、『European Space Agency, ESA 2012年8月16日公開 YouTube「ESA astronaut André Kuipers’ tour of the International Space Station」』のサムネイル
(TechinsightJapan編集部 iruy)

海外セレブ・芸能のオンリーワンニュースならテックインサイト