エコノミスト・グループが立ち上げた社会変革を実現する事業のエコノミスト・インパクト(本社:ニューヨーク President & Managing Director of Partnership, Claudia Malley)は、世界の主要都市の回復力や強靭性などを調査した報告書『都市のレジリエンス指標2023』を初めて発表しました。調査は、東京海上グループの協賛の下、エコノミスト・インパクトが2023年5月から8月の4か月間にわたり、世界の主要25都市を基幹インフラ、環境、社会組織的ダイナミズム、経済の4つカテゴリーに分類し、対象都市にみられるトレンドや共通の強み、課題、ベストプラクティス特定のために、指数分析と専門家への取材を実施しました。

 本報告書では、世界の都市部はインフラおよび社会的セーフティネットの整備、効果的な政策策定などが不十分なまま、気候変動リスクに対応しなければならない現状が明らかになりました。環境、社会、経済の先行き不透明感が深まる中、世界の都市はレジリエンス強化の必要性を認識しているが、具体的な方策を実行に移すには課題が多いのが現状です。都市レジリエンス構築の鍵は、情報取得の格差是正を通じて、市民を能動的な参加者としてのコミュニティに力を与えることにあると結論づけています。社会的結束を高める努力は不可欠であり、社会的弱者のための統合プログラムに重点を置きます。都市が発展可能な解決策を生み出し、リスクを予測し、進捗状況を効果的に把握できるようにするためには、イノベーションを支援することが極めて重要であることも指摘しています。

日本に関する主要結果

 日本の調査対象都市として東京が選ばれ、都市レジリエンスの総合ランキングでは25都市中8位にランクしました。都民の日常的な移動手段としての公共交通機関の発達、緊急時の対応時間が10分以内であること、大気の質などが評価されました。

 特に暴風雨、洪水、地震などに対する早期警報システム(EWS)の向上のために東京都が最新技術を活用していることが評価されました。加えて、衛星技術を用い災害前後に全自治体に重要情報を数秒で送信するJアラートや早期警報と監視強化による災害救援を提供するためのドローン実験、洪水の危険性を検知することができる河川に設置された太陽電池式のスマートセンサーなども評価されました。2016年の熊本地震で実施された、地元の対応チームが被害の見積もり、リアルタイムの地震推定システムによってすぐに行動することができた事例や、将来の地震リスクを理解するために、日本気象庁は地震の早期警報システム(EWS)も所有し、人工知能(AI)を活用し地震データのパターンを評価していることも日本の評価を押し上げました。

 社会組織的ダイナミズムのカテゴリーでは、日本の備えの文化が災害レジリエンス強化につながっていると言及しました。この備えの文化について、慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授のラジブ・ショウ氏は「日本の防災能力は、テクノロジーだけでなく人によって支えられています。社会に根差した備えという文化は、過去の災害への効果的対応で重要な役割を果たしてきました。」と指摘しました。

 一方で課題も残っており、特にデジタル・シティとサイバーセキュリティに関しては他の上位国と比べて不十分であることが判明しました。ドバイ、ロサンゼルスニューヨークシンガポールなどの評価が高い都市と比べて、東京はネットワーク・セキュリティ監視や攻撃検知、脆弱性の特定に向けたツール活用などへの対応が遅れていることが示唆されています。

世界主要都市の主な結果

  • 都市レジリエンスの総合トップ3位はニューヨークロサンゼルスロンドン

  • 新興国の都市は人口密度が高く、洪水や極暑のリスクに見舞われやすいため気候変更の影響に対する耐性強化が急務。

  • 高所得国の都市であるドバイ、香港、ニューヨークなども気候変動リスクにさらされているが、社会的弱者との一体性を高める包括的プランは十分ではない。

 新興国の都市は、干ばつ、洪水、極暑、海面上昇への対策が不十分であるが、裕福な国の都市においても地球温暖化に関連する将来的な脅威への対策が不十分であることも明らかになりました。特に新興国の都市では、気候変動による影響に対応する都市レジリエンスの強化が急務です。バンコク、香港、ジャカルタ、ダッカなどのアジアの都市は洪水に対して極めて脆弱であることが判明しました。また極暑が社会的弱者に与える影響はさらに深刻化することが予想されており、バンコクカイロジャカルタ、ニューデリーなどの都市はこの事象に対して具体的対策が講じられていないことも明らかになりました。

 大気汚染関連の死亡者は世界全体で年間700万人に上るが、調査対象都市の中でダッカ、ニューデリーの大気汚染が最も深刻でした。両都市の大気汚染物質と温室効果ガスの発生源は同一であるため、この2都市は共同で対策に取り組む必要があります。また、両都市とも交通渋滞管理において評価が低いうえ、ネットゼロ実現への目標や計画がありません。

 メルボルンニューヨークシティ、そしてロサンゼルスは、指数で最も裕福な都市を代表し、環境への強靭さではトップ3に位置しています。最も極端な気候変動の影響に対抗する能力が最も低い都市は、その対策資本も最も少ない都市です。

エコノミスト・インパクト 政策・インサイト部門 グローバルヘッド ジョナサン・バードウェル

 高所得国の都市は、あらゆる災害や危機発生時にも比較的安全だと思われがちだが、そうではないことをこの指数は証明しています。世界で最も発展した国の都市でさえも、社会経済的環境的なリスクに対して脆弱であることをこの調査は明確に示しました。また、この指数は、各都市のどこカテゴリーで格差是正が急務となっているのかを示した最新の評価でもあります。

レジリエント・シティ・ネットワーク プログラム・デリバリー担当グローバル・ディレクター

トリン・ブリューバッハ

 レジリエンス戦略は、自治体職員が机上で策定するものではありません。地域社会の代表や低所得者層や社会的少数者など様々なステークホルダーに議論の参加してもらう必要があります。災害やストレスの種類にもよりますが、最も不利益を被る人々の声に耳を傾けることが重要です。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、ラジブ・ショウ氏

 都市は、現在そして将来においても気候変動やその他のリスクにさらされるホットスポットである一方、様々なリソースも集中しています。そのため、都市のレジリエンス強化は重要であり、それによって市民の安全を高め、ビジネスを含む都市サービスの持続可能性を高めることができます。『都市のレジリエンス指数2023』は、都市レジリエンスを評価する独自の手法を開発し、地方自治体や市民レベルの行動を後押しするものと思います。

報告書とデータストーリーはこちらからダウンロードいただけます。

日本語のホームページ: https://impact.economist.com/projects/resilient-cities/jp/?utm_source=PR&utm_medium=Kyodo&utm_campaign=RCI2023&utm_content=JP

『都市レジリエンス指数』について

 『 都市レジリエンス指数』は、都市の回復力を測定するための世界的な政策ベンチマークツールであり、東京海上グループ協賛の下、エコノミスト・インパクトが作成しました。この指数では、 都市レジリエンスを環境、経済、社会、気候変動を効果的に予測、回避、適応、回復する能力と定義しています。レジリエンスの高い都市は学習とイノベーションに重点を置き、災害などの非常事態から回復し、変化した状況下でも成長し続けることができます。

 この指数は、25都市のレジリエンスを基幹インフラ、環境、社会組織的ダイナミズム、経済の4つのカテゴリーと41のサブ指標に分類し、評価したものです。指数の枠組みは、広範囲のデスクトップ・リサーチと専門家へのインタビューを通じて開発され、定量・定性評価の指標で構成されてい ます。25の指標都市には、アジア太平洋地域の9都市、南北アメリカの5都市、ヨーロッパの7都市、中東・アフリカの4都市が含まれています。データは2023年5月から8月までの4カ月間にわたり収集しました。

 『都市のレジリエンス指数2023』は、ロンドンで開催される東京海上グループ主催のイベントで発表されます。主な調査結果について、エコノミスト・インパクトの政策・インサイト部門のグローバルヘッド、ジョナサン・バードウェルが発表します。

エコノミスト・インパクトについて

 エコノミスト・インパクトは、シンクタンクの厳密さとメディアブランドの創造性を融合させ、世界的に影響力のある読者を取り込んでいます。私たちは、証拠に基づく洞察が、議論を広げ、視野を広げ、進歩を促進すると信じています。エコノミスト・インパクトが提供するサービスは、以前はEIUソートリーダーシップ、EIUパブリックポリシー、EIUヘルスポリシー、エコノミストイベント、EBrandConnect、SignalNoiseといった別組織としてエコノミスト・グループ内に存在していました。

 私たちは、75年間205か国にわたる分析の実績を積み重ねています。フレームワークの設計、ベンチマーキング、経済的・社会的影響分析、予測、シナリオモデリングに加え、クリエイティブなストーリーテリング、イベントの専門知識、デザイン思考のソリューション、市場をリードするメディア製品を提供し、エコノミスト・インパクトはクライアントに測定可能な成果を提供する独自の地位を確立しています。

東京海上グループについて

 東京海上グループは、世界有数の規模と歴史を誇る保険会社であり、1879年の創立以来、お客様と地域社会の’いざ’をお守りするというパーパスのもとで、保険をコアビジネスとして成長を遂げてきました。様々なリスクが台頭する世界において、お客様と社会をお守りし、安定したサービスを提供しています。そして、新たな可能性を追求し、次の一歩を踏み出す自信を社会全体に与え、急速に変化する世界において、経済、産業、社会のレジリエンス強化に取り組んでいます。

配信元企業:The Economist Newspaper Limited

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